子どもレンタル
今、札幌に
木下大サーカスの一団が
やってきている
現代の日本に
こんなキャラバンのような
人々がいることに驚いた
何よりも俺はサーカスを見たことがない
ユーミンが20年前
シャングリラというツアーの時
ロシアのサーカス団を貸し切って
見せてくれたやつなら、見たことある
あれか
それとも
アニメみたいに
ムチ持った煌びやかな仮面王子が
ライオンに火の輪くぐりをさせるのだろうか
とりあえず、人生に1度くらい
サーカスとやらを見てもいいのではないか
そんな気持ちにさせられたのだ
ただ、うちの息子は21歳
とても一緒に行ってくれるとは思えないので
職場の看護師B子に
子どもを借りることにした
子どもレンタルだ
5年ほど前だが
山ちゃんは
おっさんレンタルの正規会員だった
色んな人から
俺をレンタルしてもらっていたが
まさか俺が
子どもをレンタルする日が来るなんて
夢にも思わなかった
レンタルするのは
小学6年生の悠斗だ
悠斗はなぜか俺になついているので
話を持ちかけた時
大喜びしてくれた
そうだ
せっかくなので
狸小路に新しくできた都市型水族館も
蒼くてキレイらしいので
行ってみようと提案したら
いいねいいね、と言ってくれた
9月3日だな?
よーし、おっさん楽しみだ
と、いとも簡単に
子どもレンタルの予約が取れてしまった
何だか
子どもに優しくしてる大人、みたいな
ユニバーサルデザイン的
できたおっさんに見えているな俺
がしかし
実際のところは
俺が行きたいけれど
1人で行くのは恥ずかしいので
子どもがいれば体裁が保たれるだろう
しかも
子どもを愛でてる素晴らしい大人
という、特典まで付いてくる
こ、これは夢にまで見た
イケオジじゃないか
という、実際のところは
相当、傲慢な真実が隠されている
悠斗にレンタル代が発生して
おかしくない案件なのだ
ありがとう、悠斗
(笑)
久しぶりに子どもと出かけられるので
山ちゃんは、かなり盛り上がってる
同僚である母親はブスで口うるさいし
邪魔くさいので
同行をしっかり断った
昼飯は街中の美味い中華にしよう
まだ地下鉄に乗れないと言ってたから
切符を買ったり道順を考えたりは
悠斗の仕事にしよう
などなど
サーカスに出かけるだけなのに
さも自分が修学旅行に行くような
気持ちになってた
そういえば
悠斗は修学旅行が
あまり楽しみじゃないらしい
安心できる大人の方が
本当の自分をさらけ出すことが
できるんだと思う
こんな幼いのに
彼らにはもう社会が確立していて
相当もまれているなんて
人間とはなんと酷いものなのだ
と、切なくもなった
そんな悠斗の夢は
クイズ王
なんだそうだ