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フシギドライバー【毎週ショートショートnote】

不思議なタクシーがあると聞いた。

なんでも運転手が動物らしい。その客に最も縁の深い動物が運転してくれるのだそうだ。たとえば愛犬家の場合は同じ種の犬だったとか、競馬好きが乗ったら馬が運転していた、という具合だ。
当然そのタクシー会社は大人気だった。

連日の深夜残業の果てに真夜中の道をとぼとぼと歩いていたら、運よくタクシーの空車が来た。

――動物ドライバーのタクシーだ!

思わずテンションが上がる。
何だろう、むかし飼ってたから猫かも。
でも牛丼好きだからって牛だったら嫌だな。

「はい、どうぞ」

わくわくしながら乗り込んだ俺は眼を疑った。
運転席には、くたびれたおっさんがハンドルを握っているだけだ。

「あの、これ動物タクシーですよね」
「そうですよ。それが何か」
「あなた人間じゃないですか。いちばん縁のある動物になるんじゃ……」

運転手は気の毒そうにちらりとこちらを見た。

「そのとおりです。だからこの姿になりました。要するに ” 社畜 ” ですね」


*本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です。


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秋田柴子
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