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「響け!ユーフォニアム」で刺さったセリフ
「響け!ユーフォニアム」とは
「響け!ユーフォニアム」は吹奏楽部の高校生たちが全国大会金賞を目指す奮闘を描く作品です。武田綾乃さん原作で、2015年から京都アニメーション制作でアニメ化されています。
主人公は、ユーフォニアムという低音楽器を担当する黄前久美子(以下、久美子)。久美子が入学した当初は強豪校とは程遠かった北宇治高校の吹奏楽部が舞台です。
知らない人にこの作品を説明したときに「ゆるい部活もの?」と反応されたことがありました。
実際は全然ゆるくなくて、退部者、先輩後輩関係、ソロパート決め、進路などさまざまな部内の揉め事や部員の悩みが描かれます。個人的には少し余裕があるときにしか見れないと思っていたこともあるくらいです。
今年(2024年)の春、TVシリーズ第3期が放送されて、アニメとしては一区切りつきました。この作品には、私にとっていろいろな意味で心にグッと来るセリフがたくさんあります。この機会にいくつか紹介します。
なお、私はアニメから入ったためアニメ版を前提に紹介します。セリフの表記もアニメのBlu-rayの字幕表記に従います。(原作も大体読んでいますが、いわゆる立華編だけあえて未読です)
▼このあとネタバレが含まれます。解釈違いがあれば申し訳ないです。あと文字が多いので宇治の写真なども貼っておきます。
"それ言ったらどっちにも手を挙げなかった誰かさんが一番ズルいんじゃない?"
TVシリーズ第1期第2回「よろしくユーフォニアム」より。
部の目標は生徒たち自身が決めるというのが顧問の滝先生の方針。そこで、今年は全国大会出場を目標にするか、全国まで目指さなくていいかを、部員全員の多数決で決めることになります。
この多数決では、雰囲気に飲まれてか、全国大会出場に挙手する部員が多く、全国大会出場が目標になりました。唯一、3年生の葵先輩(久美子の幼馴染で1つ上の学年)だけが、全国まで目指さなくていい方に挙手しました。
久美子はというと、どちらにも手を上げませんでした。同じ中学の吹奏楽部出身で、久美子とは違って本気で部活に取り組んでいた麗奈に、どう思われるか、気になって怖かったためです。
この日の下校時、久美子と葵先輩が二人で振り返っているとき、久美子が、今日みたいに聞かれたら「全国大会出場」に手を挙げる(挙げざるを得ないニュアンス)ので「大人はズルいよ」とポロッと言ったの対して、葵先輩が「それ言ったらどっちにも手を挙げなかった誰かさんが一番ズルいんじゃない?」と言い、久美子は図星の表情をするシーンです。
意思の表示には、ある種の責任が伴うことがあります。その後、自分がどういう見方をされるか、どういう振る舞いが求められるか、それを考えると意思表示が億劫になってしまうことがあります。私もそういう経験がありますので、それはそうだなと思ってしまいました・・。そういう聞き方をした大人(滝先生)のせいではないですね。
なお、作中にも登場する京阪宇治駅のロータリーに「大人はズルいと思いませんか?」というパン屋さんがありますが、たぶん偶然だと思います。
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"言えない空気作ったのは誰よ"
TVシリーズ第2期第8回「かぜひきラプソディー」より。
久美子には吹奏楽部でトロンボーンをやっていた麻美子という姉がいます。麻美子が大学卒業まであと1年というタイミングで、大学を辞めて美容師の学校に通いたい、と親に言います。母親からすると「急に」言ってきた、という感覚ですが、麻美子はこれまで親の言う通りのことをしてきて、自分が本当にやりたいことを我慢してきました。受験を理由に部活、トロンボーンを辞めたことも後悔しています。
そのことを吐露すると、父親が「そこまで思っていたなら 大学入る前にいうべきだったんじゃないか?」と問いますが、ここで麻美子が「言えない空気作ったのは誰よ」と反論します。父親も思い当たるフシはあったようですが、最終的に大学を受験することを決めたのは自分自身だろうと主張します。
「だったら言ってくれればよかったのに」と思うことは日常でもありますが、どうして言わなかった、言えなかったのかは、無視してはいけないと思いました。
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"みんなって誰?"
TVシリーズ第2期第10回「ほうかごオブリガード」より。
久美子の2つ上に、田中あすかという3年生の先輩(久美子1年時点)がいます。副部長であり、ユーフォニアム担当なので、久美子との接点も多い先輩です。演奏技術は相当なものですが、ひょうひょうとしていたり、ドキッとすることを言ったり、冷めていたり、なかなか心情をつかみにくい先輩です。
あすか先輩には親からの猛反対による退部騒ぎが起き、全国大会を前に練習に来れない日々が続きます。そこで久美子はある日、あすか先輩を呼び出してコンクールに出てほしいと直談判をします。
しかし簡単にはいきません。あすか先輩自身は、不安定な状況の自分を客観的に考えて、このままフェードアウトするのが良いと考えています。久美子は「みんな言ってます あすか先輩がいいって」と説得しますが、あすか先輩は「みんなって誰?」と冷たいトーンで問い、久美子は言葉をつまらせます。続いてあすか先輩は「黄前ちゃん そう言えるほどその人たちのこと知ってるのかなぁって思って」と追撃します。
追い詰められた久美子は過去のいろいろな経験を思い出して吹っ切れます。「あすか先輩と本番に出たい 私が出たいんです!」と主語を「私」に切り替え、自分のわがままをぶつけます。
すべては紹介できませんが、この一連のやりとりはとても考えさせられました。あすか先輩が強く出ていたときはあすか先輩が画面の右に位置し、久美子が吹っ切れたときは久美子が右に位置するという構図も興味深いです(そういうセオリーがあった気がします)。
久美子優勢のままこのやりとりは終わります。そして、あすか先輩は全国模試30位以内に入り、これを復帰の材料に親を説得して部に復帰します。
分かっているようで分かっていない、都合よく作り上げた客観視による「みんな」では、物事はうまく動きませんね・・。
ちなみに、TVシリーズ第3期第10回「つたえるアルペジオ」で、卒業したあすか先輩と久美子が話すシーンがあります。あすか先輩は「あの時言われたこと、今でもひとっつも正しいなんてと思ってないよ」と言っています。やはりあすか先輩は手強いですね。ただ、正しさ以外のところで動かされた、とも言えるのかなと思います。
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"昔じゃない 私にとってはずっと今"
久美子たちの1つ上の代に、フルート担当の傘木希美、オーボエ担当の鎧塚みぞれという先輩がいます。この二人の複雑な関係を描いた映画「リズと青い鳥」に出てくるセリフです。
希美とみぞれは同じ中学(南中)の吹奏楽部の出身。希美がみぞれを吹奏楽部に誘ったのがきっかけです。みぞれは誘ってくれた希美をずっと慕い続けけます。
二人が北宇治高校に入学し、引き続き吹奏楽部に入学した当時、部内はやる気がない雰囲気が充満していました。やる気があり活動的な性格の希美は、いろいろ言動を起こしますが、だんだんとその雰囲気に耐えられなくなってきます。一方、おとなしい性格ののぞみは周りに流されずに粛々と練習を重ねていきます。
希美はそんなのぞみに声をかけずに、ついに退部してしまいました(のちに復帰します)。希美としては、一生懸命頑張っているのぞみを巻き込んではいけてないという気持ちだったため、声をかけませんでした。一方みぞれは、希美と一緒にいたいという理由で楽器を続けていたのに、知らないうちに希美が辞めていたことにひどいショックを受けました(このあたりの話自体はTVシリーズ第2期第4回「めざめるオーボエ」で描かれています)。二人が1年生のときにこんなすれ違いがありました。
二人が3年生になった「リズと青い鳥」の中で、あるきっかけで二人が希美の退部のことを振り返って話しているいるとき、希美は「昔のことでしょ」と切り離して考えているのに対して、のぞみが「昔じゃない 私にとってはずっと今」と引きずっていることが分かるシーンです。ラストに近いシーンで非常に繊細なやり取りが続きます。
ネガティブな意味で、言った側は覚えていないが言われた方は覚えている、に近い現象でしょうか。「ずっと今」という表現がグサっと刺さります。人はそれぞれに「今」を持っているということを、つい忘れてしまいます。
話が派生してしまいますが、自分より若い世代を見て「そういうお年頃」という感覚になることがあります。温かく見守る分にはいいですが、変に客観視になりすぎるのも良くないかなと思います。その人にとっては今であるということを忘れないようにしたいと思います。年齢は関係ないかもしれませんしね。
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"迷いを怠けの言い訳にするなよ"
TVシリーズ第3期第5回「ふたりでトワイライト」より。
3年生になった久美子と、担任の美知恵先生(吹奏楽部の副顧問でもある)との二者面談で進路の話をするシーンです。この時点では久美子は将来どうしたいか迷って決めかねています。
そんな久美子に美知恵先生は「なれるものの選択肢を早くから捨てる必要はない」「だがな 迷いを怠けの言い訳にするなよ やらない理由を探す癖がつくと いつか身動きが取れなくなるぞ」と言います。
これまたグサっときます。本当に。高校生に限らず、人間、いつだって、この先どうするか考える機会はたくさん訪れます。純粋に迷っているのか、先送りにするために怠けているのか、自分を客観視することは難しですが、思い出したい言葉です。
美智恵先生はこのあと、次のアクションを提案し、考えすぎも良くないぞと後押しします。いい先生です。
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"まあ「なんとなく」っていうのが一番あらがえない抗えないからねぇ"
TVシリース3期第11回「みらいへオーケストラ」より。
久美子は、音大に進学したみぞれ先輩が出演するコンサートに行くことになります。美容師への道を選んだ姉、麻美子にヘアメイクなどをしてもらうシーンのセリフです。
進路の話になり、麻美子が「音大は?」と聞くと、久美子は何となくという理由で音大はないかなと答えます。そこで麻美子が「まあ「なんとなく」っていうのが一番あらがえないからねぇ」と言います。
先程の「迷いを怠けの言い訳にするなよ」にも通じますね。心当たりがありすぎて痛いです。
麻美子はこのあと久美子の部での悩みを、特にアドバイスせずにただただ聞き、受け止めます。いいお姉さんです。2期では久美子とも父親ともバチバチやってた麻美子ですが、感慨深いです。
なお、TVシリーズ第3期は「黄前久美子物語」と鶴岡音響監督が表現されていたそうです。部内に起こる問題に対して、部長として(久美子は3年生で部長になります)どうすべきか、奏者としてどうすべきか、そして自分自身の将来をどうすべきか、久美子自身をとりまく様々なことへのどう対応して成長していくかが描かれた素敵な作品だと思います。
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おわりに
「響け!ユーフォニアム」の心に残っているセリフをご紹介しました。
大好きな作品なので、これからも何度も見返すと思います。
もしまだ見てない方で興味が湧いたらアニメや、原作をチェックしてみてください。
観る(読む)順番はこちら。
ユーフォの全巻セット、沢山の方に注文していただいているようで大変ありがたいです🙏✨
— 武田綾乃 (@ayanotakeda) May 10, 2024
アニメとの違いなども含めて楽しんでいただけると嬉しいです☺️
帯にプレゼントキャンペーンの応募券もついてますので、チェックしてみてください!
こちら、アサダ先生が順番をまとめてくださった画像です💁♀️ pic.twitter.com/7lkoKYZ4BS