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前鬼 小仲坊(おなかぼう) 鬼が営む鬼の里の宿坊

 静岡生まれの私が、関西で生活をして感じた事の一つは修験道が身近な事です。子供のころに、昔ばなしや教科書などで開祖の役行者に親しみ、小角さんと親しみを込めて呼んでいます。役行者は奈良時代の人物ですが、従者の前鬼・後鬼夫婦の61代目という方が、今でも鬼を称して従者の仕事を  守っておられます。役行者が拓いた大峯奥駈道を修行する修験者のための  鬼が営む不思議な宿坊が、前鬼(地名にもなっています)の小仲坊です。
 私は、大峯奥駈道の縦走ため2回訪れていますが、1回目の2019年 に宿坊に泊めさせて頂いて、鬼のご夫婦とお話しさせてもらいました。

1 小仲坊へのアプローチ

 小仲坊へは、奈良県を南北に貫いて走る一日一往復のバスが頼りです。最寄りの前鬼口停留場で降ります。

< 前鬼口バス停留所      28mm相当  F4.2  ISO125    2023年 >       カドヤさんはずっと休業しているようです。

交通標識には「前鬼登山口 10km」とありますが、ここから林道歩き 3時間となります。マイカーでも走れる道ですが、縦走登山では歩かなければなりません。

 熊野川の支流の前鬼川沿いの道を遡って歩きます。前鬼川の上流は沢登りの名コースと言われ、前鬼ブルーと呼ばれる美しい水で知られています。
 
 林道や遊歩道を歩いていても、目を奪われます。

< 不動七滝への遊歩道      60mm相当  F3.5  ISO800   2019年 >
< 不動七滝の約500m上流付近  75mm相当  F5.6  1/800  ISO250   2023年 >

2 前鬼に到着

 林道の終点から、耕作地だったと思われる石垣の間を、いくつも縫いながらて登って行きます。前鬼・後鬼の子供は5人いて、五軒の宿坊があったとお聞きしました。

< 小仲坊手前       35mm相当  F4.5  ISO800   2019年 >

 登り詰めると、小仲坊の宿泊所です。宿泊所は常時開放している素泊まり用で、他に予約が必要な宿坊、テント場、倉庫、行者堂などが並んでいて ずいぶん広いです。

< 行者堂の前        35mm相当  F4.5  ISO800   2019年 >

こんな山奥にもかかわらず、どの施設も整理・整頓され美しく清掃されています。信仰の深さを感じます。

 前鬼に着いた頃から、薪割りの音が、山中に心地よく響いていました。 

< 宿泊所の下         80mm相当  F7  ISO800   2019年 >

修行をしたいと申し出てきた方を預かっているとお聞きしました。鬼の  ご夫婦は、大阪に住まわれていて、予約のある休日を中心にこちらに来られているとの事なので、ほとんど一人で宿坊全体のお世話をしている事になります。

3 行者堂

施設の中央に、開祖の役行者を祀る行者堂があります。

< 行者堂           35mm相当  F4.6  ISO800   2019年 >

沓脱石の両側に丁寧に小さなお地蔵様が並べられています。

< 行者堂          35mm相当  F4.6  ISO800   2019年 >

どのお地蔵さまも、いいお顔をされておられます。

< 行者堂          35mm相当  F4.6  ISO800   2019年 >
< 行者堂        35mm相当  F5.6  ISO800   2019年 >
< 行者堂          35mm相当  F4.6  ISO800   2019年 >

4 宿坊

 のんびりしているうちに、日が暮れてきました。
修行の方が吹く、ほら貝の音も聞こえてきました。

< 宿坊           60mm相当  F12  ISO800   2019年 >

宿坊の煙突から炊煙が上がっていました。

< 宿坊           40mm相当  F7.3  ISO800   2019年 >

奥様の質素ですが、手をかけた夕食を頂きながら61代目を囲み、同宿した自然好きで山小屋巡りを楽しんでいるご夫婦を交えて、楽しくお話をして夜を過ごしました。

5 4年後の春

 コロナ禍を挟んで、再び前鬼を訪れました。この時は、一気に稜線まで 上がる計画でしたので宿泊はしませんでした。

 前鬼に着くと、たくさんのミツマタの木が花を咲かせていました。

< ミツマタ        28mm相当 トリミング  F4  ISO125   2023年 >

紙漉きを生業としていたであろう山の生活が思い浮かびます。

 小仲坊に着くと、しだれ桜が満開でした。

< ヤエベニシダレ(推定)      28mm相当   F4  ISO125   2023>

しだれ桜の下を通って宿坊まで水を頂きに行くと、ご夫婦がおられ、お元気そうでした。
ご主人は、白い法衣を着た修験者の方とお話ししていました。

 奥様の気を付けての声に送られて、宿坊を後にしました。


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