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友情の総重量【毎週ショートショートnote】

「マコト、ランドセル持てよ」
「あ、俺も」
「早くしろよ、ぐずだなあ」

たくさんのランドセルを背負ってふらつく僕を、みんながゲラゲラ笑う。
でも、こうでもしなきゃみんな僕と話してくれない。一緒に帰ってくれない。

「トロいおまえと遊んでやってんだ。感謝しろ」
「その荷物の重さは俺たちの優しさだぜ。しっかり味わえよ」

そうだ、みんな僕と遊んでくれてるんだ。
少しぐらい重くても……少しぐらい……


「おい、何やってんだ」

不意に後ろから声がした。クラス一番の悪ガキ、ケンタ君だ。

ケンタ君は、僕が背負っていたランドセルを奪い取ると乱暴に道路へ放り投げた。

「何すんだよ!」

ユウジ君が叫ぶ。ケンタ君は無視して次々とランドセルを僕の背中から引きはがした。首にめり込むような重さが、たちまち軽くなる。

「くだらねえ真似すんな。さっさと行っちまえ」

体の大きいケンタ君に睨まれて、ユウジ君たちは慌てて姿を消した。

「マジ、しょうもね――おまえもあんなことされてまでツルむ必要ないだろ。堂々と一人で帰れ」


僕はその時初めて知った。

ほんとの友情は、自分を軽くしてくれるものなんだって。

(465字)


【あとがき】
昔はよく電信柱ごとにじゃんけんで「ランドセル背負いゲーム」をしたものです。でも書きながら、懐かしさより何だかモヤモヤしてしまいます。

今の時代、悪者になるのはユウジたちじゃなくて、ケンタなんですよね。
それまでの事情なんてお構いなしで、ユウジたちの親が
「ケンタ君にランドセルを放り投げられた」
とか、学校にねじ込んだりする。やれ弁償だの、子供たちの心が傷ついただの騒ぎ立てた挙句、学校からケンタとその保護者に指導が入る時代。

「だって暴力は絶対だめでしょう」

それはそうなんですけれどもね。じゃあ言葉の暴力はどうなるんでしょうね。首が折れるほどの重さの荷物を無理やり背負わせるのは、暴力じゃないんでしょうか。たいてい「遊びのつもりだった」でおしまいですよね……。

でも私の子供の頃から、すでに似たような傾向はありました。結局、言ったもん勝ち、やったもん勝ちみたいなところはありますね。
ただ最近は保護者の声が大きくなってきてますから、より対応が難しいと思います。悩ましい問題ですね……。

重いあとがきですみません💦

*この記事は、以下の企画に参加しております。




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秋田柴子
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