公募ガイド「小説でもどうぞ」感想①
先月以前の掲載作品も含め書かせていただきました。また後日に書き足したいと思います。
佳作「レントゲン名人」桜坂あきらさん
今月掲載です。文章自体もですけど構成が巧みです。だらだら書かずに出だしの一文だけでどんな物語世界かを説明していてサッと引き込まれます。これはサンドウィッチマンの漫才に似ていて、よくある「おれ、先生。お前、生徒な」「うん、わかった」のくだりがなくてパン!って手を叩くといきなり劇に入る、あの手法を思い出しました。漫才のあの手の説明ってただでさえ時間短いのに浪費と感じるんですよ。素人臭くも思える。偉そうにすみません。手を叩くイコール場面転換なのだと無理なく聴衆に提示してる、これを発明した(彼らが発明したのではないかもしれないけど)サンドウィッチマンも巧い。
「女性の下着を透視する」内容がおかしいんですけど文体がしっかりかっちりしてて真面目なのでおかしさが引き立っています。私、ギャク、ユーモア小説のどこがおもしろいのか刺さるのかを考えながら読んだりもするんですが、その人たちはおもしろいことを書いても強調せずサラッと流してるからおもしろいんです。コメントに例えるとノー絵文字で1~2行だけなのにやたらジワるコメント。この例えわかります? 私はひそかにコメント達人と呼ばせていただいております。わずか1~2行で核心を突いてくるおそるべきコメント。この作品でいえばどこがサラッとしてるのかと言いますと例えば中盤の「それなりの一輪車」このフレーズがツボにはまりました。あと小技が効いてると思ったのは司会者が女性に言う「素敵な方ですね。」テレビ司会者がいかにも言いそうなセリフで、臨場感をアップさせています。
司会者が当てる女性が「友人同士」なのが伏線です。下着を見るので赤の他人には頼めず友人同士のペアにするしかない。司会者として自然な選択ですね。しかし彼女たちがタッグを組んだ結果、主人公の幸せは「カラ幸せ」に終わってしまった。山分けでも賞金ゲットできたのはラッキーなのですが。女性たちが赤の他人同士だったら皆を騙す考えには至りにくかったでしょうから、話の流れにムリがない。伏線が自然に回収されていて見事。
佳作「コイントス」牧野冴さん
この作品も文章巧し。巧いって何度も書くようですがそりゃもちろん、皆さん巧いんですよ。その中でも自分が好きな文体、文体のリズム、ということです。この作品は余韻がエグかったのでよく覚えています。居酒屋のお姉さんはたぶん、主人公の想い人――と思いたいけど、結末は書かず、読み手の想像に委ねられています。もし想い人じゃなかったとしても主人公の胸のうちで雪は永遠の女性として残る。ほのかな淡い光が読み手の心にも残る。うん、大事ですね余韻。けっこう前の掲載なんですが、最後すごいよかったよなあと覚えてますもんね。
最初読んだ時、好きだった女の子が目の前にいるのに髪型とメイク服装を変えただけで気づかない事ってある? とちょっとだけ疑問が生じました。でも、あるんです。同窓会に行ったら昔好きだった人が様変わりしていて全く気づかなかった、という事が、往々にしてあるではないですか。
佳作「人生の選択」白浜釘之さん
輪廻転生が実際にあるとするとこの作品に書かれているようなものだろうなと思います。転生前に記憶がなくなるからいいけど、残ってたらまさに無間地獄。本当の意味で死ねない…。これ地獄なんだと気づくラストの余韻が秀逸です。本作を読んで思うのはやはり、魂ってリサイクル品なのでしょうか。死ぬと魂に刻まれた記憶が消去されて次の人生のプログラムが書き込まれるっていう。過去の人生の記憶がちょびっと残ってる人がいるのは消去に失敗したってことで。私らは神様のパソコン内の住人なのかもしれません。メモリが有限なので作る魂も有限、だからリサイクルして使い回さんとあかんのでしょう。パソコンは…宇宙なのでした。
はろかなる星の座に咲く花ありと昼日なか時計の機械覗くも
前川佐美雄
ここで突然の佐美雄登場です。時計(パソコン)の中に宇宙があり、時計(パソコン)ごと自分は宇宙に包まれている。永遠に内包される自分。宇宙ってこういうものかもしれません。書いてる自分もよくわからなくなってきました。
この前から心がどうのこうの書いてますが、肉体が滅びると心も消滅するって本当に~?って思っちゃいます。この、笑ったり泣いたり複雑に動く心はどこへ行くねん? 消滅するんじゃなくて内容がリセットされ次の肉体にインプットされると考えると理解できますが、いま、しっかりガッツリ感じている「私だけの心」がリセットで「消えて」しまう。それって本当に~っ? てやっぱり思っちゃいます。
作者様に読まれている状況ではなんか書きづらいので、離れ小島みたいなところで作品に関係ないことも含めてぐちゃぐちゃ、好き勝手に書いてます。文芸選評の感想をXからこっちに移動したのもそういう理由です。文字たくさん書けるし、なんかさ、本人に読まれてるかもと思うとのびのび本音が(妄想作文が)書きづらいんです。なんかさ、人の目にとまらない方がのびのび書けるんです笑。読めば読むほど思うのは巧い人だらけ。文章どうこうだけじゃなくて世界観をしっかり出している。「大人」である。そのなかで自分は文章含めいろいろ足りてないのに何だか偉そうなことばかり書いててすみません。でも…書いてしまいます。
小説でもどうぞに応募されている方ならご存じと思うのですが、落選作品に抽選で編集担当の黒田さんから感想がいただける企画をされています。9月8日まで、抽選で15作品です。投稿方法についてはちょっと複雑なので公募ガイドのメルマガ登録すればメールで届きます。黒田さんに感想もらえるの、これは嬉しいですよね!
黒田さんのお言葉
「毎回楽しみながらチャレンジしているうちに、いつのまにかうまくなっていた、となってもらえることを目指して始めました。」
楽しみながら、というのがすごく好き。創作の原点は、自分が心から楽しみながらすることなんだ。最近本当にそう思います。