ロンドＸＹ
【ロンドXY】
父は日課である
釣りの仕掛けを作っている時
舌を出していた
俺の爪は、
母と同じ、扇形
形がカッコいいとは言えないけれど
作業の仕上がりがいいと
と、よく人から褒められる
俺の声は、
父親ゆずりでどこまでも届く
うるさいと煙たがられるけど
どんなに騒がしい居酒屋でも
ビールがすんなりオーダーできる
生一丁
いただきましたぁ！
父は習字も習っていないのに
字が上手い
母はもともと字が上手かったので
習字の先生になった
俺の字は、
両親の遺伝子が
お互いゆずらなかったからだろうか
日によって、ムラがある
俺の暮らしの細部まで
親のエッセンスの掛け合わせが
反映していると
気付いた日から
親もまた
そのまた親から引き継いだものなんだと
気付いてしまう
俺の経験は
俺だけのものだと思っていたのに
実は、これらのエッセンスを引き継いだから
俺だけの経験ができていた
両親が、支えてくれている
そこに気づくと
自然と感謝が言えた
ありがとう
この前の居酒屋は手強かった
いつもの調子でビールを頼むが
なかなか
店員の耳には届かない
そのクセ声はデカいので
周りは俺の声に注目してる
恥ずかしい
次こそは、と狙いに集中した時
俺は、
舌を出していた
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