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第12回 マルチヌー 交響曲第4番
チェコ音楽のレコード紹介Vol.12は、前回に引き続きマルチヌーを取り上げます。つい先日交響曲第4番H.305(Hはハリー・ハルプライヒの作品番号)の良いレコードを見つけましたので紹介したいと思います。このレコードはチェコ・スプラフォン盤で指揮はマルティン・トゥルノフスキー、管弦楽はチェコ・フィルハーモニー管弦楽団です。近年はマルチヌーの交響曲全集を録音する指揮者も増えてきましたが、レコード時代となるとヴァーツラフ・ノイマンのものしかなかったように思います。私もノイマンのものを揃えようと色々物色しているところですが、中古レコード店でこの盤に出会って懐かしさを覚え思わず買ってしまいました。
トゥルノフスキーは1928年プラハ生まれ、1978年に初来日したのですがこの年の5月に京都市交響楽団の第205回定期に登場し、私は当時京響の定期会員だったのでその演奏会を聴きました。モーツァルト、プロコフィエフ、ドヴォルジャーク(新世界)を演奏しましたが、なんとも端正で誠実な演奏であったことを覚えています。彼のレコードはおそらくそう多くなくて当時日本盤ではプラハ市響を振ったハイドンの交響曲(「驚愕」「時計」)ぐらいしか出ていなかったのですが、その演奏も素晴らしいものでした。日本での評判はとても良く1998年からは群馬交響楽団の主席客演指揮者に就任、その後同楽団の名誉指揮者、永久名誉指揮者の称号が与えられています。2021年にウィーンで没しましたが、群馬では追悼演奏会も開かれています。真面目でお人柄も良かったのだと思います。ちなみにマルチヌーの交響曲を群響では何度か振っており、第4番は1997年と2002年に演奏した記録が残っています。このレコードは1965年の録音らしい、まだマルチヌーの交響曲などよく知られていなかった時代にその価値を知る正統な演奏として高く評価されるべき録音だと思います。
マルチヌーの交響曲6曲は全てアメリカ時代に書かれており、この4番は1945年の作曲。明快で抒情性があり彼の交響曲を知るには入門書的な作品となっています。1953年に書かれた交響曲第6番「交響的幻想曲」がこのジャンルの集大成的な作品とされていますが、第4番のとりわけ第3楽章に見せるリリカルな表現などはその成功の足がかりになる大きな布石になったのかと思われます。B面の3つのリチュリカーレH.267(1938)はパリ時代の作品。この時代に取り組んだコンチェルト・グロッソ様式における一つの高みを感じさせる作品です。蛇足ですがジャケット裏面の曲目表示があたかも3楽章構成のように印刷されています。B面の1曲目が第4楽章になるので注意が必要です。(エンモ・コンサーツ:加藤)