◎この記事には十八歳以上向けの表現が含まれています。
デビュー作【ハードX版】と【eブックス版】の違いについて
はじめに
草飼のデビュー作は2006年にフランス書院ハードXノベルズから刊行されました。フランス書院公式でのみ電子化されてはいるようですけれど、実際にそちらの電子版を購入して確かめたわけではないのでよくわかりません。フランス書院のページに各種電子書籍サイトへのリンクが貼られていますが、リンク先では販売されていないと思います。
各種電子書籍サイトで購入可能な電子書籍版『牝豹陥落』は、全面改稿しております。これはもちろん、よかれと思ってやっているわけで、こちらが《完全決定版》であると、胸を張って言えるのではありますが、しかし、「直せばよいというわけではない」という意見もあるだろうし、「初出バージョンの方がよかったのではないか」という見方もあるでしょう。「あの文体には二段組のあの版面が合っていた」という意見もあるかもしれない。
それ以前にそもそも現在、読み比べるということはあまり容易ではないと思えるわけで、少なくとも、選ぶ自由、または、読み比べる自由、くらいはあったらいいなと思うわけです。
本当は【ハードX版】ももっと入手容易な電子化ができればそれがいちばんよいと思うのですが、販売契約やら何やらがありますので、草飼が勝手にやるわけにはいかないのです。
抜粋・引用し比較・検証するというかたちでなら、ある程度可能ではないかと考え、それをここで試みたいと思います。
【ハードX版】
【eブックス版】
まとめ
いかがでしたでしょうか。
用語的な違いとしては、高校→学園、校長→学園長、という変更があります。これはいちおう規制対策といいますか、中学(中学生)・高校(高校生)およびそれに類する単語はなるべく出さない方がいいかな、と思ったからです。とはいえ、Amazon販売開始当初は〈アダルト〉に入っていなかった『牝豹陥落』が、いつからか〈アダルト〉に分類されてしまっておりまして、どうせそうなるのだったら校長のままでよかったかなとも思います。
ハードX版の方が全体にひらがなが多いのは、『~王国』あたりでもそうなのですが、実はその頃の時点ではまだ自分の中で漢字/かなの変換ルールがまるで確立していなかったから、というのが大きな理由です。森博嗣さんの自伝風小説の中で、主人公がデビュー作のゲラが出た時点で、漢字/かなの変換の不統一を指摘されて、そこで初めて一覧表をつくる、というくだりがあります。草飼も似たような感じです。あと、草飼が文体的な影響を受けている作家さんというと西村寿行さん、菊地秀行さん、京極夏彦さん、といったあたりなのですが、もうお一人、小松左京さんの意外とひらがなの多いあの文体の影響も、初期の頃は受けています。また、栗原康さんのひらがなの多い文体(『死してなお踊れ 一遍上人伝』『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』)も大好きです。
全角二文字分ダッシュ(またはダーシ──これ)の使用も小松左京さんや京極夏彦さんの影響が強いわけですけれども、eブックス版では、ダッシュの使用は意図的に避けています。kindle端末でいろんな小説を読むんですが、あのダッシュの線が太く表示されてしまうのが気に入らなくて、一時期、使用を控えるようにしていました。『牝豹陥落』リリースは、ちょうどその時期に当たります。最近はまた使い始めていますけれど……。
望月香澄さんのこのお話を、〈アダルト〉ではない全年齢向けに書き直したものが、↓こちらになります。
文・写真 草飼晃
Akira Kusakai 2006, 2022, 2024