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小児の頭痛と片頭痛

頻度

  • 男児3.4%、女児4.0%に片頭痛がある

  • 片頭痛は13歳以上になると急激に増加、その時点で性差が広がる

  • フィンランドにおける小児2,921例の多数例の検討結果

片頭痛の頻度

  • 7歳では2.7%(男児2.9% 女児2.5%)

  • 14歳では10.6%(男児6.4% 女児14.8%)

  • 年齢が上昇する従い、片側性がつよくなり、吐き気、嘔吐が減少、視覚的前兆が増加する

家族歴

  • 家族歴はほぼ同様(平均75%) 7歳で81%、14歳で73%

7歳の時点で片頭痛を有していた小児の予後

  • 14歳以降

  • 59%改善(男児63%、女児53%、22%が発作消失、37%が発作軽快)

  • 41%が不変あるいは増強

  • スウェーデン、9,059例検討、小児片頭痛の追跡調査

  • 片頭痛の頻度は7~15歳の間に2.5%から5.3%に増加する。
    片頭痛がはっきりしている73例の小児の初発平均年齢は6歳であった

  • 思春期と青年期に頭痛をもっている患者は38%減少したが、30歳以上になると60%と、かえって増加している。

年齢による片頭痛の質の変化

       7歳  14歳
視覚性前兆 19% 38% 視覚性前兆が増える
片側性頭痛 44% 71% より片側性となる
悪心・嘔吐 81% 40% 悪心や嘔吐が減少する

小児の片頭痛発作の特徴(成人に比べて)

  • 持続時間が短い
    (61%は頭痛発作時間が5時間より短かった、80%は10時間以内で24時間以上は4%のみであった)

  • 頻度は高い(32%が1週間に1回あるいはそれ以上)

  • 頭痛は日中に起こり,夜間覚醒はほとんどない
    (17%は起床時,夜間覚醒は4%)

  • 両側性であることが多い(65%が前頭部の両側)

  • 悪心や嘔吐を伴う(100%)

  • 視覚性前兆(13%)、光過敏11%、複視5%,小視症2%

  • 頭痛の誘引

  • 旅行 19%

  • 寒い気候 8%

  • 過度の運動 4%

  • テレビ 3%

  • 日光 2%

  • 特定の食物 2%

赤色眼鏡(FL41)の効果

  • 赤眼鏡を用いた群の頭痛回数 74%減弱

  • 特に学校では頭痛が軽快するものと思われたなぜなら蛍光灯から発する波長の短い光を除去するためである

乗り物酔いが多い

  • 片頭痛の小児 45%

  • てんかんの小児 7%

夢遊病が多い

  • 片頭痛の小児では睡眠中に起きて歩く事が多い

  • 片頭痛の小児では 30%

  • てんかんの小児では 7%

ストレス(86%に誘発要因となっていた)

  • 光 56%

  • 空腹 35%

  • 睡眠不足 35%

  • 食物 24%

  • 寒冷状態 18%

  • 倦怠感 11%

心理学的な検査 : 不安感うつが多い


片頭痛の抑制的治療

アスピリン

  • Reye症候群の危険性を考慮し12歳以下の小児には避けるのが望ましい

  • それ以上の小児では成人の投与量(1000mg)を投与する

  • 必要に応じて30分の間隔を置いて500mgの追加を行う

アセトアミノフェン

  • 12歳以下の小児:成人の1/4から半量(250~500mg)で
    必要に応じて30分の間隔を置いて初回と同量を2回追加する

イブプロフェン(ブルフェン)

  • 12歳以下の小児:成人の1/4~1/2(100~200mg)
    必要に応じて30分の間隔を置いて2回投与する

  • 小児の場合には鎮痛薬の投与に先立って,制吐薬を投与すべきである
    その根拠としては二つあり、 小児の片頭痛発作は胃腸症状を必ず伴っていることと、 小児の場合、制吐薬による治療でしばしば頭痛の改善が得られる眠気はかえって好都合 (頭痛がとれるから)

    • ドンペリドン(ナウゼリンなど)5mg/5mlの懸濁液がある
      12歳以下では5-10mgである

    • メトクロプラミド(プリンペランなど)5mg/5mlの懸濁液がある
      12歳以下では2.5-5mgの投与量である

    • ジフェンヒドラミン(レスタミンコーワ,ベナなど)

    • プロメタジン(ピレチア,ヒベルナなど)

片頭痛の予防的治療

インデラル 60-120mg/day 頻度70%減少
トラゾドン (デジレル,レスリン) 1mg/kg/day 頻度43-45%減少
ニモジピン 30-600mg/day 頻度15-30%減少
無効とされたのは
クロニジン(カタプレス)、ピゾチフェン
ニモジピンはわずかに有効、インデラル、トラゾドンが有効であると考えられる

有効性の推定

  • プロプラノロールでは70%

  • フルナリジンでは 60%

  • トラゾドンでは 45%

プロプラノロールの投与量は1日当たり60~120mgで2回に分割して投与する

  • 徐放剤は1日1回

  • 禁忌は,洞性徐脈と喘息を含む閉塞性肺疾患、糖尿病、うつ病

  • 副作用は,無気力,倦怠感,うつ,および不眠である

フルナリジン

  • 5mgを1日1回就寝時に服用

  • 副作用:軽い眠気、体重増加、うつ

  • 禁忌はない

トラゾドン

  • 投与量はlmg/kg/(分2~4)

  • 副作用は眠気,口渇および頭のふわふわ感

  • 禁忌はない

片頭痛のの新弾と基準(Winner、Vahlquistt、Matalの基準)

Winnerの小児の片頭痛の診断基準

  1. 1-48時間持続する頭痛が少なくとも5回はある。

    • 両側(前頭部、側頭部)

    • 片側性

    • 拍動性頭痛で、日常生活動作で頭痛が悪化

    • 4項目のうちの2項目

    • 光または音過敏、吐気または嘔吐のうち1項目

Vahlquistの小児の片頭痛診断

  1. 無症状期を伴う反復性頭痛

  2. 悪心

    • 視覚的前兆

    • 片側性

    • 家族歴

    • 少なくとも2項目以上をもつ

Maytalの診断基準

  1. 1-48時間持続する頭痛が少なくとも5回はある。

  2. 片側性

    • 中等度から高度の痛み

    • 拍動性の痛み

    • 3項目のうちの1項目

    • 光または音過敏、吐気または嘔吐のうち1項目

小児の前兆のない片頭痛 国際頭痛学会診断基準

  1. A 次のB~Dを満足する発作が5回以上ある

  2. B 頭痛発作は1~72時間持続する

  3. C 次のうち,少なくとも2項目を満たす

    • 1 両側性(前頭/側頭)あるいは片側性

    • 2 拍動性

    • 3 中等度~高度の痛み

    • 4 日常生活動作により頭痛が増悪する

  4. D 頭痛発作中,以下の1項目を満たす

    • 1 悪心または嘔吐

    • 2 光過敏または音過敏

 国際頭痛学会の小児の片頭痛の診断では片頭痛と診断された11-81%の頭痛持続時間は2時間以内で、8-25%の頭痛持続時間は1時間以内であった。
 以上より小児片頭痛の持続時間は1-2時間位が特異性、感度がもっとも高いのではないかと考えられるようになった。

片側性頭痛について

子供の片頭痛の場合片側性は67%(Metsahonkala and Sillanpaa)
国際頭痛学会の分類では片側性は41.5%
両側性頭痛が小児では一般的で、85%では片側性であった。
以上のことより小児片頭痛の診断基準に「片側性」が残らなければならない。

拍動性疼痛

小児期に拍動性を確認するのは難しい。
小児片頭痛では拍動性疼痛は36-86%である。
中等度から高度の痛みは57.6-97.1%である。
小児片頭痛の診断基準に入っていないが片頭痛の小児が持つ特徴には

  1. におい恐怖症

  2. 蒼白

  3. 頭痛の有無にかかわらず発作性腹痛をきたす

  4. 繰り返すめまい

  5. 光過敏のため暗い部屋にいく

  6. 光過敏のため目を細くする

  7. 光を消す

  8. 月経による頭痛の悪化

片頭痛発生率(12歳〜29歳までの人たちについて)

10000人のうち男性392例、女性1018例が片頭痛と判断された。
男性では前兆のある片頭痛は5-6歳がピーク、前兆のない片頭痛は10-11歳がピーク
女性では前兆のある片頭痛は12-13歳がピーク、前兆のない片頭痛は14-17歳がピークであった。

片頭痛にかかる率

  • 3歳までの片頭痛は 3-8%

  • 5歳では 19.5%

  • 7歳まで 37.5-51.5%

  • 7-15歳 57-82%

Mortimer、3-5歳の間、男の子の方が頭痛の発生が多いとしている。

国際頭痛学会の診断基準を利用すると

7歳の片頭痛患者は1.2-3.2%
7-15歳までの片頭痛は4-11%
男児では3―7歳は女児より多かった。
7―11才で男女とも片頭痛の患者はほぼ同数になった。
片頭痛の男女比逆転が外国に比べ若干遅い傾向にある。
最近では学童において頭痛の発生が増加傾向にある。

フィンランドの研究では

1974年と1994年の比較では7歳の片頭痛の患者は1.9%から5.7%に増加している。
近年片頭痛は男女とも増加傾向にある。
重症の小児の片頭痛の追跡調査では2年以上頭痛がない時期がある患者がしばしばみられた。30歳以降40%で片頭痛は消失していた。
5-14歳の小児300人の追跡調査では29%で8年症状がなく、34%で10年症状がなかった。

メイヨークリニックの研究では

頭痛治療後の9-14歳では32.8%は完全に頭痛消失、46.6%は大幅に改善した。治療効果は80%に上る。

Billeの研究では

73人のはっきりした片頭痛患者の23年間の追跡調査では60%がなお頭痛を持っていると報告している。
大多数は数年間頭痛が現れなかった。

Sillanpaaの研究では

7歳以前に発症した片頭痛患者のうち完全に頭痛がなくなったのは男児26%、女児19%、完全寛解は男児が多い
8-14歳で発症した片頭痛患者のうち完全に頭痛がなくなったのは男児22%、女児27%

小児の片頭痛治療方針

初期治療

  • カロナール 10-15mg/kg

  • ブルフェン 10mg/kg

  • ナイキサン 10mg/kg

中等度~高度の片頭痛で本格的治療

  • トリプタン
    イミグラン注射を0.06mg/kg 30分で72%有効、2時間で78%で有効である。

  • 鼻腔スプレー5mg、20mg

  • 鼻腔スプレーの副作用としては味覚障害、この症状はキャンディーで解消できる。

  • 錠剤 50mg

  • 副作用としては温感、緊張感、灼熱感、刺激感、しびれ感、違和感、血圧変化が1-4%あった。

  • マクサルトの有効性は5mg(半錠)投与で有効性66%

  • 副作用としては疲労感、めまい、傾眠、口腔乾燥、悪心がある。

  • ゾーミック1錠2時間後の有効性は80%であった。ゾーミック1/2錠では有効性は88%であった。

  • 2006年2月に発行された慢性頭痛ガイドラインでは成人に比べ基礎疾患を持つものが少なく、薬剤に対する処理能力も高いので、小児にトリプタンを使用してもよいと考えると明記されている。

  • エルゴタミン(ジヒドロエルゴタミン)

  • 吐き気止め(ピレチア錠、プリンペラン錠)と併用する事が薦められる。

  • 6―9才では0.1mg/1回

  • 9-12才では0.2mg/1回

  • 12-16才では0.3-0.5mg

  • 消炎鎮痛薬 15歳未満のアスピリンはRye症候群を避けるために使用しないほうが良い。

  • 制吐薬  ヒベルナ糖衣錠、ピレチア錠

片頭痛予防薬

抗てんかん薬

  • フェノバルビタール、カルバマゼピン、フェニトイン、ジバルプレックスナトリウム

  • ジバルプレックスナトリウム(本邦未発売) 105-45mg/kg投与

  • 4ヶ月後の治療後は76%は頭痛頻度が50%以上減少した。

  • 18%では75%以上の減少

  • 6%は本質的に頭痛が消失した

抗うつ薬

  • トリプタノールは小児の頭痛頻度を減らした。

  • ジバルプレックスナトリウムが小児思春期の片頭痛予防薬として効果的であることを示している。

  • トリプタノールの適量はまだ確定していない。

  • 5-10歳の開始量は0.25-0.5mg/kgであるとしている。1日10mgまで増量し就寝時に服用させる。

  • 思春期では10mgが合理的開始量である。

  • 1日当たり10-75mgが頭痛頻度を減らすのに効果的である。

ペリアクチン

  • 抗セロトニン作用のため頭痛抑止効果がでる

  • ペリアクチン 0.2―0.4mg/kg/日で19人のうち17人に著明改善、4人は頭痛が消失している。

  • 開始量 2mg―4mg就寝前 、1日4-12mgで効果みられる

  • 副作用は鎮静作用、体重増加、傾眠傾向がある。

βブロッカー

  • セロトニン受容体拮抗作用、アドレナリン受容体の調節作用で効果を発揮する。

  • インデラル以外で小児片頭痛に有効であるものは見つかっていない。

  • Ludvigssonはプロプラノロール 1mg/kg/日が効果的であると結論つけた。

消炎鎮痛剤

  • ナプロキセンは予防薬としても有効である。

  • 10mg/kgを1日2回投与する。

  • その他の予防治療効果の期待されるもの

  • トラゾドン

  • ピゾチフェン

  • クロニジン


参考文献

  • ウインナー,ポール著、寺本純訳 『小児の頭痛』 診断と治療社 2002年

  • スピーリングス,E.L.H.著、寺本純訳 『片頭痛の治療』 診断と治療社 1997年

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