翔べ君よ大空の彼方へ 6-⑫ 交わり
すべては縁という、円の中の縦と横の糸の交わりであった。
幼少期、陽子の優しさに触れた翔馬と翼。
卒業旅行でフランスを訪れた陽子は、不意の出来事でウッドと出会い、その家族の優しさに触れ、やがて新たな命を誕生させた。
翔馬も翼も夢に向かって、自らの道を歩き出した。
騎手になった翔馬は周りの後押しを受けフランス遠征を行い、異国の風を、匂いを感じ、そしてたくさんの優しさに触れた。
異国の馬主、調教師との親交、そして陽子との思いがけない再会とその家族の温もり、ファンの熱い声援•••。
翼もまた1人の女性と出会い、父として、ホースマンとして、親友の夢の後押しをするべく自身を叱咤激励し、真のホースマンとなるべく一心にその道を歩き続けた。
鷹もまた翔馬に魅了された1人であった
。騎手としても、いやそれ以上に人間的に彼に惹かれ、引き寄せられていったのである。
彼が大切な人を失った時、鷹は茫然自失となり、自分自身を責めたのであった
。
それでも、騎手として、人生の先輩として、彼を守り抜く事を決めたのだ。
たとえ月日が経過しようとも、変わらないものが、確かにここにあるのだ。
味も、優しさも、友情も。
ここにも1つのチームが存在していた。
バルザ、ローザ、ウッド、陽子、エリー、ヴェロン、ロッシ、森永師、鷹、翼
、そして、天国から優しく見つめる瞳達に見守られながら。
出会いと別離を繰り返し、そして新たな出会いが、これからも彼を成長させていく事であろう。
ワイングラスを掲げ、ロッシが力強く宣言した。
「我々は仲間だ。たとえ離れていても、この世界で同じ想いを抱き、同じ時を共有する、絆を紡いだ仲間だ。我々ホースマンの不変の友情に乾杯!」
ワイングラスの重なり合う心地よい音が、広いリビングに響き渡った。
ホースマンと認められたからには、真剣に乗馬に取り組まねばならない。
青い瞳を輝かせた少年は、グラスの中のオレンジジュースをグッと飲み干し、2人の騎手の手を引いて、木馬の置いてあるトレーニングルームへと向かった。
優しく見つめるたくさんの視線達をその場に残して。
異国の夏の夜は、まだ始まったばかりである。
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「じゃあ先輩、今週の騎乗も頑張ってください!」鷹は笑みを浮かべ頷いた。
シャルル•ド•ゴール国際空港の出発ロビー前には、帰国する翔馬を見送る仲間達が集結していた。
鷹は今週日曜に開催される3歳牡牝限定のG1競争ジャンブラ賞(芝1400)に、NHKマイルカップ覇者のボアソルチで参戦する為、今しばらくのフランス滞在である。
翼もまた、スタリオン代表からの
〝名門牧場のすべてを肌で学んで来い〟
との指令を受け、2週間の期間を与えられ
、鷹と一緒に帰国する予定である。
見送る仲間、それぞれが翔馬と挨拶を交わす。
「来月いよいよデビュー戦だね。彼!サイレントマジョリティーも負けないから
!そして、来年の10月•••ここで対決だね
!あ、その前に今年もあるんだった!」
流暢な日本語で、エリーが周りの笑いを誘う。今や仲間達は、日本語での日常会話をほぼマスターしていた。
「ファイアスターも負けないよ!いつか•••対決するその日まで。それでは皆さん
、また10月に!」見送る方も見送られる方も、共に笑顔であった。
翔馬は背を向け、帰国への一歩を踏み出した。
数歩歩みを進めたその時、すべての者が目を瞠った。
ある者は声を上げ、目をこすり、またある者は口に手を当て、その光景を目に焼き付けていた。
〝何故彼にだけ光が当たっているのか
?〟
その背に燦燦と輝く、一筋の金色の光
•••。
皆、顔を見合わせて首を捻っていた。
ロッシと森永師は互いの顔を見合わせ
、満面の笑みを浮かべながら、遠ざかる彼の姿を見送った。
PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝申し上げます🙇🙏
次回配信は、7月13日水曜日午前8時です🕗
遂に、遂にファイアスターの初陣🐴💨
翔べ君よ大空の彼方へ•••この作品は3年前に完成しました。ファイアスターの初陣は、新潟芝1600メートル。奇しくも、アーモンドアイの初子、アロンズロットもまた😅
〝戦場に火を起こせ!ファイアスターいざ見参!〟
それではまたお会いしましょう🥹🙏
AKIRARIKA
この作品を通して、養老牧場への牧草寄付等の引退馬支援を行います。その為のサポートをしていただければ幸いです。この世界に生まれたる、すべてのサラブレッドの命を愛する皆様のサポートをお待ちしております🥹🙇