コミュニケーションエラー
ある日のしゃぶ葉にて。
帰省して家族での会話。
自分ではできる限り噛み砕いて説明しているつもりだけれど、相手は理解ができずポカーンとしてる様子。べつに複雑な話をしているわけではなくて、”学生時代に比べ、大人になると運動しなくなるのはなぜだろう?”という、身近な話題なのに。
そんな状況に上手く対応できなかった僕は、「もう少し上手に説明できるようになりたいな」と思った。
でも、どうすればいいのだろうか。
シンプルに話す方法
伝えたいことがうまく伝わらないとき、話が得意な人はどうしているのだろう?どうやって伝わらない状況を回避しているのだろう?
色々なメディアで調べてみてわかったのは、「シンプルなアイデアから焦点を絞っていく」というやり方が好まれているということ。
例えば、新聞や雑誌で情報をまとめる方法は伝統的に”逆ピラミッド法”と呼ばれていたりする。ブログのライターさんでも、「テーマを絞って書くこと」を推奨している人は多い。
文章だけでなくスピーチの分野では、TEDの代表でありキュレーターでもあるクリス・アンダーソンが著書にこう書いている。
これだけだと漠然としてるから、僕流に例えてみたい。しゃぶ葉での会話がが発端だから、肉を食材から用意するところを想像してみよう。
美味しい肉を食べるために、家族でサバンナへ狩りに出かけたとする。そのとき、「東の方角に大きな獲物がいるぞ」という情報には価値がある。なぜって、方位磁針さえあれば東の方角がどこを指しているかはだれでも理解できるし、方位はめったに変わらないからみんなが納得してくれる情報源だ。たぶんこれこそがシンプルなアイデアというものだ。
とはいえ、東を見たからと言ってすぐに獲物が見つかるわけじゃない。風景と標的を見分けるための目印となる、ピンポイントな情報が欲しい。そのために双眼鏡を除いて東の方角を見回していると、同行者の一人が「見つけた!」と声を上げる。
「どんな動物?」
「数は?」
「近くに何がある?」
「今の自分たちで仕留められる?」
焦点を絞るためのアプローチにはいろいろあるけれど、こういう詳細があって初めて、話し手の意図する目的を観測できるようになる。シンプルな情報を補助する、大切な詳細だ。
そうして同行者全員が獲物を見つけることができれば、基本的な情報共有はおしまい。あとはその獲物を狩るための道具と、具体的な方法を考えればいい。すべて終えれば、美味しい肉が食べられる。
シンプルに説明したいのなら、まずは”価値のある何か”を認識すること。美味しい肉には価値がある。そのうえで、知ってるつもりを減らすこと。多分僕は、知ってるつもりになってることがあまりにも多い。
「知ってるつもり」を減らしたい
情報は、量を増やすと階層化できるようになる。【獲物のいる方角<距離<近くにある目印<牛の群れ<足を引きずっている個体】
たぶん話が旨い人は、こういう階層化ができるように意図的に訓練しているのだろう。それも、話題に応じて適切な階層で話を拡げられる程度の練度で。
そうして階層化してみると、どこかに足りないものが見つかる。そういう欠落を見つけたら、それについて調べて埋めていく(日本<千代田区<丸の内)。この作業を続けてみると、自分の知識が抽象的すぎる(具体的すぎる)ことに気付けるようになるかもしれない。
あとは、それを人に話せるようにまとめておけばいい。知らないことは話せない。けれど、知ってることは覚えてさえいれば話せるようになるはず。
一連の流れをまとめると、こうなる。
1.”価値のある何か”を経験すること
2.価値を再現するために周辺情報を集めること
3.周辺情報を階層化すること
4.足りない知識を減らすこと
5.人に話せるように練習すること
これなら、誰にだって習得できるスキルだ。
とはいえ
物事をシンプルに考える為の工程を踏んだとしても、互いに違ったインセンティブがあれば、コミュニケーションエラーが起きることも全然あると思う。
自分は肉を食べるためにサバンナに来た。相手は家族でお出かけする手段の一つとしてサバンナを選んでいた。それなら、どちらが狩猟に意欲的かというのは一目瞭然だ。相手は、動物を狩猟して食べるということに嫌悪感すら感じられるかもしれない。
こういう行き違いは情報の扱い方というより、自分と相手との関係性にまつわる問題だろう。だから、ここでは触れないでおく。
それに、「シンプルに説明できるようになる」ことでコミュニケーションエラーを根絶できないからといって、知識欲を制限する理由にはならないはず。知れば知るほど、知らないことは増えていく。
2h53m
関連するおすすめ本
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?