界のカケラ 〜123〜
今、目にしている光景は不思議だ。
二人の魂の姿が私たちと同じように同化している。
しかし目に見えているのとは裏腹に、私たちの生きている世界と二人の魂の世界にははっきりと境界線があるように見える。正確に境目があるというわけではないのに、空間がずれているように見える。その境目を見分けることができるのは、スピリチュアルなものを見分けられる人にしか出来ないはずだ。
だが、私にはこの光景が見えるのは最初で最後だと思っている。
今回は私の魂であるゆいちゃんが、生野さんと響き合っていたから見えていたに過ぎない。そしてその光景も、もうすぐ見えなくなるのは分かりきっていた。
「生野さん」
「何だね?」
「生野さんの魂は、あとどれくらいこっちの世界にいるのですか?」
「私の場合はもうこの世界には未練はないから、もうすぐ魂の世界に行くよ」
「そうですか……
それじゃあ、もうすぐ本当にお別れですね」
「ああ。結衣ともお別れになるな」
「うん。私はこっちでやらなければいけないことが、まだたくさんあるからね。それが全部終わったら戻るね」
「その頃には私は生まれ変わっているかもしれないな」
「そうかもしれないね。でもそうでないかもしれないね。
もし一緒にいる期間があれば、こっちで経験したことをたくさん話すね」
「楽しみにしているよ。
そろそろ行かなければいけないようだ。
四条さん、最後に会えて良かったよ。ありがとう」
「どういたしまして。私も生野さんと会えて良かったです。
ありがとうございます」
「じゃあね、真一さん」
「ああ、またな」
言葉短めに済ませてしまうあたりが、この二人の絆の深さを思いはかるには十分だった。
ゆっくりと消えていく生野さんの姿に合わせて、こちらの現実世界の境目がはっきりしていった。それはゆいちゃんとも別れていくことでもあった。
「ゆいちゃんともお別れだね」
「そうだね」
「次に会える日がいつか分からないけれど、私は前に約束した通り、自分で考えて道を開いていくからね」
「うん…… 私はその姿を見守っていくよ」
「よろしくね
それじゃあ、元気でね。
バイバイ、かおるちゃん」
「うん。
バイバイ、ゆいちゃん」
この日を境にゆいちゃんの声や姿は見えなくなった。