人間社会における生物学

AKIRAです。
本日は私が普段どういう考え方をしているかについて記述したいと思います。

人間社会は密度効果を考えない

モノを大量に生み出し、大量に消費する。
現代社会の資本主義経済はそんな循環で生態系が成り立っています。
しかしそれは、生態系が安定しているということではありません。

どんなものにでも限界はあるものだという根本的な考え方をベースとしないシステムは、生態系において排除されます。その極端な例が、密度効果というものです。一般的には天井効果と言われるものでしょうか。

例えばの話ですが、皆さんはコップに飲み物を入れるとき、どの程度入れますでしょうか?個人差もあるとは思いますが、まさかコップなみなみいっぱいに限界までいれるというのはありませんよね?
考えるまでもありませんが、限界ギリギリにまで液体を入れれば、コップからこぼれることは予測できると思います。ゆえに、普通は8,9割くらいの感覚で入れると思います。人によっては7割くらいで止める人もいるかもしれませんね?

つまるところ、100%入るからと言って100%Maxにするのは生物学的にありえない現象であるということです。
のちに起こるであろう最悪の場合を考えて……というよりも、最悪の場合が起こる前に自然現象そのものがストップをかけるのです。

産業革命以降の資本主義は大量の生産と大量の消費を繰り返して系が安定しているように見えますが、実際はその過程で生まれたエネルギーがほったらかしになっています。それ故に、「Sustainable Development(持続可能な開発)」などという文言が出てしまうきっかけを作りました。
地球という大型のコップがあったとして、そのコップに入る液体の容量はあと少し余裕があるように見えて、実際は密度効果すれすれの頭打ちの状態にまで来ているということになります。

密度効果

この、容量100%ギリギリまでモノを詰め込むことは現実的に不可能である現象を私は密度効果という風に定義しています。
実際の生物の教科書では、個体群密度の増加が個体増殖の頻度を抑制する性質のことを指しますが、私はこの考えを少し広義的にとらえています。

すなわち、人間における経済の流れや生態系、コミュニティ、政治、果ては家族構成にまで及ぶと考えています。
我々が「まだ余裕がある」ととらえている現象は実は思ったほどに余裕がなかったりするものです。
それこそ、「ペットを飼う」なんていう変化も家族構成の変化を指しますので、密度効果が働く事象の対象になります。

縄張り曲線

生物の世界には「縄張り曲線」というものが存在します。これは、自分の縄張りを維持するためのコストと、それによって得られるプロフィットの関係をグラフに表したものになります。

図1 縄張り曲線

図1がその縄張り曲線になります。
理論としては、ごくごく簡単で、生物群が縄張りを維持するときに維持する縄張りの大きさが図1の赤い矢印の方向が差すように、大きくなっていくほど必要となるコストが大きくなっていきます
一方で、得られるプロフィット(利益)は先ほど紹介した密度効果の影響により、縄張りが大きくなろうとも徐々に効果が減衰していってやがては減少に転じます。このように、コストとプロフィットの関係は常に拮抗した状態にあり、コストをかければかけるほどレバレッジがかかって利益が…なんてことにはなりません。そんな都合のいい話はありません。
では、どうすれば最も良好な縄張りの状態になるか、ということですが、次の図2をご覧ください。

図2利益の最大化

このように、プロフィットとコストの差が一番大きくなるところが最もローリスクハイリターンな縄張りの大きさとなります。つまり、永久に規模、市場を拡大し続ける生態系は、この利益を最大化できる縄張りの大きさの地点をあっけなく通り過ぎてしまっているのです。
まさしく利益至上主義が失敗する原因と言えるでしょうね。

では次に、これを人間社会に変換してみましょう。

図3 人間社会に適応させた縄張り曲線

つまりは、図3のようになるかと思います。
この例でいくと、自分が何かの利益を得るために必要なコミュニティの大きさには、適切な大きさというものがあることがわかります。

どれだけ多くの人間とかかわっているか、という人間関係の広さは、それだけ自分の時間と労力、能力、キャパシティ(余力)を使っているはずですので、それがコストに当たるかと思います。

つまり、かかわる人間の性質と数に対して自身が持つパラメータがどの程度かを考え、自分にとっての最適なコミュニティの大きさを見極めることが利益最大化のカギになります。
顔が広い、金を持っている、大企業に勤めている…というこれらのプラスの要素には、それらを維持するための見えないコストがかかっているのです。

欲をかいた人間の末路

ではなぜ、「やればやるほど…」なんていう発想が横行してしまうのか。
それは、次の図で説明しましょう。

図4 密度効果を考えなかった場合の縄張り曲線

図4より、実際の利益増加は赤い破線のグラフですが、密度効果を考えなかった場合、赤い実線のグラフのようになります。このように、理想とするグラフを考えると、青いグラフで示したように自身を取り巻く環境を維持するためのコストのグラフの増加量はそこまで大したことがないように見えます。

緑色で示した利益が最大できるコミュニティの大きさの値において、赤い実線上のプロフィット量はかなり大きな値を示します。
つまり、一般的な感覚では「得られたプロフィットとかかったコストの差は、実際より大きい」と感じてしまうのです。ゆえに、「まだいける」と考えてしまうのです。
そうして最終的には、実際の利益以上のコストをかけてしまい、気づいたときには取り返しのつかない状況になってしまう、という事態になってしまいます。
よくある例には、借金をしたときやギャンブルにハマってしまったときなどが当てはまるでしょうか。

金儲けも同じ

「これは金になる」
人間がそう感じたとき、欲をかいて突っ走ってしまうと大変なことになります。
どう大変なことになるのか?
それについては、また別の記事にてお話したいと考えていますが、本記事では「なぜ人間がブレーキを掛けられなくなるのか?」ということについて、一つの答えを提示できたのではないかと思います。

お金というのは本来、生物の世界に紛れ込んだ異物です。その魔物に取りつかれた人間がどういう末路をたどるのか。
生物学的にも説明可能な事象である、ということですね。

まとめ

というわけで、本日の要点は以下のようになります。

  • 「最大限のコストをかければ利益を最大化できる」は生物学的にまやかし

  • 密度効果により想定された利益は抑制される

  • この実際の利益増加と人間の理想とする想定の間のギャップが破滅を生む

  • この例は、金儲けにも適応される

以上になります。
それでは、また。

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