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隊長職変死の椅子【毎週ショートショートnote・裏お題】

十年前、わずかな同志が集まって旗揚げした○党は、日々の研鑽によって今や野党第一党と成り上がった。

だが悲願である政権奪取の実現は遠かった。
選挙対策委員長に選ばれた優秀な人物が「切り込み隊長」と称して選挙の陣頭指揮を執るのだが、どうにも詰めが甘い。

間もなく始まる統一地方選を前に、〇党は期待の若手を選対委員長に抜擢した。
今度こそ本物の切り込み隊長に……!
党内の期待は大きかった。


「大変です!彼が……隊長が△党へ鞍替えを表明しました!」

突然の報せに党内は慌てふためいた。

「△党に鞍替え?よくもそんな恥知らずな真似を……」
「くそっ、与党の刺客に殺られたかっ……!」

*  *  *

「ご苦労だった、官房長官」
「潰した選対長は適当な椅子ポストでも与えて、飼い殺しにすればよかろうかと」

総理はにやりと笑って頷いた。

「それにしても君は刺客を放つのが実に上手いな。さすが地盤が伊賀だけのことはある」

見え透いた世辞にも、深い皺が刻まれた官房長官の顔は眉ひとすじ動くことはなかった。

(419字)


【あとがき】
前回の『失恋墓地』と同じく、なかなか発想が広がりにくいお題ですね。
かなり苦しい展開になってしまいました。
注)当作品は、実在の党・団体・人物とは一切関係ございません。


*この記事は、以下の企画に参加しております。

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秋田柴子
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