翔べ君よ大空の彼方へ 9-❶ 継承①
未来は、雲の欠片一つもない大空を見上げた。そして、目を閉じ息を一つゆっくりと吐く。
2秒吸って6秒吐いて、それを何度か繰り返す。
〝そうすればね、心は落ち着き、雑念は消えてゆくから〟
ざわめきが、静寂へと変わってゆく。
未来は目を開けた。コーチが頷いた。
「行くぞ!」
未来は愛馬ゴーベイビーゴーと共に第一障害へと向かった。
そして、風に乗り•••美しく、舞った。
彼は表彰台の中央に立ち、祝福の花束を受け取った。
障害馬術ジュニアライダー選手権近畿大会優勝•••倖田未来13歳•••満開の桜の下
、笑顔の花が咲いた。
午前8時半、京王線府中競馬正門前駅••• 2人の女子学生が驚きの余り、目を丸くして立ち尽くしていた。
数えきれぬ人々の波、波、波。
勿論2人は今日が日本ダービー開催日という事を理解した上で訪れたのだが、これほどまでとは•••。
さあ!行かねばならない!
2人は青い瞳を見合わせて頷いた。人の波に押されながら、その波を掻き分けて前へと進む。
大空翔馬を応援する為に。
「エリー•••綺麗な競馬場ねえ•••」
両頬にフランス国旗、トリコロールを描いたジュリエットが感嘆の声を上げた。
「綺麗だし、広いし、エントランスなんかほら、一流ホテルみたいだよ!」
同じく、トリコロールをペイントされたエリーが辺りを見回している。
「グッズとかもいっぱいあるみたいだし
、ドーナツ、食べたいな!」
「よし!まだまだ時間もあるし、ロッシおじさんに会う前に行ってみよう!」
2人はフランスから訪れた女子大生で
、今春から日本の大学に進学している。
ミカエル•ジュリエットは上智大学文学部、クリストフ•エリーは東京農業大学獣医学部の学生で、余程の事情がない限り
週末にはこうして会い、近況報告を欠かさない幼なじみである。
それぞれの夢を追いかける2人ではあるが、今はとにかく抑え切れないスイーツ愛を満たさねばならずとばかりに、大穴ドーナツを目指し、駆け抜けて行くのであった。
バランスボールに両足を挟み、腰を落とす。何度か勢いをつけてジャンプ、空中で体を水平にして腹筋でボールを蹴る。
そして、体勢を元に戻しお尻でボールを蹴る。
何度もその動きを繰り返して、最後に両手両足を前に伸ばしお尻で着地、反動を吸収させ完全停止。
オリンピック金メダリストの姉から伝授された体幹トレーニングに励む10歳の少年。
〝少しは進歩したかな?〟
吹き出る汗を拭いながら、ヴェロンは笑みを浮かべた。
夏休み、日本にいる姉が帰ってくるまでには目標回数以上を達成し、驚かせてやるのだ。
柱時計の上部から鳩が飛び出し、鳴き声を3回発した。
「やばっ⁉︎もうそんな時間に⁉︎あいつ絶対怒ってるよ!」
パートナーは既に待ち構えて、前掻きをしているであろう•••ヴェロンは猛ダッシュで自室を飛び出し、厩舎へと向かった。
「残り100だ!トリコロールスター交わした!トリコロールスター先頭!トリコロールスター先頭!仏の名血が今花開いた!
天国で駆ける兄よ!サイレントマジョリティーよ見ているか私の走りを!
トリコロールスター2馬身のリード!
もう間違いない!トリコロールスターだ
!22年振り!トリコロールスター、22年振りに牝馬としての日本ダービー制覇を
!そして、大空翔馬にダービージョッキーの称号を!
大空翔馬渾身のガッツポ〜〜ズ!
ステッキを高々と天へ掲げ、大空を見上げた!
日本ダービー馬トリコロールスターの誕生です!」
府中の杜が大きく揺れ、そしてトリコロールが舞った。
PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝申し上げます🥹🙏
次回配信は、12月21日土曜日正午となります🕛
時が紡いだ縁•••遠い異国にて、大空翔馬の仲間達が集まります!
また一つ、絆が紡がれます🥹🙏
それではまたお会いしましょう🙏🙏
AKIRARIKA
👑朝日杯フューチャリティーS👑
突き抜けたアドマイヤズーム💨💨😳
それではまた👋👋