みんなで動かない②【毎週ショートショートnote】
「……それにしても妙な物体だな」
「いや、一応生きてんだろ」
密猟者たちは口元を歪めて嗤った。
すると一人が、ふと声を上げた。
「なあ。さっきより数増えてねえか?」
「馬鹿言うな、ここは密室だぞ。アレか、四次元ポケットから出てきて増殖すんのかよ」
密猟者たちは曖昧な笑いを浮かべた。
だが彼らは知らなかったのだ。
目の前の ” 物体 ” が、実は意のままに分裂できることを。
「……こいつら、何だか近づいてきてねえか?」
「阿呆。足もねえのに、どうやって動くんだよ」
そう言いつつも、密猟者たちは僅かに後ずさった。
だが彼らは知らなかったのだ。
” 物体 ” が「タラパテーション」という、動かずとも移動できる能力を持っていることを。
「なあ、何か変だぜ、こいつら……」
密猟者たちの足は、今や凍り付いたように動かせなくなっていた。
白と青のツートンフォルム立方体の集団は、無表情のまま身動きひとつせず、じわじわと密猟者の足元に迫りつつあった。
* この記事は、以下の企画に参加しております。
なおこの記事は完全なるフィクションであり、実在の人物・生物・物体・企画者・管理者・運営者とは一切の関係がないことをご承知おき下さい。
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