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タイムスリップコップ【毎週ショートショートnote】

「……またか」

カフェでうっかりコップを落とした瞬間、俺の体はぐうっと異空間を潜り抜けた。
なぜか俺はコップを割った時だけタイムスリップするのだ。

着いたのは見知らぬマンションの一室だった。

「旦那さんは大丈夫?」

ねっとりとした声が聞こえてくる。

「平気よ。彼、ニブいもの」

嫌というほど聞き慣れたその声……!

突如現れた俺の姿に、二人の顔が滑稽なまでに歪む。
上等だ。望みどおり添わせてやるよ――永遠に。
せいぜい、あの世で仲良くやるんだな……

冷たい金属の手応え。
絶望的な悲鳴。
なお消えない憎しみ……


「あなた、大丈夫ですか」

はっと気づく。元のカフェだ。
すぐ脇に警官が立っていた。

「お聞きしたいことがあるので、署までご同行願えますか――奥様とそのご友人の件で」

警官は、テーブルの上から割れたはずのコップを取り上げた。

「時間警察から通報がありました。未来から証拠を持ち去った人物がいると。殺人、そして死体損壊のね」

コップの中には、砕かれた骨粉がぎっしりと詰まっていた。



【あとがき】
遅れました。しかも424字と、やや文字数オーバー。
元は1000字超のお話だったんですが(おい)それを何とかここまで切り詰めまくって。おかげでかなり乱暴な文章になっちまいました💦
コップ・警官コップ骨粉こっぷんの、無理やり三本立て(笑)
ああ、きつかった。


*この記事は、以下の企画に参加しております。



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秋田柴子
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