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作曲家・名曲よもやま話

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作曲家や名曲にまつわる知られざるエピソードをご紹介します。お馴染みのあの曲も、まったく違った意味をもって聴こえてくるかもしれません。
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#ショパン

ショパン16歳 ひと夏の恋

ショパン16歳 ひと夏の恋

 ショパンの孫弟子のひとりに、ラウル・コチャルスキ(1885-1948、ポーランド)がいます。彼は、少年時代、ショパンの弟子で楽譜校訂者(ミクリ版)としても知られるカロル・ミクリ(1821-1897)のもとで、1892年から4年間教えを受けました。ミクリは7年間ショパンと密に交流し、直接のレッスンのみならず他の弟子へのレッスンも聴講を許されていた愛弟子。コチャルスキは、現在録音が残っているピアニス

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シューマンとショパン

シューマンとショパン

「諸君、帽子をとりたまえ、天才だ」といってオイゼビウスが楽譜を一つ見せた。表題は見えなかったけれども、僕はなにげなくばらばらとめくってみた。この音のない音楽の、ひそかな楽しみというものには、何かこう、魔法のような魅力がある。それに僕は、どんな作曲家もそれぞれみるからに独特な譜面の形をもっていると思う。ちょうどジャン・パウルの散文がゲーテのそれと違うように、ベートーヴェンは譜面からしてモーツァルトと

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名曲よもやま話(2)リストが見たショパン

名曲よもやま話(2)リストが見たショパン

リストは、ショパンが亡くなってから、いちはやく彼の伝記をしたためて出版した。2年後の1851年のことだ。
ショパン伝はこんな風に始まる。あたかもリスト自身の豪華絢爛なピアノのように。

ショパン!霊妙にして調和に満ちた天才!優れた人々を追憶するだけで我々の心は深く感動する。彼を知っていたことは、何という幸福であろう!

ショパンはピアノ音楽の世界に閉じこもって一歩も出なかった。
一見不毛のピアノ音

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名曲よもやま話(1)ショパンの初恋

名曲よもやま話(1)ショパンの初恋

ノクターン 遺作/A.ワイセンベルク(ピアノ)

 ショパンが1830年(20歳)に書いた名曲ノクターン 嬰ハ短調(遺作)には、同時期に作曲したピアノ協奏曲第2番 へ短調 Op.21の各楽章の旋律の断片がパッチワークのように組み込まれています。その二番煎じ的な構成が、違和感なく新たな世界観を獲得しているのは、ショパンの天才たる所以でしょう。「第2協奏曲の練習用として姉に贈られた」という説が有力です

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