202号室の薔薇園
お洒落な都会で、
仕事に恋にと忙しく走り回る毎日は
私にとって楽しく刺激的なものでした。
だけど、いつからか
色鮮やかだった生活も
あたりまえの日常に変わってしまって
私は新しい刺激を探し回りました。
やっと発見したのは
華やかで密やかな
どこか非現実な愉しみ
今日は待ちに待った休日。
街の隙間を縫うように
裏路地を急いで走り抜けて
廃墟と化した団地を目指します。
向かうは202号室。
鍵の壊れた重い扉を開けると
むせるほど甘い生花の匂い
主を失った薔薇たちが
ざわざわと
部屋いっぱいに広がって
手招きしてくれるので
私は遠慮なく上がり込み
美しい彼女たちと
夜の帳が下りるまで
笑いながら
お喋りするのです。
物語付マスク企画2021
マスクサンプルモデル:鮎川あずさ