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逢いたい菜【毎週ショートショートnote】


彼に会うのは1年ぶりだ。
待つ間も緊張で胸が高鳴る。

「よう舞、ひっさしぶりー! なに、シケた面して。もしかして今でも怒ってる? ごめんごめん、あの頃はさ。ちょっと梨花のことがいいなーとか思っちゃって」

そう、彼は私の親友だった梨花と浮気した。でも……。

「かるーい気持ちだったのに、舞がブチ切れて俺のことブロックするわ、家飛び出しちまうわでさ。それが今になって突然『逢いたい菜』なんか送ってくるからマジ驚いた」

「やっと心の整理がついたの」

「へへ、やっぱ俺がいないとダメだろ?」

「……違うから」

「へ?」

「あのね、”逢” は ”おう” とも読むの」

「知ってるさ。逢瀬と書いて ”おうせ” じゃん。まさに今の俺たち……」

私は長い髪を後ろに払った。

「知ってるなら話は早いわ。だからあれは『あいたいな』じゃなくて『おういたいな』。つまり……」

ひと呼吸の間に素早く手を組んで構える。

「あの時の恨み晴らさでおくものか! 覚悟しろ、ゴラァ!!」

私は大きく肘を引くと、渾身の右ストレートを彼の頬へめり込ませた。
「おう痛いな」どころじゃなかったかもしれないけど。

(469字)


【あとがき】
けーーーーーっっっ!!!
なぁぁぁぁにが『逢いたい菜』だよ、リア充めっっっ!

……と世間に向かって吠える、ひねくれモンの秋しばでげす。
まだ春には早えんですよ、たらはさん。
そんなに寒いんなら、熱い復讐の炎にでもあたっといておくんなせえ。
ほらほら、遠慮はいらねえっすよ。

――あ、焼きガニだ 🦀🔥


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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秋田柴子
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