吸血鬼の夜
新月の夜、真夜中の鐘が鳴る頃
吸血鬼は「食事」に出かける。
寝静まるコンクリートのビル街に
コツコツと革靴の足音を響かせると
霧の向こうからもう一つ靴音が聞こえてきた。
闇の中に
真っ赤なハイヒールを身につけた
美しい女が現れると、
街路樹にとまっていたコウモリ達が
彼の元へ飛んでいって
手品のように
“いかにも”なマントに姿を変えた。
其れをバサッと翻し
吸血鬼は、ハイヒールの持ち主に
こんな挨拶をするのだ。
今晩は。我が愛しのレディヴァンピール。
さて、今夜は何型の血液をいただこうか?
【手作りマスク×小さな物語企画2021】