ロストジャッジメント レビュー
ロストジャッジメントのネタばれありレビュー。
ストーリーをクリアしてない人は見ないほうがいいと思う。
プレイ時間はちょっとだけ寄り道して20時間ちょっと。
ゲームに点数を付けるのはあまり好きではないが、つけるとしたら75点。
・ストーリー
“いじめ”という、ある意味答えのないテーマが描かれるというのは、賛否の分かれる内容だというのはPVの時点でわかっていた。
実際やってみた感想としては「面白かった」。あまりこういったテーマの作品に触れてこなかったので新鮮だったというのもある。自分は
「思春期に凄惨な"いじめ"を行った側は、成長した後にそのことを心から悔いることは無い」
「思春期に凄惨な"いじめ"を受けた側は、その後の人格形成と人生そのものに多大な影響を受け、よほどの幸運が無い限りその呪縛から解き放たれることは無い」
という考えがある。なぜそう考えるようになったかのきっかけはわからないが、とにかくそういう考えを持っている。
桑名と楠本と江原の心情と動機は、かなり感情移入出来るものだった。
「私が殺したのは、本当に人だったの?」
「充をイジめてたほかの子たちが、命がとられないだけ感謝してほしいくらい……!」
息子を自殺未遂にまで追いやった"いじめ"の主犯格である川井を殺したいと思った楠本玲子の気持ちは痛いほどわかる。
「昔に度を越えた"いじめ"をしていたとしても、その人を殺すのは殺人という罪だ。許されるべきではない」
「自分の子供を"いじめ"をしていた人間に殺されたも同然だが、法によって裁かれなかったからすべて許そう」
"法"を守るか?日本法の最高価値基準である"個人の尊厳"を守るか?という話になり、答えの出るものではない。
自分は八神と同じ視点で物語を見た上で「楠本や江原が、川井や御子柴の殺害を考えるのはごく自然な心情であり、川井や御子柴に同情の余地は無い」と感じた。もしも自分が楠本玲子や江原と同じ体験をしたら、加害者に対して「自分や子供が味わった以上の恐怖や苦しみを受けさせた上で殺してやりたい」と考えると思う。
人間が作った仕組みなので、法律が完全で無いのは当たり前だ。裁判所も国の機関である以上、司法以外の影響を受ける。
だが、法にも歴史がある。理不尽な怒りや悲しみにさらされる人間が一人でも少なくなるように、長い時間をかけて進化してきたものだ。
社会のためになることをするか、自分のためになることをするかは、自由。
どちらの場合も、その行動に対する責任を負う必要があるんだなと考えさせられるストーリーだった。
・人物
八神
香田"いじめ"への対抗策(スピーカーのアレ)を始めとして、戦闘に入る謎のタイミングがちょくちょくあったり、「ん?」となる場面が少し多かったかなと感じたが、後から考えるとそこまで気になる要素では無かった(少なくとも自分には)。
でもちょっと暴力で解決しすぎかなとは思う。特に高校生相手に……
他のレビューでは「ター坊、中盤から澤先生のことしか言わねえじゃねえか」という意見があった。これは確かにしつこいくらいに繰り返されるワードだ。これは前作で寺澤絵美の死がもたらした八神へのトラウマがあるからと考えるとそこまで違和感は感じなかった点だ。
海藤さん
いつも通りのムードメーカーでいざという時に頼りになるし、RK本部に初めて潜入した時なんかもめちゃくちゃカッコよかった。
一緒に戦ってくれるバトルでは、ドロップキックが八神にも当たって吹き飛ばされるのを見て笑顔になることうけあい。
杉浦
変わらずパルクールが得意なところを見せ、十八番である銃を持った相手に対しての特効シーンには「コレだよコレ!」とテンションがあがった。
前作で目的を果たして燃え尽きていないか心配だったけど、新しい生きがいを見つけてくれてて嬉しかった。
東
出番が中盤以降からになってしまっているのが残念だったが、かわいいところはちゃんと見られたと思う。シャルルの経営だけで生活できているんだろうか?とも思ったが、きっと神室町の人からも好かれてそうだし、頼まれて色んなこと手伝ってあげたりしてるのかも、と勝手に想像。
九十九
前作のチームに欠けていた"椅子の人"枠だ。源田法律事務所にもいなかったITのエキスパートである。ネットワーク中心の情報収集やガジェットの開発と手配、ドローンを使用した偵察や支援など多岐にわたる。
出張りすぎると"万能お助けご都合キャラ"になりがちなところだが、ほどよい出番の多さだったと思う。
桑名
作中で最も狂気を秘めた人物かもしれない。"いじめ"加害者にとっては、まさに地獄からの死者とでも言うべき存在感を放っている。
行動理念は恐ろしいほど一貫しており、いままでの犯行で決定的な証拠を一切残していない周到さも持つ。何が彼をそうさせるのかは鮮明に描写されており、感情移入出来る点だった。
「"いじめ"の証拠をタテに加害者たちを(意のままに操り)"指導"する」というのは元教師ならではの考え方で、歪んだ使命感を感じる。
赤池たちが成長して社会的地位やパートナーを得るまで待ってから取引を持ちかけたり、川井の死体を冷凍保存しておくことで更に赤池たちを縛るという発想も狂気の沙汰。極道でも考えつかないようなおぞましい手法だ。
ストーリーのラストでは今まで殺した人たちの情報を警察に提供しているようだったが……「俺は自分の手を汚すことを厭わない」と名言していることから、これからも同じことを続けるつもりだろう。
桑名に使役されていた黒河学園卒業生ら
「生死にかかわるような凄惨な"いじめ"加害者は殺されても文句は言えない」という考えの自分も、彼らにはさすがに同情してしまった。学生時代のたった一つの過ちで、無数にあったであろう輝かしい未来への道が、ひとつ残らずすべて消えてなくなってしまった。
その原因を作ったのは桑名だ。だが、桑名が喜多方として生きられなくするきっかけを作ったのは川井や赤池本人たちに他ならない。
そして仮に桑名から「もうこんなことは終わりにするよ。お前たちは自由だ」と宣言されたとして、赤池たちは手放しで喜べるだろうか?過去から逃れることは出来ないということを10年単位で意識に刻み込まれた彼らに、心の安寧は果たして訪れるだろうか?
自業自得だと切り捨てるのはあまりに乱暴だ。殺された赤池は、もしかしたら救われたのかもしれない。
澤先生
過去の過ちを悔いていて、彼女のその気持ちが八神を前に進めてくれるのかなと思ったけど……やっと心を通わせられたかな、という矢先に殺されてしまって悲しかった。
江原
プレイヤーに驚きと謎と恐怖を与えてくれた人物。殺人動画は迷いが無さすぎてマジで怖かった。奥さんは存命だが登場するのは名前だけで、具体的な描写は無い。だが御子柴殺害の証拠が仏壇に収まっているということを考えると、奥さんも御子柴殺害の件を間違いなく知っている(江原が自分で持っていくのは不可能なので)。
夫婦でお互いのために生きることを選べなかった江原を責めることは、自分には出来ない。「自分の人生を投げ打ってでも、我が子の命を奪った者をこの世から抹殺してやりたい」という気持ちが痛いほどわかるから。
だが、やはり「法で公正に裁いて欲しかった」という気持ちがあったからこそ「法の無能さを世間に知らしめたかった」と考えるきっかけになったのだと思う。最後の法廷で、八神があの音声データを消すことを止めたのがその根拠だ。江原の手によって御子柴に対する"判決"と"量刑"は既に下されているにも関わらず、彼は法廷で認められる"証拠"を消すことを拒んだ。
”学校との裁判が公正ではなかった証拠”として、法の無能さを更に演出するために残しておきたかった、という穿った見方も出来る。
だが自分は「江原敏郎を守れなかったことと、裁判で虚偽の証言をさせられたことを心から悔いている澤先生が居たこと」が江原の心を少しでも救い、そして「自分の行動が原因で、回り回って澤先生が殺された」ことが、彼の良心を少しだけ蘇らせたのだと思いたい。
楠本玲子
ストーリーの項目であらかた言いたいことは言ったので省略する。
最後の決断も、澤先生の死がきっかけになったであろう点も江原と一致すると思う。息子には辛い思いをさせるが、敏郎と違って充は生きている。未来があるのだから。
鉄爪
定期的に登場しておいしい感じ出すキャラ。
阿久津
投げ技が多くて鬱陶しかった。首が太い。
相馬
こいつも恐ろしいほど一貫した行動理念で動いていて、一番ブレない人物だった。設定自体は納得のいくものだったが、もう少し掘り下げが欲しかったかなという印象。前作の黒岩と比較するとストーリー中の出番が格段に少なく、プレイヤーのヘイトが稼ぎにくかったんじゃないかと思う。
正体が判明した時も「あ~確かにそれだと筋が通るか」と、妙に納得してしまった。前作の「黒岩がモグラだ!」を聞いた時の「あいつが……!!」というほどの驚きや怒りがほとんど無かった。
相馬は感情を表に出す描写がほとんど無く、こっちが相馬を追い詰めてる実感が無い。最後のバトルでも「ついに引っ張り出してやったぞ!」というカタルシスも無かった。最期も阿久津以上にあっけない終わり方である。
・バトル
全体的に難易度がかなり上がっていると感じた。前作ジャッジアイズは難易度ノーマルで数回コンティニューしたくらいだったが、今作は雑魚戦闘含めて30回くらい負けた気がする。それなりに装備品を揃えているつもりでも、特に被ダメージが大きい。ザコ敵のちょっとした攻撃ですぐダウンして✕ボタン連打を強要されたり、うずくまって動きが止まるのがかなりストレスだった。前作はこんなに行動不能にされる頻度高かっただろうか?攻撃に対して防御や回避が出来なかった場合のテンポの悪さが過去最悪レベルだ。また、アイテムのストック数が増やせないので特に連戦が厳しい。
新たなバトルスタイル"流"がかなり強力(というか強すぎ?)なのも少し気になったが、円舞と一閃も強化されているのでトントンかな?という印象。
各スタイルの奥義を使えるようになったあたりでやっと快適になり、楽しいなと感じるようになったので、序盤はとてもストレスが大きかった。
あとスタイルチェンジが⇩キーだけっていうのは何でなんだろうか。左右キーは戦闘中に使わないんだから⇧以外の3つをそれぞれのスタイルに割り振れば切り替えがもっとスムーズだったと思うのだが。
・ゲームシステム
サーチモード
回数は多いが、前作もこんな感じだったかな?という印象。
猫を探す義務感が無くなったのはGOOD。
チェイス
終盤は同じところをぐるぐる回るだけで、前作のスケボーアクションみたいなテンションが上がる演出は皆無。冗長になり劣化している。
尾行
前作から不評だったのか、チュートリアルでやったきりメインストーリーでは発生しなかった。やりたいと一切思わないのでこれは良いと思う。
アスレチック
絶対にGhost of Tsushimaの影響だろコレ。封鎖された現場に潜入するルートを探すシチュエーションとかには合っていて良かった。
スティール
可もなく不可も無くといった感じ。一回カバーボジションに入るとコイン等を投げないとそこから離れられないのはよくわからない仕様だった。
スケボー
神室町や異人町をスケボーで移動できる新要素だ。PVでも一目で「面白そう!」と感じられる、楽しみな要素だった。
だが、これが自分にとんでもないストレスを与えるものになった。
前述したバトルの難易度がやや高めな序盤は、バトルを有利に進めるために"酔い度"を積極的に上げるようにしていた。
このゲームは酒類のアイテムを使用したり飲食店で頼むと酔い度が上がる。マップでまっすぐ歩けなくなるなどのデメリットがあるが、EXゲージ(いわゆる必殺技に使うもの)が溜まりやすくなるというメリットがある。そして"酔い度が上がってもまっすぐ歩けるようになる"というスキルを取得すれば、デメリットを打ち消すことが出来る。
前作も自分はこのスキルを早めに取得し、常にコンビニに売ってるジャックダニエルを携行し酒を浴びるように飲んだ八神を操作していた。バトルの難易度が上がっている今作も同じプレイスタイルを取ろうと思ったのだが……
酔い度が1でもある状態だと、前述のスキルを最大まで取得していても、スケボー操作が正常に出来ないという"仕様"が待ち受けていたのだ。
これはこのゲームで一番のストレスになった。なんでこんな仕様にした?
ふざけるな。ファック。
「酔い度上限上がっててもスケボー乗ってたらフラつくようにしたろwその方が面白いやろw」って言ったやつがいたってことだ。クソが代。
正直言うと、これを知った時は死ぬほど萎えた。コントローラーをぶん投げそうになった。移動か戦闘どっちかしか快適にやらせたくないという、開発陣の嘲笑が聞こえてくるようだった。
中盤以降は習得したスキルのおかげでバトルが快適になり、酔い度が無くても問題なくなったので酒類は必要なくなったのが救いだ。また酔いの対策として専用のEXアクションを使えば酔い度を即座に0に出来るし、移動もタクシーか徒歩を使えばいいと言われればそれまでだ。
だが、町をスケボーで突っ走れるという素晴らしいアイデアに対して、ここまでの制約が果たして必要だったのだろうか?と疑問でならない。百歩譲って初期状態はフラつく仕様でいいとしても、"酔っていてもスケボーでフラつかない"というスキルを作ってほしかった。
「そんなに怒らなくても、酒飲んだらそのEXアクション使って、その後にスケボー乗ればいいじゃない」と言う人もいるだろう。
反論としては二つあり、一つが「自由に遊んでいいゲーム性をウリにしてるのに、決まった行動を強いてくることが気に食わない」という点。
そして酔い度を即座に0にするというのは即ち”酔いによって受けられるメリットを全て捨てる”と言うことである。
つまり「酒類アイテムのメリットや酔いのデメリットを打ち消すスキル」と「快適で楽しい移動手段」は”絶対に両立出来ないゲームデザイン”ということになる。そんなゲーム、あなたはやりたいか?というのが二つだ。
スケボー中に通れない道や人に当たると降りてしまうので、特に細い道では繊細な操作を要求される。そんな中で「アナログパッドで操作してたら他人が勝手に十字キーを適当に操作してくる」といったようなクソゴミカスウンコ体験をさせられるのだ。
「歩くくらいなら大丈夫だけど、スケボーだとフラつく」というのはリアルなのかもしれないが、そのリアルさはゲームには不必要だ。
Ghost of Tsushimaに例えるなら、暗器を使うとその後に馬での操作がおぼつかなくなるといった具合だ。戦闘を有利に進めたければ、移動でその代償を払えというわけだ。
広大なマップを移動して探索するのが魅力の一つであるゲームで、高速移動手段を不自由なものにしてプレイヤーにストレスを与えることの合理的な理由を是非聞いてみたい。それのどこにゲームを面白くさせる要素があるのか、開発陣に是非聞いてみたい。何度考えても本当に納得がいかないし腹が立つ。
真面目な話、ストーリーとキャラクターだけなら95点。序盤バトルの異常なまでのシビアさと、スケボーがあるから-20点で75点にした。
「そんな些細なことで?」と思われるかもしれないが、主観的な感想なのでご承知おきいただきたい。
・細かいところ
エンディング
スタッフロール中、八神探偵事務所で主要メンバーたちが楽しそうに過ごす中で流れる
「お前らのせいだ~!」
「この映像をバックに流す曲か?」と率直に思った。念のため断っておくが、曲自体が良い悪いという話ではない。このシチュエーションにふさわしいBGMか?という点である。
確かに「円満解決!みんな良かったね!」で終わる話では無かったが、一連の騒動がやっと終わって、やっと一息つける……というタイミングなんだから、少しくらい余韻に浸らせて欲しかった。
事務所での団らんが終わった後にもう一回OPムービーをそのまま流しても良かったし、メインストーリー中のシリアスなシーンをまとめたムービーでもいいし、そういうのを流したほうが良かったんじゃなかろうか。
ザ・ガントレット
ポーズメニュー上と失敗したときに"リトライ"のボタンを作った方がいい。
・最後に
アニメ、漫画、映画、ゲームによく触れる自分を自分なりに分析してみると、何か一つでも腑に落ちないことがあって「楽しい!好き!」という気持ちが離れ始めると「あれもいやだしこれもいやだ」と欠点ばかり見るようになってしまう人間だと改めて思った。
改めて言うが、スケボーの件でキレ散らかしてはいるがストーリーはとても面白かった。次回作が出たらきっと買うし、より良いものになって欲しいからクリア後にすぐアンケートも書いた。この記事と概ね同じ内容だ。
長い物語を楽しむにはモチベーションが必要だ。移動や戦闘が楽しくて、ストーリーも面白いRPG。もちろんそれが一番だ。Ghost of Tsushimaは本当に面白かった。
実際プレイしなければ合うか合わないかわからない。これからも気になったゲームはきっちり買って遊ぼうと思う。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。