柿泥棒させていただきます
家の近くで散歩していて、夕焼けがあまりにもすごいのでスマートフォンでカシャリ、とやったら、「すごい夕焼けですね」と背後の至近距離で声がしてビクッと振り返った。見知らぬ年配のおじさんがニコッとしていた。
「この家の柿をもらいに来たんですよ」と、おじさんは聞いてもいないのに勝手に喋りだした。
「ああ、橋本さんちの柿ですね」と僕は答えた。
とくに塀に囲われているわけでもない橋本さんの家の敷地に、柿の木が2本と蜜柑の木が1本生えていた。柿の木には柿の実がたくさん生っていたが、この時期なのでもちろんまだ青かった。
「昨日ここで柿の実を見ていたら、ここのご主人が出てきて、よろしかったらどうぞ取って行ってください、って言ってくれたんですよ。自分は食べないからって」と、聞いてもいないのにおじさんは語りだした。
「でも、まだ青いですよ」と僕が言ったら、
「この青くて硬いのが好きなんですよ」とおじさん。「トマトも青いのが好きでして、歯ごたえが最高です」
とニコニコしながら、柿の下に侵入していくのでした。
そして、
「それでは柿泥棒させていただきまーす!」
と陽気に犯行予告してから柿を取り始めました。
そんなことより夕焼けだ、と西の空を見たら、夕焼けの赤みはすっかり褪めていました。柿泥棒に付き合うんじゃなかった。
それにしても青い柿って食えるのか?
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