素っ裸疾走男に、思いを馳せる
S子：
あッ！また出た
また出たよ、ハダカ男
山ちゃん：
ひょ、氷点下だぞ（笑）最高か！
S子はスマホを見ながら
満面の笑みで叫んだ
札幌市が発信してるのか
道警が発信しているのか分からないが
いずれかの公式サイトに登録すれば
ハレンチ変態野郎の情報が
LINEでくる仕組みになっている
S子はそこで、ある痴漢男の存在を知った
昨日、東区の路上で
黒のダウンジャンパーを着た小太りの男が
下半身を露出して歩いていたという
目撃した場合は、安全な場所に避難し
110番してください
（当たり前だ！）
S子：
やめられないんだね
山ちゃん：
癖（へき）だからね
S子：
やめられないよねぇ
2人はとても嬉しかった
この手の話題が大好物なのである
というのも
ここ東区は
公然わいせつのメッカ
ある特定の場所に
何度も何度も出没するおじさんがいるのだ
(きっと近所に住んでるのね)
今年の冬の終わり
東区のあの場所で
男が素っ裸で3丁疾走している
という衝撃的な事件が目撃されたのだった
こんな感じだろうか
※拾い画です
あの時、S子と俺はマックスエキサイトで
その疾走男がなぜ
素っ裸疾走男になってしまったのか
いくつもの背景や事情を
想定して語り合った
美人局じゃない？
モテない男が、ちょっと色目使われて
ホイホイ彼女の家まで行っちゃうケース
服着る間もなく逃げてる最中だったとか
コートを脱いでチラ見せなんて
もう刺激が低すぎるんじゃない？
素っ裸で疾走して複数人から注目されないと
やった気がしないのよ
奥さんと娘、かわいそーだな
（同い年の奥さんと高校の娘がいる体）
お、お父さん！
なッ
なッッッ
何やってくれたのよぉぉぉおおおおおおお
おおおおおぉぉぉ、、、（号泣）、、、おおお
そんなシメジの端っこみたいなの
誰も見たかないわよ！！！
油絵の先生に何て言えばいいの？
町内会長さんと明日飲み会だったじゃない！
飲み会、いくつもり？やめてよ恥ずかしい
なんでまた、今日なのよぉぉぉぉぉ
2人からあふれ出したイマジネーションの数々が
光の粒々となりこの部屋を飛び出し
春の喜びを讃えているようだった
その後も、東区のあの場所では
素っ裸疾走男が目撃され
S子：
あああああああああ！また出た！！！
山ちゃん：
ウェイッ！
S子：
同一人物ね
山ちゃん：
この世に2人いてたまるものか
真冬はさすがに厳しかったのか
それともすでに凍死してしまったのか
春の芽吹きとともに
彼の生存確認ができて
俺たちは、たちまち嬉しくなる
そして、彼の生き様をまるっと受け入れて
認める
例え世間が彼を認めなかったとしても
S子と山ちゃんは、しっかりと受け止めて
認める
罪は罪、公然わいせつ
人は人、当然にくまず
そして
春が来て
夏が来て
秋が来て
2人が素っ裸疾走男を忘れた頃
12月3日、吉日
今日の0時頃、東区北34条東3丁目の路上で
黒いダウンジャンパーを着た男が
下半身を露出していたのを目撃
S子：
あ"あ"あ"あ"あ"ッ
あいつ、生きてた！！！
素っ裸疾走男、アイツに違いない
東区北◯条東〇〇丁目付近たら
アイツの場所だよね？
山ちゃん：
ウェイウェイウェイウェイ！
ちょっと北に移動したんだな
S子：
やめられないんだねぇ
山ちゃん：
癖（へき）だからねぇ
S子：
氷点下でもやっちゃうんだもんねぇ
山ちゃん：
アイツ、歩きながら
泣いてるかもね
山ちゃんは胸を張り
勢いよくジャンパーを開くそぶりをした後
絶妙な表情のまま左人差し指で
目尻からツーっと滴る涙をなぞった
S子：
こんなに寒いのに、衝動が抑えられない
やってはいけないことだと
重々に承知している
でも
でもでも！抑えられない
、、、そりゃ泣くわよ
どんなに努力したって
素っ裸を見せちゃうんだから
彼は自分の運命を恨んでるハズだわ
S子も胸を張ったまま、両人差し指で
左右の目尻からツーっと滴る涙をなぞった
S子：
やっちゃだめなの！
山ちゃん：
ダメよ！ダメダメ
S子：
でも、やめられない、止まらない
山ちゃん：
カッパえびせん、、、
すると新たなLINEの知らせ
S子：
あぁ！白石区でも下半身男が出てる
こっちは少女の尻を触ったって
山ちゃん：
そいつは、同一犯じゃない！
アイツは、泣きながら素っ裸で疾走してんだ
苦しんで苦しんで自分と戦ってる
常に負け通しだけど
S子：
そうね、アイツは少女になんか手を出さない
だって、苦しんで苦しんで
抑えきれない涙を流しながら
ジャンパーを広げてるんだもん
素っ裸疾走男：
誰か、、、俺を、止めてくれ、、、
どうなってんだ、東区！
同一犯ぽい（笑）
もうUMA、妖怪じゃん
じゃーねー