男子宝石③ #毎週ショートショートnote
糸とんぼは青い宝石を縦につなげた形をしている。下校中、浩太は沙織ちゃんに見せたくてそばの田んぼに降りました。都会から越してきた彼女は生きている糸とんぼを見たことがないのです。
家が近いのでなんとなく一緒に帰るようになったのでした。男子が女子と一緒に帰るのをひやかす奴もいるけれど、勝手にほざいとけ。浩太にとって沙織ちゃんはこの田舎に都落ちしてきたお姫様なのでした。彼女には青い宝石が似合うと浩太は思う。
田んぼの一画に苗代がありました。苗がさわさわゆれています。いた。浩太はそっと近づき、青い糸とんぼを難なくつかまえました。
手に込めて戻り沙織ちゃんに見せると
「怖い。虫って苦手なの」
浩太はしょげてとんぼを逃がしてあげました。
「浩太くん、帽子落ちてるよ」
二人で苗代に近づくと
「あれ、見て!」
雌雄がつながっておりその形はまるでハート型にみえました。
「なんか、かわいいね」
「でしょ」
なんとまあできすぎた演出。
とんぼさんありがとう。
(410文字)
たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。