見出し画像

第14回 フィビヒ 交響曲第2番

チェコ音楽のレコード紹介Vol.14は初登場フィビヒの交響曲第2番変ホ長調作品38を紹介いたします。
ズデニェク・フィビヒ(Zdeněk Fibich)は1850年生まれ1900年没。時代的にはスメタナやドヴォルジャークと重なりその少し後にあたる。私は長年勘違いをしていて、スメタナより前に国民的オペラを書いた人物だと思っていた。「ブラニーク」「シャールカ」といった歌劇作品がスメタナの「わが祖国」の題材とも重なるように、スメタナの後継者的な期待があったようだが、今日あまり演奏される作品は少ないように思われる。
交響曲は3曲作曲していて、今回見つけた第2番は1893年の作曲、典型的な4楽章編成で、楽章構成も第二楽章に緩除楽章、第3楽章にスケルツォが配されているがっつりとした交響曲。国民楽派の作曲家としては、民族的な音楽的要素は強くは見られず、ドヴォルジャークが絶対音楽においてさえも民族的な要素を強く練りこんで、民族自決の機運を鼓舞するような作曲を続けていたことに比して、存在感の弱さを感じさせるのは否めないことのように思う。
しかしながら、主題の展開力や作品の構成力はなかなかの巧妙さを示していて、明るくておおらかな曲調でスケール感もある大作と仕上がっている。後期ロマン派的な交響曲として、完成度の高い作品であり、充分に楽しめるものであることは間違いない。
レコードはイジー・ワルドハンス(Jiří Waldhans)指揮ブルノ国立フィルハーモニー管弦楽団の演奏。1976年3月にブルノで録音され、翌年発売されたチェコ・スプラフォン盤。日本国内では発売されなかった音源なのではないだろうか。クワドロ・フォニック(4ch)で音質の良い録音に、美しいジャケット。良い状態のものを見つけて喜んでおります。ワルドハンスの手堅い指揮ぶりも好印象。ワルドハンスのレコードは協奏曲のバックなどでしか聴いたことがなく、彼の本領を知る機会にもなった。おかげで、あまり聴くことがないフィビヒの一端を知ることができたが、今度はオペラや標題音楽などの作品にも出会ってみたいものだ。
ところで、「フィビヒ」の表記を「フィビフ」とすることをチェコ語の語感に近いという理由で推奨するという記述もあった。最近はチェコ大使館などのWebでも「ドヴォルジャーク」を「ドヴォジャーク」と記しており、そういった標記が一般的になっていくものなのかもしれない。(エンモ・コンサーツ:加藤哲)

いいなと思ったら応援しよう!