即興型ディベートで身につくのは、「ドア・オープン力」では?
即興型ディベートで身につく力とは結局何なのでしょうか?
私は一言で申しますと、「ドア・オープン力」なのではないかとお話しさせて頂いております。大学での勉強はもちろん、民間企業、官公庁、NPO/NGO、研究機関等どのようなセクターで働くにしろ、フリーランスとして働くにしろ、幅広く個人の可能性の扉を開けてくれることがその由来です。
私は、大学での研究の一環で国内外の多くの即興型ディベート経験者の進路や身についた能力に関して研究しています。(過去には学会発表もしています。)主に、①インプットとしての様々な社会課題に関する知識、②プロセスとしてのスピーディーな思考力、③アウトプットとしての論理的・感情的な分りやすさを意識したプレゼンテーション力の3点が身につくことは見えてきたのですが、人によって身についた能力は様々だと言います。例えば、「引っ込み思案だった私だったが、人前で話す力が身についた」「一番身についたのは、PDCA力」といったコメント等もあります。
進路についても、一定の法則は見られるものの多岐に渡ります。公開情報を基にしても、例えば、
・アジア大会で最優秀個人賞を受賞し、世界大会でも副審査委員長を務めているサディック・サイード氏はマレーシアでなんと26歳という最年少で大臣に就任しています。
・2010年の世界大会で最優秀個人賞を受賞しているリー・シェンウー氏は、シンガポールの初代首相であるリー・クアンユーの孫で現在33歳でハーバード大学で教壇に立っています。
・2011年の世界大会で優勝している、フィンケル・ビクター氏は、世界的な戦略コンサルティング・ファームであるMcKinsey & Companyで働いているようです。
・1997年の世界大会で優勝している、ヒューム・アンディー氏はディベート教育のスタートアップ・Learning LeadersでPartnerを務めています。
日本国内で見ても、弁護士、官僚、国際機関、商社、銀行、コンサル、メディア、エンターテイメント等、多岐に渡っています。
国内のヒアリングや海外の記事を見ていても、一方で、「ディベートが役に立った」という答えが返ってきます。どのような業界であっても、共通しています。どのような局面でも役立つ「ドア・オープン力」なのではないか、と思っています。
これはなぜか。それは、即興型ディベートがある種「総合格闘技」的に、色々な能力を培わせてくれるからなのかもしれません。冒頭に申し上げたインプット・プロセス・アウトプットは全てバランスよく身に着けないと勝つことは難しいからです。特に、「競技」であることから一種「勝つために頑張る」というメカニズムも働いていることが見えてきています。