「そうだ/ようだ/らしい」の違いを考える【文章術033】
僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うためのポイントを解説し、練習課題を出していく。
今回は、普段感覚的に使いがちな「そうだ/ようだ/らしい」の使い分けについて、言語化したい。
推量表現とは
分かりきっているところかもしれないが、まず前提をおさらい。推量表現とは、書き手自信が推し量る、つまり想像する内容を書くための表現だ。根拠の有無によらず、「私は〜だと考えた」ということを明らかにするために使う。
ここで語り尽くせぬほどバリエーションは多い。軽く例を挙げるだけでも……
~だろう/でしょう/であろう
~ようだ/みたい
~かもしれない
~と考えられる
~と思われる/予測される
〜はずだ
〜に違いない
などがある。
伝聞表現とは
続いて、伝聞表現とは、ほかの人から伝え聞いた様子を、書くための表現だ。こちらも具体例はさまざまである。
~と言われている
~だそうだ
~と聞いている
〜ということだ
〜とのこと
〜という話だ
〜らしい
推量表現との大きな違いは、情報源をはっきりさせないと信頼性に欠けるという点だ。もし堅い場面で使用するならば、「〜によると」など、意識的に情報源を明記する癖をつけておこう。
「そうだ→ようだ→らしい」の流れを覚えておく
そして、本題へ。ここでは原稿執筆によく使う表現という視点で、以下の「そうだ/ようだ/らしい」の3つについて、使い分けの軸を作りたい。
Aの「美味しそうだ」といった表現は、書き手との距離感が近く、書き手が対象に強く関心を抱いている場合に使われる。たとえば、「風が強そうだ」とすると、書き手が外出しようとする前提で、窓から外を覗いているイメージが脳裏に浮かぶ。
Bの「繁盛しているようだ」になると、自身で確認して推量しているとはいえ、書き手の距離感が少し離れていく印象となる。物理的な距離は近くにはいるものの、関心が薄いようなイメージだ。たとえば、「風が強いようだ」とすると、書き手は窓の外を見つつも、これといって外出したいわけではない雰囲気が伝わる。
さらに、Cの「オープンしたばかりらしい」では、書き手の距離感がグッと離れる。人から聞いた話によると、という伝聞表現のため、書き手本人が情報源を確認していなくても使えてしまう。たとえば、「風が強いらしい」となると、書き手本人は窓の外を確認したわけではないことがわかる。
原稿で「そうだ」「ようだ」が少ない理由
さて、堅い文を執筆するライティング仕事では、「そうだ」「ようだ」を使う頻度はあまり高くないと感じる。これは、客観的な文章で、書き手から距離が近い表現が好まれない場面が多いからだろう。書き手から近い距離感の表現は、確証を得るところまで取材し、断定表現に変えた方が良いのだ。
「風が強そうだ」→(確認)→「風が強い」
「風が強いようだ」→(確認)→「風が強い」
もし「そうだ/ようだ」を使うならば、「あれ、取材で確認しなかったの?」と編集者から突っ込まれかねないわけである。
こうした表現を使うならば、かろうじて識者として商品をレビューするときような、主観モリモリの記事を書く場合が思いつく。その場合も、ストーリーの一部として記述し、後から取材した事実を加えるのが良いだろう。
「どうやら新メニューでは、香辛料が使われているようだった。広報部に確認したところ、〜が使われているとのことだった」
一方で、「らしい」は確証を得ない事柄をやむを得ず伝えなくてならない場面にて、活躍の場が残っている。「このような内容を伝え聞いた」という“事実”を伝えるわけだ。ただし、先述の通り、「〜によれば」のような情報源の記載は必須だろう。
「風が強かったらしい」→(確認できない)→「事故の現場にいた人よると、その日は風が強かったらしい」
練習課題
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