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界のカケラ 〜86〜

 ドアの前での話し声が大きかったせいかドアの先にはいつものメンバーが集まってきていた。たった十日間とはいえ会わずにいると気恥ずかしい。それはお互いそのようで妙な空気感が漂っていた。流石に部屋内で大きな声は出せないので皆控えめだったが、復帰する時期を相談することを報告したら喜んでくれた。十日間は臨時の先生も入れずに乗り切ってきたらしく、負担が減るのも嬉しいようだった。ただ幸いにこの期間は通常の半分くらいだったらしく余裕があったから助かったということを聞いた。私はこれが仕組まれていたような気がしていたが、皆には言わないようにした。

 久しぶりの皆との話が楽しく、いつの間にか四十分ほど過ぎていた。一通り出勤している全員とは話せたので、自分の机に向かった。

 いつも整頓していて机の上には必要な書類以外おかないようにしていたが、山のように書類が置かれていた。必要な書類や確認しなければいけないものは仕方ないが、なぜか隣の席の先生の書類まで置かれているのはやめてほしい。幸いにもブックスタンドで遮っていたのでわかりやすかったが一声くらいかけてくれればいいのにと思いながら、そっとブックスタンドをずらしてスペースを確保した。当の本人はまだ出勤していないので、ポストイットに少し厳しめに注意書きを貼っておくことにした。

 やっとこれでゆっくりパソコンが開ける。と思った矢先に急患の電話が部屋に鳴り響いた。久しぶりに聞く音に心臓がドキドキしたが、業務停止中の私には電話を取ることもできないので、ほかの先生に任せてパソコンの電源を入れた。しかしうんともすんとも言わず、画面が真っ暗のままだった。

 「あれ? 画面がつかない・・・」

 「四条さん、十日以上も使ってなければ電池無くなりますよ。充電してくださいね」

 「あ! なんだ、そんなことか。故障したかと一瞬焦っちゃったよ」

 「ははは! いつもの四条さんならそんなことにならないのに。休んでいて頭働いてないですね」

 「きっと頭打ったからだね。完全にボケてた。斎藤さん、教えてくれてありがとう」

 休みボケもあったとはいえ、パソコンの充電切れも予測できなくなっていたとは思わなかった。しかもそれを人に見られるという失態は顔から火が出るほど恥ずかしかった。このまま使い方まで忘れていたらどうしようかと思ったが、流石にそれはなかった。ただ五百通以上のメールの山を処理しなければいけないことが悩ましかった。とりあえず、今日は見ないでおこうと放置を決めた。明日以降、重要なメールだけでも仕分けて、早めに返信しなければいけないものは返信することにした。そして本来の目的である院長と秘書宛にメールを送る作業に入り、無事に送ることができた。

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akira
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