里山と林業とサステナブル
家づくりと里山の関係
私が住居兼ゲストハウスとして営んでいるguesthouse Nafshaは、私の父が若い時に建てた築40年の一軒家をリノベーションしています。
一見するとただ普通の家なんだけど、実は父の実家の山から切り出した木材で建てられています。つまり私の曽祖父やその上の代が植えた木でできた住宅なんです。しかも、伐採した木は馬が運び、地元で製材され、地元の大工さんが建てています。このエピソードがこの物件でゲストハウスをやろうと思った決め手でした。
昨今では「フードマイル削減」、「食物の地産地消」などと言われていますが、その時代は家まで『地産地消』していたんですね。また、馬が運搬していることも驚きです。馬は昭和の最後あたりまで現役だったみたい。伯父いわく、「馬搬だと1本1本切り出せるから、使いたい木を選べる。重機だと皆伐しなきゃいけないから使える木もまだ残しておきたい木も全部切らなきゃならない」とのこと。馬は前時代的かと思いきや、意外に合理的らしいです。ヒヒーン。
林業について
そんな話を聞いてから、林業への興味ががぜん湧いてきました。
父親の実家の長兄、つまり私の伯父は今でも山を管理しています。下草を刈り、枝打ちし、適宜間伐をして、子や孫の代が自分の山の木材で家を建てられるようにしているということ。林業は基本的に3代くらい、60~100年くらいのスパンでものごとを考えていて、植えてからずーっと管理して、使えるようになるのは数十年先だし、逆に自分達の世代は数十年前の先祖の作業の恩恵を受けるということ。気が遠くなるほど長い話です。
「伯父は今でも山を管理している」と書いたのは、今は山を管理する人がほとんどいないからです。放置された杉は保水力がなく「緑の砂漠」と呼ばれることを先日訪れた神山町で知りました。
今年の初めにこんな記事を書きました。
この記事の時に伐採したヒノキは地元の木工作家「かわらまち木工舎」さんにお願いしてキッチンツールになりました。
たくさん作ってもらったので作品の一部を伯父に贈ったところ、とても喜ばれました。「プロに加工してもらい」、「生産者がとても喜ぶ」という構図は前職のFoodCamp事業によく似ています。
伐採と薪づくり
1カ月ほど前、伯父の伐採に同行しました。伯父の自宅の薪ストーブに使う薪作りです。
この日は立派なナラを切りました。年輪を数えたら35本くらいあったのでほぼ私と同い年です。倒れた時に山に響き渡った「ドーン」という音は、35年の時間の重みが作った音のように聞こえました。
他にサクラも切りました。サクラと言うとなんだか特別な感じがしますが、ソメイヨシノではなく山桜で、普通に生えていて、普通に伐採して普通に薪にします笑。ナラは太すぎて無理でしたが、サクラを切らせてもらいました。35歳、初めてのチェーンソーです。おっかなびっくりでしたが何とかできました。
このサクラはもらえるので、Nafshaの焚き火用の薪になります! 昨今は空前の焚き火ブームですが、薪づくりからしている人はそんなにおるまい。ふふふ。
里山とサステナビリティ
木の伐採は、木が水分を吸い上げず、雪が降る前の11月にするそうです。この後、薪割りをし、2年乾燥させて(!)、ようやく使える薪になるとのこと。
プロパンガスが普及する前は冬の暖房はもちろん、薪で煮炊きをしたし、風呂も沸かした。この辺の人達は、遠い中東の国にエネルギーを依存することなく生活できていたんだなぁ。
家の建材、エネルギー、肥料、生活資材、全てを裏山から調達していたし、50~100年スパンでものごとを考えて暮らしていた。これ以上のサステナビリティがあるだろうか。
焚き火しながらそんな話ができるので、ぜひguesthouse Nafshaにおいでください! (註:↑のサクラが薪になるのは再来年2024年の夏ごろです。長い話だ。)