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No.9【サスペンス小説】『追いかける人々』第九話:埋もれた真実
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第九話:埋もれた真実
草原の中央、静かな風が木々を揺らしている。4人は、美沙の兄・翔一が遺した手紙に記された「風景に隠された答え」を求めて、その場に立ち尽くしていた。
「ここに何があるっていうの……?」
美沙が、震える声で呟く。手紙には「草原の中央に埋められた秘密」という言葉が残されていた。その場所に辿り着いたものの、何をどうすればいいのか、彼らにはまだ分からなかった。
神谷が静かに言う。
「もし手紙の通りなら……この場所を掘るしかないんじゃないか。」
神谷と健太がスコップ代わりに手で土を掘り始めた。真希と美沙は、その様子を緊張した表情で見守る。しばらくすると、硬いものに指が触れる感覚が神谷を捉えた。
「……何かある。」
土を払いのけると、木の箱が埋まっているのが見えた。錆びついた金属製の取っ手を引き上げ、箱を地上に出すと、全員が息を飲んだ。
「これが……答え?」
真希が囁くように言う。神谷が箱を慎重に開けると、中にはいくつかの古びた物が収められていた。
箱の中には、以下の物が入っていた:
1. 写真:兄・翔一が美沙と一緒に笑っている幼い頃の写真。
2. 日記:翔一が残したノート。そこには彼の心情や思いがびっしりと綴られていた。
3. 鍵:手のひらに収まる小さな銀色の鍵。
美沙は写真を手に取り、涙を浮かべながらそれを見つめた。久しぶりに見る兄の笑顔。その瞬間、胸の中に押し込めていた感情が溢れ出した。
「兄は……ずっと私のことを思ってくれてたんだ……。」
日記の中には、兄が美沙を気遣い、家族を守ろうとしていた記録が残されていた。兄が母や美沙に伝えられなかった言葉が、今ここで彼女に届いたのだ。
その中で最も不思議な存在だったのは、小さな鍵だった。
「これ……どこを開ける鍵なんだろう?」
真希が首をかしげる。神谷が箱の中をさらに調べると、一枚の紙切れが底に貼り付いているのを見つけた。
「これだ……。」
その紙には、簡単な地図が描かれていた。地図には、この丘の近くにある古びた図書館が記されている。
神谷が驚いた表情を浮かべた。
「ここは……俺が昔通ってた図書館だ。」
その言葉に、真希が即座に反応する。
「それだよ! きっとその図書館に何かが隠されてるんじゃない?」
全員が顔を見合わせた。箱に残された鍵が、その図書館で新たな扉を開く鍵になる――そんな予感が全員の胸を満たした。
図書館へ向かう道中、全員がそれぞれの思いを抱えていた。
美沙の心情:
「兄が残した鍵……でも、どうしてこんな形で私に託したんだろう。何か伝えたいことがあったの?」
兄を失った痛みが再び蘇りながらも、彼女の中には確かに前に進む勇気が芽生えていた。
健太の心情:
「俺の父さんと関係あるのか……? それとも、全部俺が勘違いしてるだけなのか……。」
ペンダントの意味が自分の中で揺らぎ始めている。それでも、手放せない不安が健太の心を覆っていた。
神谷の心情:
「俺の草稿が……どうしてここまで繋がっているんだ……。」
物語の中の架空の世界が、現実と交わっていく。この現象が何を意味しているのか、神谷の中に答えはなかった。
真希の心情:
「私の夢……何かに導かれているみたい……。」
夢で見た風景が現実になり、それが他の人々の人生と絡み合っていく。彼女の中に、どこか不思議な運命を感じていた。
一行は、地図に示された古びた図書館に到着した。外観は今にも崩れそうなほど老朽化しており、辺りには人気がない。
「ここ……本当に入れるのか?」
健太が怯えた声を漏らす。だが、美沙は鍵を握りしめながら、静かに扉を押した。すると、扉は意外にも軽く開いた。
中に足を踏み入れると、長い間放置されていたことを物語るように、埃が舞い上がった。薄暗い室内には、古い本棚が整然と並んでいる。
「鍵を使う場所が……どこかにあるはず。」
4人は慎重に室内を探索し始めた。そして、美沙が棚の奥にある、ひときわ目立つ古びたロッカーを見つけた。
「ここだ……きっと……。」
震える手で鍵を差し込む。カチリ、と軽い音が響き、ロッカーの扉が開いた。
ロッカーの中には、数枚の古びた書類が収められていた。それを広げると、全員が驚きで息を飲む。
「翔一の遺言書」
そこには、兄が家族に伝えたかった真実が記されていた。そして、もう一つ。
「翔一が父親ではないかという疑惑」
その事実に、健太が目を見開く。
「俺の……父さん?」
美沙と健太が同時に目を伏せる。真実が何なのか、2人の心はまだそれを受け入れられない。神谷と真希も、ただ言葉を失っていた。
しかし、その真実が彼らのすべてを繋げる鍵になることは明らかだった。
「次で……分かるのかもしれない。」
真希の小さな声が、図書館の静寂の中に響いた。
明日の最終回に続く。
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