【#創作大賞2024】蒼に溶ける 序 章
【あらすじ】
「――お別れのお時間でございます」
神妙な声を合図に、デッキに集っていた人々が一斉に頭を下げた。かすかなすすり泣きが、吹き抜ける海風にちぎられるようにして流れ去る。
参列の人々が見守る中、子供が隠れられそうな大きさの壺が船に付属したアームで持ち上げられ、艫にほど近い右舷から海の上へ突き出されていく。
やがて海面すれすれまで下げられた壺は、次第にゆっくりと傾き始めた。アームが壺の蓋を開けるごとりという鈍い響きも、打ち寄せる波の音に紛れてデッキまでは届かない。
一瞬の間をおいて、傾いた壺から透明な液体が、細く静かに海へ注がれていく。デッキの上から身を乗り出して見つめていた人々の中から、嗚咽の混じったため息のような声が上がる。
中身をすべて注ぎ切った壺が再びゆっくりと持ち上げられ始めた時も、人々は吹き渡る海風に髪の煽られるまま、蒼い海原をいつまでも見つめ続けていた。
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【序 章】
【第2章】 ① 葬儀 ② 違和感 ③ 母と娘 ④ 本音
⑤ 急報 ⑥ 喪失 ⑦決裂
【第3章】 ① 勘違い ② 迷い ③ 施設 ④ 四十九日 ⑤ 納骨
【第4章】 ① 相談 ② 母の過去 ③ 進言と拒否 ④ 決断
⑤ 電話 ⑥ 交流 ⑦ 覚悟
【第5章】 ① 変貌 ② 絶景 ③ 地震 ④ 決行 ⑤ 暴挙
⑥ ギフト ⑦ 慟哭
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