どうせ、美人なんでしょ

ねぇ

やっぱり

美人ってことなんでしょ？

ひと通り仕事を終えて
同僚S子と俺がまったりしてる16時
タブレットで筋肉ムキムキのイケメンと
きゃしゃで可憐な美人がぶちゅぶちゅする
韓流ドラマを見ながら
S子がボソッとつぶやいた

山ちゃん：
そうだねぇ、、、
腐りかけのおつとめ品と活きのいい野菜
どっちを買うかって話になるよねぇ

俺はスマホで
note仲間の記事を読みながら
ぼそっと答えた

だいたい俺らの日常戯れ話は
こんな風に始まる

👇S子はこんな人👇

どうせ、美人なんでしょ

最近、S子が荒れている

息子の剣道クラブの父母会に
偽善者ポリスみたいな母親がいて
言ってることが二転三転し
父母の仲が、めちゃくちゃになってるらしく

そんな親同士のすったもんだに
S子も巻き込まれてしまい
日々、心が疲労困ぱいだったのだ

リロリロリロ♫

リロリロリロ♫

リロ♫、ガチャッ

S子：
はぁーい、リハビリ室です

作業療法科の後輩、N美ちゃん：
S子さん、ちょっと相談があるんですけど、、、
えぇ、◯階の患者さんのことなんです

作業療法科から内線でコンサルがはいったようだ

我々くらいのベッテランになると
後輩たち（もれなく全員後輩だが）から
治療アプローチの相談を受けることがある

ちなみに、うちの作業療法科は
美人ぞろいで有名で、中には
地下アイドルるるちゃん
という異名を持つ強者までいるくらいだ
(本名とまったく関係ないあだ名だ)

今回、相談してきたN美もまた
2児のママさんで
透けて向こう側が見えそうな
透明感と潤いのある肌
クリっとした目が特徴の美人さんだ

ところ変わって、◯階病棟

S子：
尖足傾向のある患者さんは
腓骨神経麻痺にはしたくないから
ポジショニングが重要になるんだよ

大抵こういう場合は
我々が実際に病室に赴いて
患者さんへのアシストの方法を
デモンストレーションして説明する

今回も同じように
ベッテランS子とそれを教授されるN美だった

N美：
はい、、、はい、、、はい、、、
なるほど、分かりました
みんなに周知しておきます
S子さん、いつも助かります
わざわざ、ありがとうございました

N美は、美人な上に謙虚
心まで清らかなのだ
どうしたら、こんな美人になるのだろうか

というのも以前

おしゃべりが過ぎるおばさん患者が
脳梗塞とおぼしき症状を呈したことがあった

うちには脳神経外科がないので
なぜ、彼女が話せなくなったのか
誰も分からず
病棟スタッフとN美は、首をかしげていた

そこにのこのこと
ベッテランズの我々が通りすがり
N美が腰を低くして声をかけてきた

おしゃべりおばさん患者のもとへ

山ちゃん：
うっわ、こりゃ全失語だな
※話すこともできないし
　相手が何を話しているか理解もできない

S子：
当たったな、、、どうすんの？
※脳梗塞を発症した、の意

我々は思わず口にしてしまう

ちなみに誤解のないようにしたいのは
我々は診断屋ではないので
この時点で脳梗塞かどうかなど
判断していい立場ではない

が、経験上、察する能力は持ちあわせている
というだけのものだ

話を戻そう

我々の話を聞いていたN美は
学生時代に習った知識を呼び覚まし
事の重大さに気づいたのか

N美：
あああぁぁぁ、〇〇さん
なんて可哀そう

お話が大好きだったのに

と、患者の立場になって
おしゃべりおばさんの肩をさすったのだった

N美、どこまでも優しい

そして後に
俺とS子、ふたりきりになった時

山ちゃん：
なぁ、聞いた？
N美ちゃんのセリフ

S子：
聞いた
魂のレベルが違いすぎて愕然とした
わたしなんか、〇〇さん
静かになって丁度いいくらいだわ
って思っちゃった

山ちゃん：
俺も、病棟は静かになって好都合だろうな
くらいに思った
なのに一発目、お話好きだったのに
って、そんなこと考えられる？

俺たち

現場に慣れ過ぎたベッテランズが
大切な何かを、どこかで丸ごと捨ててきたことを
強制的に後悔させられる瞬間だった

美人は、レベルが違う

そして話を現在(16:00過ぎ)に戻そう

S子：
わたしね、N美ちゃんに
尖足予防には歩行訓練が1番だって
歩かせ方まで丁寧に教えたんだけど
教えてるそばから思っちゃったのよ

どうせあなた、美人なんでしょ

って

勝手に心からあふれてきたの
そんな嫉み、N美ちゃんには1ミリも見せてないわよ
でも、1度あふれちゃうと
N美ちゃんを見るたび思っちゃうのよ

そんな丁寧にお礼までしても

どうせあなた、美人なんでしょ

って

山ちゃん：
ブハッ！（爆笑）ぐぶぶぶぶ

S子の醜い思いはまだまだ続く

1から10まで親切に教えたけれど
出ちゃうの

わたしみたいに患者を

歩かせられなくたって

どうせあなた、美人なんでしょ

って

だってあんなにきゃしゃじゃ
歩かせられないでしょ
そう思わざるを得ないじゃない

N美ちゃんの旦那も作業療法士でね
大学時代から付き合っていて
そのまま結婚して、子どももぽんぽん生んで
それって、わたしが理想とした
成功者の道ってやつじゃない

わたしなんて若い頃
御堂筋の階段から酔っぱらって転げ落ちたのに
みんな階段の上から笑い転げていて
助けてすらもらえなかったのよ

美人って、、、

そういうことなのよね

美人なのに心まで清らかで
世界のどこかの偉い人が人類みな平等って
何見てそう思ったのか呆れるばかり

じゃあ
N美ちゃんと平等なはずのわたしが

なぜ八甲田山で置き去りにされるの？

山ちゃん：
ひぃぃぃぃぃ
(笑い転げる)

おかしいじゃない
だから、勝手にあふれ出すの
N美ちゃん

どうせあなた、美人なんでしょ

って

山ちゃん：
(涙が止まらない)
色々あって、、、疲れてるんだ、、、よ

俺はティッシュで涙を拭きながら
笑い続けた

がしかし、世界は確かにそうかも知れない

どうせあなた、美人なんでしょ

👇ちなみに、伝説の八甲田山置き去り事件👇

👇参考資料👇

じゃーねー