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それでも地球は曲がってる【毎週ショートショートnote】

「おい、地球! 今度こそヘマすんじゃねえぞ!」

木星のダミ声に地球は縮み上がった。
しまった、ちょっと地震を起こしたかと慌てて深呼吸する。

「前回も地球君だけズレてましたからね。今回はちゃんと並んでもらわないと」

土星の指摘に、地球はしゅんと黙り込んだ。他の惑星たちがにやにや笑う。150年ぶりの惑星直列を間近に控え、太陽系は期待に湧き返っていた。
だが地球だけがいつも隊列を乱して足手まといになるのだ。


「さあ、間もなくだ。全員、位置につけ!」

木星の勇ましい号令に、全惑星がおう! と鬨の声を上げた。

「3、2、1、ゼ……くぉらあああ、また地球のやつっっっ!」

広大な宇宙に整然と並んだ惑星の列から、地球だけがちょこなんとはみ出している。

「だから曲がってるっつってんだろ!」
「全員まっすぐ並べば、途轍もない天変地異が観られるのに!」

全惑星が怒り狂う中、地球は秘かに息をついた。


――よかった、今度も守れた。


怒られるのは怖いし、馬鹿にされるのも辛い。
でも自分の上に暮らす生き物たちを失うのは、何よりも哀しい。
だからどんなに怒られても、それでも地球ぼくは曲がるんだ。


【あとがき】
昔から「惑星が一列に並ぶと天変地異が起きる」とか言われますよね。
実際には本当に一直線に並ぶわけではなく、太陽から見て90度の範囲内に入れば「並んだ」とみなすらしいです。
(元々あまりはっきりした定義はないらしい)
1982年にも近い現象はあったようですが、だからと言って実際には何か起きるわけでもなく。でも惑星同士が近づきながら「はろー」とか言ってるかも、と思うと楽しいですね(笑)

*この記事は、以下の企画に参加しております。


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