『キリエのうた』のイッコを思うと悲しい。

映画『キリエのうた』を映画館で2回観たが、そのときはキリエ(ルカ:アイナ・ジ・エンド)にぶちのめされた。
こないだBlu-ray Discで観たときはイッコ(広澤真緒里:広瀬すず)に入り込んだ。
映画を監督した岩井俊二による原作小説『キリエのうた』を読んだら、真緒里がイッコ(一条逸子)になった物語の空白部分が埋められていた。
真緒里は帯広から東京に出てきて通うはずだった大学を休学しているときに、越智柚子子(おちゆずこ)に出会う。というか見初められる。
柚子子は男たちと交流・交際をして華麗に金を稼ぐ「天女」という営みで生きている。
柚子子は真緒里の容姿や性格を気に入って、経済的に援助しながら、天女に育て上げる。
柚子子は引退して、真緒里を自分の後継者にし、一条逸子(イッコ)という名前を与える。
柚子子はおそらく非合法なことはしていなかったのだろう。貢いだ男たちから告発されていない。
しかしイッコは結婚詐欺師であるとして告発されてしまった。天女として生きていたのに。
頂き女子りりちゃん事件が報じられたとき、イッコを連想した。
頂き女子の人生が悲しかった。
イッコは帯広で母親や祖母がスナックで酔っ払い相手に「女」を売り物にして生きる姿が嫌だった。だから東京に出てきた。
しかし、今、天女として生きる自分は結局「女」を売り物にしているのではないか。
キリエのマネージャーというアイデンティティは、イッコに新たな生きる意味を与えたのかもしれない。
しかしその意味が実態となる前にイッコは破滅した。
イッコを思うと悲しい。
「キリエ・憐れみの讃歌」はそんなイッコに捧げたキリエからの愛情の歌かもしれない。

 世界はどこにもないよ
 だけど いまここを歩くんだ
 希望とか見当たらない
 だけど あなたがここにいるから

 「キリエ・憐れみの讃歌」より


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