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株式会社リストラ

リストラされた僕を拾ってくれたのは、大学時代の先輩だった。

「ウチに来いよ。大手の子会社で『株式会社リストラ』ってんだけど」
僕の歪んだ表情を見た先輩は笑って手を振った。
「違う違う。普通のリストラはリ・ストラクチャリング、事業再構築だ。ウチはリ・ストライキ。再ストライキ、つまり年中ストライキで仕事しないのが仕事なんだよ。めちゃいい会社だぜ」

先輩の話は本当だった。誰も仕事をしていない。読書やネットなど、みんな好きなことをしている。僕は毎日寝てばかりいた。

ところがある日、唐突に本社の人間が会社に現れた。
「今日から君たちにも仕事をしてもらう」
そして僕らは2つの組に分けられ、それぞれ屋上と地下室に連れて行かれた。僕は地下室の組だ。

暗い部屋に入ると、天井のスピーカーから声が流れてきた。
「仕事の内容は動物の世話だ。残念だったな。あっちの組はリスだったんだが」

プツリとマイクが切れる音と同時に、暗闇から低く唸る声が聞こえてきた。

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秋田柴子
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