スナイパーの意外な使い方【毎週ショートショートnote】
「この時代だ。生身の人間を使わなくても、精度の高い射撃は可能になった。意味は判るな――もう君は不要になったということだ」
昔馴染みの客の通告に、俺は黙って部屋を後にした。
奴の言うことは事実だ。AI全盛の世の中、高い金と危険を負ってまで我々を雇う必要はない。
裏の世界に失業保険などない。
これから何をして生きていくか……
角度よし。
風速、風向よし。
標的わずか108㎜。
――今だ。
「おおおっ……!」
空気がどよめきで満ちるや、静寂に凍った。
一瞬ののち――
「入ったああああ!」
「マジかああああ」
「金返せええええ」
ガッツポーズなど無用だ。
周囲の喧騒をよそに、俺は黙ってグリーンを下りる。
「さすがあんただ!やってくれると思ったよ!」
「まったくだ。あんたに賭けてよかったぜ!」
「あの距離のパットを決めるなんて神業だ。ナイスパー!」
仮にも俺はプロだ。狙った的は外さない。
だがまさかスナイパーから、賭けゴルフの世界に我が身を投じるとは思わなかったがな。
(415字)
【あとがき】
ゴルフのカップって、108㎜と決まってるんですね。
何でも配管パイプで穴を繰り抜いたところからの由来だとか。
(そのパイプの直径が108㎜だったそう)
今週も苦しまぎれに、言葉遊び作戦を敢行。
実は文字の並び替えは結構好きなのです。
ではまた来週~!
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