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株式会社のおと【毎週ショートショートnote】
電話の向こうの客の声は、ひどく嬉しげだった。
「ああ、田原さん!転職先はとても素晴らしい会社です。ありがとう、あなたの診断のおかげです!」
「それはよかった。あの会社はいい音出してましたからねえ」
会社はみな、それぞれ独自の音色を持っている。
小さくても素晴らしい音を持つ会社。
見た目は華やかでも、実はひどい音を出す企業。
人には聴こえない会社の音色を聴き分けて、その良し悪しを判断するのが『チューナー企業診断士』、つまり私のことだ。
ありがたいことに私の評判は世間でもすこぶる高く、入社や転職、取引先の診断に引っ張りだこ。予約は半年先までいっぱいだった。
だがある日を境に、異変が起きた。
どの企業を探ってみても、軒並み聴くに耐えない音しか聴こえてこない。
どんな大きな企業も、どんな有名な会社も。
そろそろ潮時かと、私は溜息をついた。
「不況和音、か……」
――世間では地球上のあらゆる国に、第三次世界恐慌の波がひたひたと押し寄せてきていた。
【あとがき】
今週は珍しく、すんなりネタが降りてきました。
これにて夏休みの宿題は終了……と言いたいところですが、8月末締切の公募がひとつ残っている秋しばでございます。
頑張ってそちらを片づけに参ります(涙)
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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