Uターン施策のまとめ。(青年会議所✖️市議会
はじめに
ぼくは、一般社団法人陸前高田青年会議所(以下JC)に身を置くと同時に、陸前高田市議会議員でもあります。この度は
・市の補助金を用いてJCの企画を行い
・そこから得られたインサイトを議会で提言
をしましたが、JCは非営利組織であり(メンバーは年間10万円の会費を支払い&自身の時間やお金を投じて地域貢献事業に取り組みます)、利益誘導的なものは一切起きておりません(純粋な地域貢献事業であるところもぼくがJCを好きなところです)
なぜ、Uターンに着目したのか行き着いたのか
日本の地方創生で最も注目されているのが人口減少対策(なお、後ほど人口減少社会対策の文脈でも議論を行いますが、まず「人口減少対策」から論を進めます)です。
これについての考え方は別として、国、県、市で多くの予算が投じられています。まず人口減少対策について、人口減少のメカニズムを因数分解するところから始める必要があります。
各委員長に対して、対話形式での勉強会を行わせていただきました。
人口減少はやばい。と良く言われますが、その原因を因数分解できますか?
因数分解の仕方には、色々やり方はあると思いますが、陸前高田市についてで考えるとこうなると考えます。
市あるいは国で課題設定としているのは、結婚、カップルの子供の数、Iターンです。(たとえば寿命で亡くなる方の数が多いことが人口減の一番の要因ではありますが、これは解決し得ない問題なので、課題設定としてはふさわしくありません)
ふと思ったこと
地方は「よそ者、若者、バカ者」が変えるとか言われて、ありがたいことにぼくも妻も、移住者仲間も多くがメディアに取り上げていただいたりします。
一方で地域を回っていると「子や孫はもう帰ってこないから、お前達(移住者のぼくたち)には期待したいよ・・・」という嬉しいやら、切ない声をよく聞きます。
てか、市のUターン施策ってどうなってるんだっけ?
移住にはUターン、Iターンも含むし、人数で言えばUターンの方が多いのでは。よく考えたら、地元出身で頑張っている方々もいる。市の施策としてはどうなっているのだろうか。
ということで調べてみました。
実態について
なんと「わからない」のです。市への流入数は把握できていますが、内訳がわからない。
市の人口動態。木村作成
現状がわからないのに、施策を打てるわけはありません。
・移住定住窓口の方曰く「昨年、100件ぐらい移住相談があったが、全員Iターン者だった」
・市の担当課曰く「Uターン奨励金という移住者に対して3〜4万円支給する事業があるが、その受給者がUターン者なのかは把握できていない」
という話でした。
議会でどんな議論がされてきたのだろうと調べる(2022年3月時点)
「Iターン」は128件ヒット。
Uターンは脅威の0件!
もちろん年間で何人もUターンの方はいるのでしょうが、少なくとも「政策として、目標を定め、現状を分析し、ギャップがあるなら仮説を立て次の政策を打つ」というPDCAは回っていなさそうです。
概算
一応、現状の値を概算すると
5年ごとに行われる市の国勢調査を斜め右に見ていくと、◯年時の世代が△年時には何人になっているのかがわかります(しかし、社会増減にはUIターンも含んでしまうため、Uターン者の数は実際の数字より低く見積もる方が良さそう)かなり乱暴ですが
「10いた人口は6〜7減って、1〜2増えて、5になる。」
1〜2増えてのうち、いくらかはIターン者なので、人口の6〜7割以上は流出し戻ってこない。と見ていいのではないでしょうか。
ここに対して、施策を用いないというのはもったいない(伸び代がある)ように感じます。
Uターンイベントの狙い(用いた仮説)
原因と解決策の仮説に分けて整理してみます。
人口流出して戻ってこない原因の仮説
・地方で進む、高学歴化。(今の高校生の進学希望割合は、親の代の約2倍。そのうちほとんどが奨学金を利用します。
・つきたい仕事がない
・(一方で地域では圧倒的な人手不足にもかかわらず)その情報が届いてない
かつ、もう一つ重要な議論が、なぜ、Uターンについてここまで扱われてこなかったのか。です。
扱われてこなかった原因の仮説
・Uターンする人は「都落」のイメージがある(地元の方のヒアリング、「書籍:関係人口の社会学」より)
・Uターンは、教育から始まり、移住施策、産業施策と絡む、長期複合的施策のため取り扱いが難しい。(⇄Iターン施策はマーケティング的にPDCAを回せば5年ぐらいで成果を出しやすいのかもしれません。)
心の過疎について
ぼくは大前提、「人口減少社会対策」をするべきと考えています。どう足掻いても人口は減っていく。その上でどう豊かな社会システムをつくるか。という話が重要です。人口流出、人口減に伴い、地域内で自信や主体性が失われていくことを「心の過疎」Uターン施策はその意味で、「どうせ子供たちは戻ってこない」「こんな街2度と戻ってくる気はない」というのはまさに心の過疎を生み出していると思います。「いつか陸前高田に戻ってくるもよし、都会で活躍するもよし」という状況で送り出したいじゃありませんか。
集客について
①地元出身者による直接声かけ
②声かけできそうな人への声かけ
③周知戦略(回覧板など)
を主に軸として行いました。①、②で乗り切ろうとしたのですが、なかなか苦戦しました。
◆実際に行ったこと(時系列で戦略判断のタイミングを書く)
3月末 申し込み1名
・チラシ作成
・地道な声かけ
4月第一週 申し込み5名
・チラシ配布準備
・新聞取材
・地道な声かけ
・JCメンバーへの協力の要請
・集客ライングループの作成(当日参加できない方もジョイン。22名)
4月第二週 申し込み10名
・お友達一緒に参加をアリ。に。
・地道な声かけ
・記事化
・FBいっせいにシェア(JCメンバー、市長、観光物産、花火実行委、ホテル山陽etc)
・この人いけるんじゃね?リスト作成
4月第三週 申し込み 15名
・JCルーム内で、プチ相談の実施
→現状の危機感を伝えるとともに、各メンバーに対して集客対象者がいないか考えていただく時間を設けた(基本的に声をかけ切った。という方はおらず、時間さえとっていただけたら、声かけ対象者を思い浮かべることができた)
・地道な声かけ
・大学生にもフォーカス
◆結果
申し込み16名 参加12名
・4名by 市外出身のJCメンバーAさん
・3名by 市外出身のJCメンバーのぼく
・3名by 地元出身のJCメンバーBさん
・2名by 市外出身のJCメンバーCさん
・4名bySNS
でした。
市外出身だろうが、地元出身だろうが、直接声かけに関しては、正直「熱量」でした。その熱量をチーム内で目標到達するほどには作れませんでした。
良かったこと
・16名が申し込み、12名が参加してくれた
・計画をつくり、軌道修正しながら行った
・軌道修正を随時集客ラインで共有をした。
・SNSで4名(25%)が流入した
改善すべきこと
・22人(72%)の申し込み目標、20人(60%)の参加目標未達。
・当初は地道な声かけ。のみしか戦略においてなかった(SNSなどは入ってない)
・理事会での納得感の低さについての懸念を語るJCメンバーが複数いた。
(その修正を最後までできなかった印象)
・直接の声かけで呼ぶことができた人が4名のみ&委員会に偏っていた。
(まきこむ、手本を示すなどがやりきれなかった)
当日行った企画
若手現役世代に焦点を絞って「仕事、暮らし、コミュニティ」の3つに触れられるように場を設計しました。
子育てNPOのきらりんきっず
復旧目前の博物館へ。記事にもなりました
空き家活用。最近までインターン学生がシェアハウスしていたお家
活躍するUターン者及川恭平さんのりんご畑へ
トークセッション(モデレーターとか言いつつ、僕の興味で聞きたいこと聞きまくってしまいました)
カモシーで河野社長の講演&交流会。初めてきた人がほとんど。
企画を終えて
特に、Uターンをして新規就農をしている及川恭平さんのトークセッションが印象に残っている方が多かったです。根性だけでない、彼の緻密なビジネスプランが、参加者の皆さんにとって、「この地域でも捉え方によってはこんなにも可能性があるのか」と思っていただけたのだと思います。
仕事を増やして欲しい。という声は予想通り多かったです。これは中長期的な視点で取り組むべきですが一方で
・高校卒業後(8割強が市外に転出)の市からの情報提供
・市からの定期的な情報発信
についての一定のニーズ
・Uターン者への住宅補助(震災で実家が流されてしまっていたり、帰ってきたいが一人で自由に暮らしたいなど、実家があるから補助はいらないという議論にはならないことがわかりました)
というところは今まで見過ごされてきた点ではないでしょうか。
また、運営者側であるJCメンバーにもアンケートをとりました。
地域側の思考がchangeしていくことも重要です。こうした取り組みを増やす、あるいは活躍するUターン者のことを我々も知っていくことが心の過疎を食い止めることになると思います。
以下もJCメンバーの回答です。
企画終了後の動きについて
重要になってくるのがその後の動きです。以下にまとめてみました。
議会での提言
★情報を取得するように動くべき
→LINEアカウントの市外の方向けへの活用、市のHPでのUターン者向けの情報提供について検討していただくことに
→仕事がないないとよく言われるが、実際に地域は人手不足。30代の方々は企業が求める即戦力となる年齢層である。という認識を議場でとることができました。
→移住補助金について、現状の活用がほとんどないことから、制度飲み直し情報発信の必要性も議論しました。
★人手不足の医療介護福祉領域へのUターン者就職の奨励をすべき
→総合戦略に記載があったのでチェック質問をしました。
→現段階では取り組みがなかったようですが、いずれはやる方向で検討したいとのこと(今後も注視が必要です)
★シェアハウスの可能性について
→Uターン者も家が重要であり、かつシェアハウスなどが嬉しいという声があったのでその可能性について聞いてみました。
→まず、ニーズがあるのかどうかをNPOなどとも協議していく必要がある。という答えでした。(今後の動き次第というところでしょうか)
陸前高田まちひとしごと総合戦略より。
市役所での動き
★今回のJCでの企画をシェアしました。(議場ではなくよりフランクに)
・がんばれば市外からの参加者にリーチできること、集客もできること
・前日に開催された花火大会は「ウケ」がよかったこと
・コロナ禍においても、抗原検査キットを運営者側が用意することで安全に実施したこと。
などをシェアしました。
「実は花火大会の際に、仙台の大学生を中心に有償ボランティをお願いしている。これは本来地元出身の大学生に声かけるのもありだよなあ」というアイデアも職員さんからいただきました。
高田暮舎(移住相談窓口)
・シェアハウスの検討
まだどうなるかわかりませんが、空き家担当のスタッフさんに情報提供をしており、今後も一緒に勉強していけたらと思っています。巻組さん事業スキームにも注目しています。
・コミュニティづくり
イベント終了後、JCメンバー、参加者の有志でLINEグループができました。「市外にいる地元出身者」と「現在地域にいる若者」たちのLINEグループというのは極めてユニークですし、そこに移住相談窓口である高田暮舎さんから定期的に情報発信をしていただいています。
大変、楽しく、企画、集客、運営をさせていただきました。
今後の動き。より充実させていきたいと思います(´▽`)