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翔べ君よ大空の彼方へ     6-❹ 成せる業

 年末を彩る冬のグランプリ、出走馬2週前の追い切り後の事•••翔馬は自身のエージェント、そして鷹と共に冨士原師と向かい合っていた。

 有馬記念の騎乗馬選定であった。

 前走京都大賞典を圧勝、ここが引退戦となるファン投票2位のブレストファイヤー、今季世界の強豪と堂々渡り合い、前走メルボルンカップを圧勝、グランプリ初制覇を目指す、ファン投票1位に選出されたストロングクーガー•••両馬を管理する師の元に、「選定は翔馬君にお任せします!」との連絡が両馬のオーナーからあり、呼び出された訳である。

 ファン投票1位と2位の競走馬をグランプリに出走させる事になった調教師の心中は如何なものであろうか。

 調教師生活で、このような経験ができるとは夢にも思わなかった•••感慨にふける冨士原師に翔馬が決断を下した。

 冨士原師も鷹も、そしてエージェントの男性も、〝そりゃそうか!〟という感じで顔を見合わせ、笑みを溢した。


〝これは夢じゃないよな•••〟
翼一家は馬主席に招待され、その目の前の光景を見つめていた。

 緑のターフを一層輝かせている強い太陽光線•••その中を輪乗りする2頭は自家生産馬、しかもファン投票1位と2位である。
 こんな事は二度と経験できないだろう•••小学生のとんぼとうさぎでさえ、その意味を理解しているのかのように、静かに大型モニターを注視している。
 3歳の駿馬は、〝ンマンマ!〟と言って、多くの馬主家族達の張り詰めていた空気を和ませるのに一役買っている様子であった。

 ファンファーレが鳴り響いた。
とんぼとうさぎが小さな手で控えめに手拍子を重ねた。
 触発されたかのように、周りからも、手拍子が重なり合った。

〝思いよ、届け•••〟と、ばかりに。

 そして、グランプリの幕は開けたのだった。


 レースは戦前の予想通り、ファン投票5位のアモルファスが先導役を務めた。
 中山コースは無双、その先行策を武器に小細工なしの逃げに打って出た。

 1周目のスタンド前では、縦に長い隊列が形成された。
 ファン投票2位に選出され、〝引退戦で勝利を!〟とファンの熱い想いを受け、当日1番人気に支持されたブレストファイヤーが4馬身後方に控え、直後に堂々ファン投票1位、世界を転戦しその実力を見せつけた2番人気ストロングクーガーが鞍上鷹に導かれ、ブレストファイヤーを徹底マークするかのようにピタリとインを追走していた。

 ファン投票4位、前走ジャパンカップで強豪を撃破した3歳の雄、当日4番人気のダークブリザード、そしてこちらも引退戦でファン投票3位に選出、全馬未到のグランプリレース4連覇を目指す当日3番人気のスターダイナマイト両馬はその鬼脚を生かすべく、互いに中段に控え前方進出への機会を伺っていた。

 第1、第2コーナーを過ぎ、向正面でアモルファスがペースを緩め息を入れる。
 後続が若干差を詰め、それでも縦長の展開でレースは進むが、第3コーナー入り口、ここでアモルファスが一気にペースを上げた。
 全馬に脚を使わせ、持久力勝負に持ち込む算段であろう•••翔馬は躊躇なく愛馬に合図を送った。

〝大丈夫。今日の彼は過去イチの出来にある!〟

 その柔らかな脚捌きと良好な息遣い•••彼も瞬時に反応し、前を走るアモルファスから視線を逸す事なく、ただ一点だけを見つめて疾駆する。

 しかし、彼もまた瞬時にアクションを起こした。大観衆で埋まったスタンドから大きなどよめきが起こる。

 ブレストファイヤーがペースを上げた直後、ストロングクーガーもまた一気に動いたのである。
 あの英国の、起伏激しいコースでの戦い•••〝持久力勝負ならどの馬にも負けない!〟
 鷹もまた満を持してのロングスパートを仕掛けた。

 最終コーナー•••ダークブリザード、スターダイナマイト両頭が一気に他馬をパスし、馬場の良好な外を回って勝負を挑む様相•••先行勢を射程に収め、いよいよグランプリ馬の栄光を掴む為の戦いが始まった。

「先頭はアモルファス!後続との差は2馬身!中山の急坂も何のその!一気に坂を駆け上がる!2番手内からブレスファイヤー、じわじわと差を詰めにかかる!大空翔馬、ここで左ステッキを1発2発!自身に初重賞をプレゼントしてくれた愛馬と共に坂を駆け上がる!しかしその外、ストロングクーガーがやって来た!鞍上鷹
、左ステッキを入れた!馬体を併せにかかる!あの世界の一線級と戦いあったその力がこの舞台で爆発するか!外から2頭だ!ダークブリザード、スターダイナマイト一気にやって来た!

 さあ残り100だ!先頭3頭並んだ!
内からアモルファス、脅威の粘り腰だ!差し返す!差し返す!真ん中、ブレストファイヤー、外ストロングクーガー!
 しかし一気にダークブリザード、スターダイナマイトもやって来た!先頭2頭に代わった!ブレストファイヤー、ストロングクーガー抜け出した!栄光のゴールまであと僅か!しかし、先頭2騎を一気に‼︎」

 背後からステッキを振るう風音と、芝を蹴散らす蹄音が容赦なく2人の耳元を襲う。

 互いに前だけを!1センチでも、1ミリでも先にゴールを駆け抜けよう!その意識だけであった。

 駆ける2頭もまた、ゴールの位置を理解しているかのように、自身の能力を全て出し尽くすかの如く、内に秘めたるその闘志をこの大一番で発揮したのであった

 それはまさに、この兄弟の、力の為せる業であった。

お互いに負けられない戦いの結末は⁉︎


 PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝申し上げます🥹🙏次回配信は6月19日水曜日午前8時です。予想外の結末が訪れます😳😳果たして勝者は🏅🏆⁉︎

 それではまたお会いしましょう🙏🙏


         AKIRARHKA


新たに入厩したお馬さん達🐴🐴100頭まであと僅か☺️😤🤣
皆様、拙作に目を通して頂き、心より感謝申し上げます🥲🙏

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