動く人が正しく、動かない人は悪なのか
この度の新型コロナウイルス感染症に罹患された方とご家族・関係者の皆様に謹んでお見舞い申し上げます。また、医療機関や行政機関の方々など、
感染拡大防止に日々ご尽力されている皆様に深く感謝申し上げます。
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こんばんは。食べチョク代表の秋元里奈です。
世界的に大きな影響を受ける中で、ガンガン動いている人、動きたくても動けない人、いろんな思いを抱える人がいると思います。
現在食べチョクではコロナで困っている生産者さんやシェフの方々に向けた取り組みを行っていて、世間的には「動いている」部類に入ると思いますが、私自身「動けなかった」過去があります。
そんな中でとある農家さんからもらった言葉に感銘を受け、とても勇気づけられました。現在頑張っている人、辛い状況にいる人、葛藤している人にもその言葉を伝えたいと思い、このnoteを書いています。
自己紹介
全国から1,000軒以上の生産者さんが集うオンラインマルシェ「食べチョク」を運営しています。野菜・肉・魚など様々な食材を作る一次生産者さんに「正当な利益を還元する」ことを目的に事業を展開しています。
先日4月21日(火)に再放送されたセブンルールにも出演しました(昨年9月の再放送回です)。みていただいた方はありがとうございます。見逃した方は4月28日(火) 23時までTVerで無料配信されているので良ければぜひ。
コロナによる影響と食べチョクの取り組み
食べチョクでは小中高の休校が発表された直後のタイミング、3月2日からコロナの影響で販売先を失った生産者さんと自炊が増えた消費者のための応援プログラムをスタートしました。
食べチョク内に「#コロナでお困りの生産者さん」と言う特集を組み、かつ送料500円分を食べチョクが負担することで、販売先を失い収益が激減してしまった生産者さんの食材を、より多くの人たちにお届けする取り組みを展開しています。
また、食べチョクでは飲食店さんへの卸事業も行っており、飲食店さんも事業パートナーです。コロナの影響により営業すらままならない状況が続く状況を鑑みて、#シェフのレシピ付き食材を販売開始。通常こういった商品は「レシピ代として固定額◎万円を払う」というのが多いですが、「1商品売れるごとに300円をシェフにレベニューシェアする」という新しい仕組みとなっており、売れれば売れるほどシェフに収益が還元されることを目指しています(500個売れれば15万円、1000個売れれば30万円)。
購入者側も、外出できない日々が続きストレスを抱えています。このGWに旅行に行く予定だった方もいるのではないでしょうか。少しでも食べチョクからワクワクを届けたいという思いから、届くまで中身がわからない「おまかせBOX」の販売もスタートしました。
「動かなかった」過去の自分
食べチョクを運営するビビッドガーデンは社員10人ほどの小さい会社ですが、上記のような様々な支援プログラムを行っている背景には私自身の2つの後悔があります。
1つは東日本大震災。震災があった2011年、私は大学2年生。神奈川県の大学に通っていて東北の知り合いも多くありませんでした。被災の状況などニュースで放映される情報は認知していましたが、当時の私は特に何かアクションを起こすことなく、ただただずっと家から動かずにいたことを覚えています。
それから5年が経って農業の業界で起業。多くの東北の農家さんと知り合いました。その中で未だ消えない風評被害の話であったり被災の状況を詳細に知るにつれて、言いようのない後悔に押しつぶされました。目の前にいるこの人がこんなに大変な状況だった時に、なんで私はなにも動かなかったんだろう、少しでもやれたことがあったんじゃないか、と。
もう1つは2018年の西日本豪雨。この時は食べチョクを立ち上げてちょうど1年が経ったタイミングでした。西日本の生産者さんが大きな打撃を受け、なんとか支援をしたいと思いましたが、まだまだサービスや会社の規模も小さく、生産者から上がってくるSOSの連絡に応えきれずにいました。「私はまた何もできなかった」と思いました。
自然災害は毎年どこかの地域を襲います。過去には戻れないので、「次何かあった時は自分にできる最大限のことをしよう」、そう心に決めていました。
初めてアクションをしたのが2019年の台風19号。台風で被災してしまった生産者さんの手数料を無料にし、販売促進に力を入れました。浸水により収穫期のりんごがほとんどダメになってしまった長野の生産者さん、奇跡的に残ったりんご1.5トンを食べチョクで売り切りました。一方でSOSを上げる全ての農家さんに貢献することはできず、この時もまた、強い無力感を感じました。
コロナの取り組みへの反響
上記のような背景もあり、2月末から生産者さんのSOSが聞こえ始めたタイミングで「今こそ動く時だ」と思い立ち、全商品送料500円の負担を決めました。
コロナの状況が悪化するにつれて生産者さんからのSOSも日に日に増加。まだまだ認知もこれからのサービスだったので、とにかく1つでも多くの商品を売るために以下のようなSNSでの呼びかけを行いはじめました。
これらのツイートに大きな反響をいただき、余っていた牡蠣8,000個の完売、料亭に卸していた真鯛に10日間で約400件の注文が入るなど、消費者の皆さんのご協力により多くの生産者さんが活力をもらっています。
こんな時こそ「全ての人の行動を正解に」
がむしゃらに走っている中で、私たちの取り組みに対しての批判も受けるようになりました。目立てば批判する人が出てくることは当たり前なのでそこまで気にしていませんでしたが、とある農家さんの言葉が心に刺さり、このnoteを書くに至っています。
福島県の白石長利さん。私が東北で初めて訪問させていただいた生産者さんです。
先日白石さんと久しぶりにzoomでお話しする機会があったのですが、その時に白石さんが言った「こんな状態だからこそ、動く人・動かない人・動けない人、全ての人の行動が正解だと思う」と言う言葉に私は強く胸を打たれました。
私自身、今は「動く人」になっていますが、過去は「動かない人」「動けない人」でした。もしかしたら今この瞬間に、私が過去に抱えたもどかしさや後悔に近い気持ちを持っている人もいるかもしれません。
今世の中にはいろんな状況の人がいると思いますが、こんな状況だからこそ誰が正解・不正解と決めつけたりお互いを責めることなく、それぞれの思いを持ってまっすぐ前を向こう。この世界的に大変な状況をみんなで乗り越えていきたい、と改めて強く思いました。
「全員が正解なんだ」と言う気持ちを持てると、多くの人がさらにアクションを取りやすくなるじゃないかとも思います。
これからも私はできることをひたすら実行していきます。その一方で動きたくても動けない人がいること、いろんな正義があること、様々な人の気持ちに思いを巡らせることを忘れずにいたい。
白石さんの優しさ溢れる言葉を受けて、過去の「動けなかった」自分も、今「動いている」自分も、両方とも肯定的に捉えられるようになりました。今悩んでいる方にも、この言葉が届いたら嬉しいです。
みんなでこの状況を乗り越えましょう。一刻も早い事態の終息を祈って。
参考リンク:食べチョクの支援プログラム
▼現在、農水省の「#元気いただきますプロジェクト」に参加中。コロナ影響のある対象品目が送料無料です。