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ファシリテーター型リーダシップ研修の事前課題
「ファシリテーター型リーダーシップ研修」に出席される皆様へ。
研修を始める前に、少し長いですが下記の文章を読んでいただき、考え方や視点について理解・共有した上で研修を始めたいと思います。
事前課題という形式で事務局から連絡が届いているかと思いますが、感想やレポートなどの提出義務はありません。
なぜファシリテーター型リーダーシップが必要なのか
目標達成や問題解決のプロセスにある程度の正解があって、社内外の先行きが見通しやすい社会環境に置かれるリーダーに求められたのは、明確なビジョンを掲げ、全員を従わせる強力な指導力でした。
しかし、現代において、その在り方だけではもはや通用しません。私たちが生きる時代は、テクノロジーが瞬く間に変わり、経済のグローバル化が加速し、社会は複雑さを増しています。
こうした変化は、チーム内に多様な価値観、異なる背景、異質な思考のメンバーが混在することを必然としました。このような状況下では、単なる指示や管理ではなく、人と人の関係を丁寧に繋ぎ、個々が自らの力を発揮できる環境を整えることが必要不可欠です。
ファシリテーター型リーダーシップが必要とされる理由は、まさにここにあります。
リーダーが「答えを示す人」ではなく、「問いかけを通して共に答えを創る人」へと進化する必要があるのです。現代のチームにおいて、リーダーが一貫したスタイルでただ前に立ち、指示を与えるだけでは、メンバーの力が発揮されることはありません。むしろ、メンバーがそれぞれの力を活かし、互いに協力し合う関係が生まれることで、チームははじめて本来の力を発揮します。
ファシリテーター型リーダーは、ただ目標を達成するために手段を指示するのではなく、その目標に対してメンバーがどのように関わり、何を生み出すべきかを一緒に考え、関係性を通して導きます。
彼らは時にメンバーの悩みに耳を傾け、時に新たな視点を示唆し、また時にはメンバー同士の対話を促進することで、メンバーそれぞれがチームの目標に対して能動的(アクティブ)に参加できるような「共創の機会」を築いていきます。
変化が激しく、未来が不確かな時代だからこそ、リーダーには「答えを持つこと」よりも、「問いを共有する力」が求められます。ファシリテーター型リーダーシップは、リーダーがメンバー一人ひとりと共に課題と向き合い、関係性を構築しながら、新たな可能性を見出すための道を創るリーダーシップのスタイルです。
「ファシリテーター型リーダーシップ」の特徴
リーダーシップの本質は“場”ではなく“関係”に宿る
ファシリテーター型リーダーシップは、単に指導者としてチームを導くことではなく、状況に応じて“場”をデザインするのではなく、むしろ「関係性そのものを生み出す」ことに焦点を当てます。リーダーはその場でどのような関係が求められ、課題解決のためにどのように人と人をつなぐべきかを直感的かつ論理的に判断します。
リーダーシップの本質が「場ではなく関係性に宿る」という視点は、特に変化が激しい状況において、メンバーが求める“安心感”と“協働”の核として機能するものです。個々のメンバーを“問い”として扱う視点
ファシリテーター型リーダーは、チームのメンバーを単なるリソースではなく、それぞれが持つ問いを探り、解きほぐす存在として扱います。リーダーは「この人は何を見て、何に苦しみ、何を求めているのか?」と問いを投げかけ、それぞれの本質に迫りながら、チームに合った関係性を築きます。結果として、リーダーはメンバーにとって“自分の問いに向き合う鏡”のような役割を果たすのです。“課題が変わればリーダーシップも変わる”という徹底的な柔軟性
このリーダーシップは、目の前の課題が変わるたびに自らを変化させます。ファシリテーター型リーダーは一貫したスキルやスタイルに囚われず、「その課題は何を必要としているのか?」と問い、必要とあらばリーダー自身がその場に適応した新しい在り方を創り出す勇気を持ちます。課題が変わればリーダーシップも変わるのです。状況をシステムとして理解しようとする柔軟性
ファシリテーター型リーダーは、個々の要素だけを見て判断するのではなく、全体を一つのシステムとして捉えます。たとえば、メンバーの関係性や外部環境、リソースの流動性など、すべての要素が相互に影響を与える構造を理解し、その変化に即応します。このシステム的な理解に基づく柔軟性があるからこそ、ファシリテーター型リーダーはチームの最適な機能を支えることができるのです。一貫性よりも“その場の事実”を選ぶという強さ
従来のリーダーシップは「一貫性」に価値を見出しましたが、ファシリテーター型リーダーシップではむしろ、「その場における事実」を最優先します。チームの結束が重要ならそれを深めるために自分を変え、リスクの許容が必要であれば大胆さを表現するなど、状況に応じた行動が求められます。リーダーが一貫性よりも「その場の事実」を選ぶことで、メンバーはリーダーの在り方に共感し、信頼を深めることができます。メンバーの多様性を“ポテンシャル”として引き出す力
ファシリテーター型リーダーは、多様なメンバーが持つ異なる価値観やスキルを、チーム全体の“ポテンシャル”として引き出す視点を持っています。各自が内在する強みを「潜在的な可能性」として扱い、課題解決に向けたエネルギーとして統合します。この多様性への敬意が、チームの創造性を大きく引き出す原動力となるのです。共感と“対話”を通じた信頼の構築
ファシリテーター型リーダーシップは、メンバーとの共感を通じて信頼関係を深め、そこに“対話”を促します。この対話によってリーダーはメンバーと個人的なレベルで結びつき、互いに理解を深めます。心理的安全性が育まれることで、メンバーは安心して自分の考えや感じ方を表現し、結果として、チームの一体感がより強固なものになります。“継続的な学び”を通じたチームの成長
ファシリテーター型リーダーシップは、チームを一度きりの成果にとどめず、継続的な成長を見据えています。過去の成功と失敗の両方から学びを得て、チーム全体が学習し、成長するための機会を整えます。リーダーが継続的な学びのプロセスを促進することで、チームは時代に即応した“進化”を続けることができます。現実や事実を自己・他者・社会との相互的な関係に基づいて変容させることができるリーダーシップ
ファシリテーター型リーダーシップは、固定的な現実をただ受け入れるのではなく、自己や他者、社会との相互作用に基づいて動的(ダイナミック)に変容しやすくします。リーダーは状況や関係性に応じて現実を捉え直し、チームがより良い未来へと進むための柔軟な行動を選び取ります。この姿勢が、変化を通じてより価値ある成果を創り出すための原動力です。現実を正しく理解した上で、対話と熟議に基づいて“ありたい姿”を協働的に創造する
ファシリテーター型リーダーは、現実の正確な把握に基づき、チームと共に「ありたい姿」を協働的に描きます。そのためにリーダーは対話と熟議を通じ、メンバーの価値観や目標を共有します。そして、皆が望む未来へと向かう共通のビジョンを創造し、そのビジョンによってメンバー一人ひとりの意欲を引き出し、チームの持続的な成長を支えるのです。
「ファシリテーター型リーダーシップ」が発揮されうる状況
「ファシリテーター型リーダーシップ」が発揮されうる状況について、以下に10の具体的なシチュエーションを挙げます。どの場面でも、リーダーは単なる指示者ではなく、状況に応じて「関係性」を生み出し、「課題と人」をつなぐ役割を果たします。
意見が対立して“静かな圧力”が漂う議論の場
リーダーシップは、意見が真っ向から対立し、誰もが自らの意見を正当化しようとする沈黙の圧力の中でこそ発揮されます。ファシリテーター型リーダーシップは、ここで場の緊張を解き、異なる視点に光を当て、対立が「新たな視点の融合」に変わる関係性を生み出します。互いが違いを尊重しながら新しい方向を見つけ出すための“場”がリーダーによって生み出されます。変革が避けられないが、誰もが足踏みしている場面
誰もが「このままではいけない」と感じていても、変わることをためらっている場。ここでファシリテーター型リーダーがとるのは、“変化を見据えた共感”です。リーダーはメンバーの不安に耳を傾け、変革の意味を彼らに問い続け、チームが変化を共に創り出すプロセスを促進します。そうすることで、変化への恐れが共通の挑戦として姿を現し、一歩を踏み出す意欲へとつながっていきます。目的がまだ定まらないプロジェクトの始動
目的も方向性もまだ不明瞭な新しいプロジェクトは、不確かさと可能性が同居する“混沌”の中にあります。この時、リーダーがまず行うのは、メンバー全員に「なぜこれを成すのか」という問いを投げかけ、彼らの内なる想いを掘り起こすことです。リーダーはそこから共通のビジョンを見出し、全員がそのビジョンに向かって共に進む“一体感”を形成します。多様な価値観と背景を持つ人々が集まる時
異なる価値観やバックグラウンドを持つメンバーが集まる場は、一歩間違えば不和と混乱を生み出す可能性を秘めています。しかし、ファシリテーター型リーダーはここで「多様性こそがチームの力である」という価値観を促します。メンバーが互いの違いを学び、尊重し合うプロセスを通じて、各自の強みが活かされる“結束の場”を創り上げるのです。目標や価値観が曖昧で、チームの方向性が見失われている場面
チームが何を目指しているのか、その価値観が見失われている時、リーダーの役割は、メンバーと共に「本来の目標」を再確認することです。リーダーは、なぜこのプロジェクトに取り組むのか、なぜこのメンバーが集まっているのかという“根本的な問い”を掘り下げ、共に「進むべき道」を見出す過程を促進します。メンバーが意欲を失い、チーム全体が低迷している時
低調な雰囲気の中、ただ指示を出すだけでは何も変わりません。ファシリテーター型リーダーは、メンバー一人ひとりの価値観や情熱に触れ、彼らが本来の力を発揮できるように環境を整えます。このアプローチによってメンバーの意欲が再燃し、自らの役割を積極的に果たそうとする“再生の場”が生まれるのです。心理的安全性が損なわれ、発言がためらわれている場
誰もが失敗を恐れ、自分の意見を表明できない状況では、ファシリテーター型リーダーが心理的安全性を取り戻す役割を担います。リーダーはメンバーの意見や気持ちに共感を示し、全員が安心して自分の考えを述べられる環境を築きます。この「自由な表現の場」がチームに活気と信頼をもたらし、各自が本来の力を発揮できるようになります。複雑な課題が絡み合い、進むべき道が見えにくい場面
課題が複雑に絡み合い、一方向からの解決策では通用しない場面では、リーダーがチームの視点を多面的に広げることが求められます。ファシリテーター型リーダーは、課題をシステムとして捉え、メンバーと共にその全体像を見据えながら進むべき道を探ります。この全体像の共有が、チーム全員の理解と行動を促し、共に課題に取り組む土台を築きます。突然の困難な状況に見舞われ、チームが混乱している時
突発的な出来事でチームが混乱している場面では、ファシリテーター型リーダーが、まずメンバーに共感を示し、冷静な立場から指針を示すことが重要です。リーダーはここで、一つの「立ち返る軸」を与え、全員が自分の役割に集中し直せるように整えます。この冷静な軸が、チームに安心と安定をもたらし、混乱の中で自分の役割を再認識させるのです。未来の方向性が見えず、進むべき道が不明確な場面
チームが行き詰まり、目標を見失っている時こそ、ファシリテーター型リーダーの存在が問われます。リーダーはまず現実をしっかりと見据え、メンバーと対話を重ねながら「共に進むべき未来」を描き直します。この対話と熟議による再構築が、チームに新たな意欲を呼び起こし、進むべき道筋を明確にし、全員の力を未来へと結集させるのです