【短編小説】転校生は未来人
小学3年生の二学期の途中、1人の女の子が転校して来た
親が転勤族なのだと先生が言う
彼女は自分が未来から来た”未来人”だと言い、あまりクラスには馴染めない様子だった
もちろん僕もそんなことは信じられなかった
そんな彼女と僕は家が近いという理由で下校を伴にする機会が多かった
大好きな絵の話をしたり、それを見せたりすると彼女はとても喜んだ
だから僕も彼女の話をきちんと聞こうと思った
それから彼女の言葉をよく聞いて、きちんと調べてみると、
実はいくつか彼女の”予言”が当たっていたことがわかってくる
”みっちゃん”の好きな人のことも、先生が怒った理由も、テレビの報道も
当初わからなかったことが明るみになり、
結局のところ、彼女の言っていたことが事実だったのだ
しかし、クラスのみんなは”今の話題”にしか興味がない
対して、僕の中では彼女への信頼度がぐっと上がり、”次の予言”が気になって仕方がなくなっていた
三学期のある朝
彼女は親の転勤のためにまたどこかへ行ってしまったと先生からみんなへ告げられる
先生はその日の放課後、彼女から預かったという手紙を僕に渡してくれた
その手紙には「君の絵は世界中の人を笑顔にするよ」と書かれていた
もちろん僕はそれを信じた
あれから何年も何十年も僕はその手紙に振り回された
信じた時もあったし、信じた自分を恨むこともあったが、忘れることはなかった
あれが彼女の予言だったのか、励ましだったのかはわからない
どちらにせよ、彼女のくれたその手紙を”言い訳”にしながら
苦しい時でもなんとか筆を動かすことができたのは事実だった
そして今、僕はパリで個展を開いている
世界中から僕の絵が好きだという方が訪れ、笑顔で僕のしわしわの手を握る
個展の順路の最後にある展示物には、”非売品”という札とともに
彼女からの”予言の手紙”が飾られていた
僕は生涯を通して彼女を見つけるためにあらゆる手を尽くしたが
彼女を見つけることは終ぞできなかった