翔べ君よ大空の彼方へ　　　　　4-⑫ 覚悟と挑戦

「これは強い！レトロワグラース独走だ！他馬にその影さえも踏ませない！ここは世界への通過点だ！鞍上鷹、手綱を持ったまま後ろを振り向いた！他馬は遥か後方！レトロワグラース5馬身半の差を付け今ゴールイン！圧勝です！
　レトロワグラース、ヴィクトリアマイルを制し、今世界へと発進します！」

　レトロワグラースが爆走した。
前走大阪杯•••6着に沈んだとは言え、前半1000メートル56秒8の超高速ラップを刻み、あの快速馬ユーアーマインからハナを奪ったそのスピードは、牝馬限定戦ではまさに無双！G1レース4勝目を挙げ、連覇の懸かる安田記念をパス、6月上旬に渡仏し、前哨戦を叩いて狙うは昨年2着のリベンジ、仏マイルG1ジャックルマロワ賞である。

　そのマイル国内最強牝馬と同様に、世界制圧を目指す3頭が5月下旬に渡英した
。
　大阪杯を制し、G1レース6勝目を挙げたゲメインシャフト（牡4）と、天皇賞春を制しG1レース2勝目、最強ステイヤーの座に就いたストロングクーガー（牡4）
、そして昨年末のグランプリ馬であり、前走大阪杯、最後方から脅威の鬼脚で2着に食い込んだバッケンレコード（牡4）の
4歳カルテットである。

　ゲメインシャフトとバッケンレコードは、7月下旬開催の大一番、キングジョージ６世&クイーン・エリザベスＳ（アスコット競馬場）へ。
　そして、ストロングクーガーは最長距離のG1レース、ゴールドC（芝3990メートル、アスコット競馬場）に挑むのである。
　ゴールドCは天皇賞春より更に800メートルの距離延長•••仏G1カドラン賞（芝4000メートル）と同様、息を、魂を削り合う過酷な世界NO1ステイヤー決定戦である。

　3頭はアスコット競馬場近辺の厩舎に拠点を構え、決戦に備える事になった。

　今日もまた、彼らは異国の風を背に、競い合うかのように息を弾ませ、スピード感溢れる走りとパワフルな脚捌きで緑深い大地を蹴散らしてゆく。
　共に勝利を目指して。

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　疲労積み重なった身体にムチを打ち、土佐湾沿いを歩き続けた彼の目が捉えたのは、昇り始めたばかりの太陽の光を全身に浴びた3頭の競走馬が、こちらへと向かって疾走してくるその姿であった。

　緑のターフではない。深いダートコースでもない。彼らは息を弾ませ、海からの風に吹かれながら砂浜をトロット（早足）で駆けていた。

　広大な空、登ったばかりの太陽が照らす白い砂浜•••彼は、土佐は高知の桂浜でその光景を眺めていた。
　打ち寄せる波の音に〝ザクッ、ザクッ〟という彼らの疾走音が重なった。

　近くの競馬場所属の競走馬であろうか
？彼も競馬には無縁ではない。いや、むしろ•••。
　中央競馬では見られない風景、いや地方競馬でもなかなか。海が近くにあるからこそできる芸当なのだろう。

　打ち寄せる波の音は彼らの心を落ち着かせ、美しい白い砂浜は、脚元の負担を軽減させる。
　そして海からの風は、彼らの熱く滾ったその心を優しく冷ますかのようだ。
　競走馬にとっては理想の環境でトレーニングを積む事ができる、正に一石二鳥である。

　この地方の競馬場から飛躍し、先日、中央のダート重賞を制覇したその馬のバックボーンは、この砂浜にあったのか•••彼は走り去ってゆく競走馬達の未来を願い、その美しい光景を目に焼き付け、遥か先、室戸岬の先端にある第二十四番札所、最御崎寺（ほつみさきじ）への道を歩き始めた。

　彼が、青年空海が悟りを開いたとされる最御崎寺を訪れ北上、333段の階段、女厄坂、男厄坂を登る第十番切幡寺を経由、一番札所霊山寺の山門に立ち、スタート地点である八十八番大窪寺の山門を潜り、〝円〟を結んだのは6月中旬の事であった。

　雲一つない空の下、彼の1400キロの巡礼を讃えるかのように、境内の中をたくさんの紋白蝶が気持ち良さげに、ふわりふわりと舞いを演じていた。

　志半ばで天国へ旅立った、親友であるホースマン、天国で眠る妻、そして大切な者達•••。

　彼の2度目の、祈りの巡礼の旅が終わった。

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　彼は走り続けていた。
前日からの大雨で荒れに荒れた、異国の慣れない重い芝を、先頭を駆けるただ1頭だけを目指して。　

　最終コーナーを回り鞍上に促された彼は、力強くハミを取り馬体をグンと沈め
、このレース3連覇を目指す地元の英雄ストレスフリーに迫るかの如く、大外を駆け上がった。
　全馬泥にまみれ、息も絶え絶えになるほどの消耗戦。

　彼は限界を超えた必死の走りを見せ、ゴールを駆け抜けて行った。

　そのレースを観戦したすべての者が、彼の怒涛の追い込みに目を瞠った。

　4分27秒1の消耗戦を制したのは、王者ストレスフリー。鼻差の2着にストロングクーガー、3着を7馬身引き離した2頭の力強い走りにスタンドの観客は総立ちとなった。

　地鳴りのような大歓声と万雷の拍手は
、いつまでも止むことはなかった。

🐴👏ーーー🐴👏ーーー🐴👏ーーー🐴👏

　明日から始まる3度目の巡礼の為に、彼は身の回りを整えていた。

　今回の巡礼は、彼にとっての一番大切な巡礼となるであろう。
　一番札所から八十八番札所までを巡礼し、円を結んだ後に高野山へお礼参りをする、覚悟と、挑戦の巡礼の旅である。

〝お疲れさん！凄い走りだったな！力をもらったよ！また明日から始める。心配するな！お前も気をつけて帰ってこいよ！それじゃあな！〟

　彼は英国にいる息子にメッセージを送信した。

　心に思う大切な者の無事を願いながら
、3度目の1400キロの道程を前に、彼は眠りに就いた。

砂浜を駈けるサラブレッド🐎💨

　PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝したします🥲🥹次回配信は、1月27日土曜日午前8時です。
　1人の少女が学校帰りに、1人のお遍路さんと出会います。とても素敵な少女です😊☺️果たして⁉︎
　それではまたお会いしましょう🙏🙏

　　　　　　　　　AKIRARIKA

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　　　　　　　おまけ🤭🤭

　推しの松岡正海騎手が久しぶりの勝利🏅🏆👍（単複3連単ともに買ってませんが😭）この日は私、10レースに参戦し（馬券購入）、3勝😅をあげ、最終レースで逆転、見事にプラスで終了しました😅

まあ、大勝ちはできませんでしたが、そのうちに🤭😅今年はまだプラスです☺️
　　　　　GOOD LUCK🐴📣

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