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界のカケラ 〜94〜

 結局、一言も話さずに部屋に着いてしまった。不機嫌そうではないけれど、納得していないのはあからさまにわかる。でもここで大事なのは納得していようがいまいが関係なく、話をすることにある。

「さあ、着きましたよ。ここが私の部屋です。どうぞ入ってください。
 今、お茶とお菓子の準備しますね」

「おじゃまします。
 個室は随分と広いんですね。私がいる部屋とは大違いです」

「そうですよね。私も個室に入ったことがなかったので最初は驚きました。私は個室じゃなくて良かったのですけれど、日向さんとのことが病院内で噂になってしまったので院長先生から配慮されたんです」

「噂になってしまったんですね。申し訳ありません」

「いえいえ、とんでもありません。
 さ、立ち話もなんですから、こちらのテーブルに来て、椅子におかけください」

「失礼します」 

 ここまで来て覚悟を決めたのか、素直に従ってくれたことに驚いた。やはり私を突き飛ばして怪我をさせた彼女は、本当の彼女ではないことを確信した。

 そういえば今日は一度も頭痛がしない。いつも朝から昼にかけては一度は痛くなるのに、今日はなぜだか一回もない。頭痛がしないのに越したことはないが、それはそれで逆に不安になる。きっと目の前の彼女に集中しているから頭痛が入り込まないようになっているのだと思うことにした。

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akira
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