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第2回 スメタナ 連作交響詩「わが祖国」

チェコ音楽のレコード紹介第2弾はスメタナの連作交響詩「わが祖国」、カレル・アンチェル指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団。1963年の録音。このレコードは1978年に発売されたもの。
スメタナはリストに多大な影響を受けて交響詩を何曲か書いているが、6曲からなるチェコを表現した絵巻物のようなこの連作交響詩はまさに代表作。自然や歴史を辿るような曲群は、なんといっても第2曲のヴルタヴァ(モルダウ)が有名だが、私は特にフス派のコラール「汝ら神の戦士」の引用が加わる第5曲「ターボル」以降心を揺さぶられてしまう。抑圧を強いられたチェコ民族が、したたかに希望に満ちた未来を得るようなエンディングは実に感動的で、この時すでに聴力を失っていたスメタナの心情と共にえも言われぬ高揚感で聴き終えてしまう。
個人的には1975年録音のノイマン盤を推すが、今回入手したアンチェル盤も素晴らしい。アンチェルもナチスから迫害を受けたり数奇な運命を辿る指揮者だが、中でも1968年アメリカへの演奏旅行中にソ連の軍事介入、いわゆるチェコ事件が起こり帰国ができなくなってしまい、そのままカナダに亡命し一生チェコに帰れなかったことは大きな不幸だったに違いない。
余談だが、このレコードは通常2枚組となることが多いわが祖国の全曲レコードにおいて、LP1枚に収められている珍しいものだ。実はアナログレコードは、溝を少し浅くすれば片面に40分ほど収録ができてしまうのだ。ただ針と溝との接地面が少なくなる分どうしても少し音質が損なわれてしまう。裏返したり出し入れしたりする手間を省けるメリットと天秤にかけて選ぶことになるわけだが、そういうこともレコードファンの楽しみの一つなのかも知れない。(2023年12月12日・Musica Panenka facebook 投稿)


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