翔べ君よ大空の彼方へ　　　　　9-19 大空を見上げて

→AKIRARIKA←

2025年2月22日 12:00

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〝お前は一生ホースマンだ。今までお前が携わってきた競走馬の、そしてこれから出会うであろう競走馬達の思いの全てを背負って生きてゆけ！それがお前の生きた証となるから•••〟

〝圭一は根っからのホースマンです。最後の最後までホースマンでいることでしょう。そんな、偉大なるホースマンと私達のこの時間が、永遠の記憶に•••〟

〝旦那さん、レース翌日は渡仏ですよ！今日はかっこいいとこ見せてあげて下さいな！〟

〝フレ〜〜！フレ〜〜！カケル！フレッフレッ、カケル！フレッフレッ、カケル！〟

〝道とはね、人との縁という意味でもある。たとえ、ほんの一瞬の出会いでも、どこかで繋がってゆく。そして、出会った人達の道にもなってゆく•••〟

〝その、花が咲いた金剛杖のように、これからの君の人生•••大いなる花が咲きますように•••〟

〝我々は仲間だ。たとえ離れていても、この世界で同じ思いを抱き、同じ時を共有する、絆を紡いだ仲間だ•••〟

〝また会えるよな⁉︎〟　
〝ああ•••またいつか会えるさ•••〟

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　たくさんの思い出が脳裏を駆け巡る。

　出会い、別離、再会、笑顔、涙。
勝利も敗戦も、全てを糧にして次の一勝を目指した。

　自身の道を切り開いてくれた競走馬達
、ライバル、そしてこれまでの人生を支えてくれた、見守ってくれたすべての人々の事を思った。

　見えない力を背中に感じた。
まるで、あの時と同じように、前へ、前へと押し出されるかのように•••。

　先を駆けるライバルの背中が見えた。
そして、背後から耳を劈く猛烈な風の音が近付いてくる。

　翔馬は黄金色のステッキ、クラヴァシュドールを抜いた。

　一筋の煌めきが空へと輝きを放った。

　「先頭はスターオブクイーン！200を切った！1馬身半のリード！逃げ込み態勢だ！2番手ストロングファイア、大空翔馬やって来た！外からブレストファイター猛追！来た来た！ストロングファイア、一完歩一完歩差を詰める！スターオブクイーン、星野加奈ステッキの連打！懸命にゴールへと押し出している！スターオブクイーン、ストロングファイア、外からブレストファイター！残り100を切った！
　一気に来た！ストロングファイア並んだ！並んだ！2頭の叩き合いだ！1馬身置いて、ブレストファイター尾形駿馬必死に追っている！星野加奈、大空翔馬懸命に叩き合う！頭1つ出たか、ストロングファイアリードを取った！ストロングファイアだ！突き放した！半馬身から1馬身、ストロングファイアだ！ストロングファイアだ！
　ストロングファイア、無敗での7冠達成だあ〜〜‼︎ストロングファイア、ストロングファイアです！

　偉大なる父ファイアスターの血を次世代へと、その重大なる使命と責務を背負ったストロングファイアが見事にラストラン有馬記念を、そして大空翔馬、見事な、見事な、見事な••••••」

　加奈と駿馬は、先を駆けて行くその偉大なる背中を見つめながら併走していた。

　世界一遠いその背中が、荘厳なる黄金色の輝きを放っていた。

　言葉は交わさない。
　ただひたすらに、その光輝く背中を、その勇姿を瞳に、心に刻みつけるかの如く。

　導いてくれた人。
　永遠の目標の人。

　届かなかったけれど、伝えなければならない。

　想いを。　
　そして、感謝を。　

　2人は目を見合わせて、憧れの人の元へと駆け出していった。

　風が、光が舞っていた。

　優しく思い出を撫でるように。
　力強く道しるべを示すかのように。

　翔馬は、何度も、何度も宙を舞っていた。

　大空を見上げながら。

　たくさんの、たくさんの笑顔と涙に囲まれながら••••••。