スパイクタンパクの有害性に関して
AKIRAです。
本日はちょっと難しめの内容。
内皮細胞障害
私の記事では、何度か触れている「スパイクタンパクの有害性」。このことに関する詳しい話を全くしていなかったことに気づき、急遽記事作製に至っています。
ここで論文を丸々紹介してしまうと非常に内容が重くなってしまうため、今回は少し軽めの「レター」という学術報告をご紹介します。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCRESAHA.121.318902
このリンクにそのレターがあります。
内容はいたって簡単で、「細胞内にスパイク発現させたら組織がぐちゃぐちゃになって細胞に有害なものがいっぱい出てきた」というものです。
細胞内にスパイク発現させたら組織がぐちゃぐちゃ
この部分に該当するレター内のデータは、Fig1のA,B,Cです。
Aは、ハムスターの肺組織にスパイクをシュードウイルス(ウイルスのベクターなどを使用して細胞内に遺伝子を発現させる媒体の総称)を用いて発現させて、スパイクによる肺組織のダメージを検証しています。スパイクを発現している方の組織が大きく崩れており、免疫細胞の遊走も確認できます。
Bは、ハムスター肺組織とヒトの肺動脈内皮細胞にスパイクを発現させたときの各タンパクの発現量をみたもので、ハムスターの方では内皮障害時に内皮を保護するための酵素eNOSの発現が増加、ヒトの方ではACE2の発現がスパイクの発現によって減少しています。
Cは、IgGとスパイクドメインS1で処理した内皮細胞の蛍光写真(i)と安定型ACE2(ACE2-D)、不安定型ACE2(ACE2-L)をアデノウイルスベクターで発現させた内皮細胞の写真(ii)です。S1ドメインを入れたほうと不安定型ACE2発現内皮細胞はぶちぶちと切れていて、ボロボロになっています。ミトコンドリアもバラバラになっています。
細胞に有害なものがいっぱい出てきた
これに該当する結果は、DとEです。
DはACE2-DとACE2-Lを発現している内皮細胞の酸素消費エネルギー産生(OCR)と解糖系産生エネルギー(ECAR)を調べたもので、ACE2-LがACE2-DよりもOCRが低く、ECARが高いという結果を示しています。つまり、ACE2発現が不安定になると、酸素消費が抑えられ、酸素の代わりに解糖系で代謝をするようになることが示唆されています。レター内ではSARS-CoV-2に感染した内皮細胞が活性酸素を産生する知見(リンク張っておきます↓)が示されており、これと併せてスパイクの作用による内皮細胞の活性酸素毒性が内皮細胞障害のトリガーになることを示しています。
Eは、ミトコンドリア関係の遺伝子発現(i)と解糖系関連の遺伝子発現(ii)を検証したもので、ACE2の発現が不安定になることでミトコンドリア遺伝子発現が減少し、解糖系遺伝子発現が増加しています。
これらは、スパイクによる細胞毒性を如実に示す傍証です。
だがしかし
ただ、ここまではいいのですが、理解できないのが最後の一文。
"This conclusion suggests that vaccination-generated antibody and/or exogenous antibody against S protein not only protects the host from SARS-CoV-2 infectivity but also inhibits S protein-imposed endothelial injury."
ここを翻訳すると、以下のような意味になります。
「この結論は、ワクチン接種によって生成された抗体やS蛋白に対する外因性抗体が、SARS-CoV-2の感染性から宿主を保護するだけでなく、S蛋白による内皮傷害を抑制することを示唆している。」
違和感に気づきましたでしょうか?
何も考えずに読むと、「へー、ワクチン打ったらスパイクに対する抗体が作られて中和するからウイルスの感染も防げるしそこから続く内皮細胞の障害も抑えられるからいいじゃん!」となってしまうのですが、ここに罠があります。
大事な部分は主語です。
この結論は、ワクチン接種によって生成された抗体やS蛋白に対する外因性「抗体が」、SARS-CoV-2の感染性から宿主を保護するだけでなく、S蛋白による内皮傷害を抑制することを示唆している。
そうです、「抗体が」です。
どういうことかというと、確かに誘導される抗体のターゲットが確実にスパイクを中和する抗体であればいいですが、何度も申し上げている通り、ワクチン誘導によって生じた抗体はポリクローナルで、いくつかはADE(抗体依存性感染増強)を引き起こす疑いのある抗体があります。
また、ワクチン自体が細胞内でスパイク抗原を合成する設計なので内皮細胞に導入されたワクチン成分(modRNA)がスパイクを合成してしまえば、レター内Fig1Aと同じ結果を誘発することになり、ワクチン依存的な内皮細胞障害が引き起こされることは容易に推測できます。
言うなればこれはトンチのようなもので、もう一度問題の一文の主語を見返してみると、「ワクチン接種によって生成された抗体やS蛋白に対する外因性抗体が」とあり、英語のほうではand/orが使われています。
つまり、「ワクチン由来でも天然のヒト由来じゃない別の抗体でも、Sタンパクを中和できる抗体であればなんでもいいよね?」ということです。実際、スパイク由来の抗体も放っておけば役立たず抗体が誘導されてしまいますが、そこから中和できる抗体を抽出して濃縮したものを投与すれば問題ないでしょ、という理論にも聞こえます。
だから、例えばですが、スパイクタンパクを濃縮した溶液をウサギなどの動物に投与して抗体を作らせて、そこから中和できる抗体を持ったB細胞を選定したのち、そのB細胞とテラトーマを合体させて大量に増殖させれば抗スパイクの中和抗体をヒトの体の外で合成できるわけです。それを投与すれば、この最後の一文も別に「間違いではない」です。
動物と抗体精製の技術を使って作った中和抗体も「外因性抗体」なので。
ゆえに、この最後の一文は、ワクチン接種が内皮細胞障害とウイルス感染防御に寄与することを支持する意味を持っていないことになります。
当然ながら、ワクチン接種が確実に内皮細胞障害の回避を抑制するのならば、以下のような文章になるはずです。
This conclusion suggests that vaccination-generated antibody against S protein (and/or exogenous antibody) not only protects the host from SARS-CoV-2 infectivity but also inhibits S protein-imposed endothelial injury.
スパイクの有害性は、免疫学的機序にも起因する
そして、スパイクタンパクが細胞障害を引き起こすメカニズム解析においては、スパイク自体の内皮細胞障害だけではありません。スパイクタンパクの免疫原性による炎症性免疫細胞の誘導に起因するという見識も調べれば大量に出てきます。参考程度にいくつか貼っておきます。
これらの報告を見ても、NF-kB経路→TLR→自然免疫(1つ目の文献)、活性酸素種、アポトーシスの誘発(いずれも2つ目)、関連してIgA関連疾患やリウマチなどの膠原病の報告(3つ目)、そして、この分子生物学的な炎症の発生機序はウイルスの複製に無関係(4つ目)とまである。
どれも生のデータを用いた「生きたデータ」です。
すでに知見は蓄積されている。
スパイクタンパクの発現量をコントロールできないワクチンが内皮細胞障害抑制に役立つかどうかは、はなはだ疑問ですがね。
・・・まあ、レターの著者はなぜか結論で支持してしまっているのですが。