【都議選2021】自公過半数・都ファ惨敗の衝撃予測【根拠薄】
都政新報で都庁担当だった頃、某週刊誌から2013年の都議選予測をやってくれないかと打診があった。まだ候補者も出そろわない5月のことである。小さな業界紙だから、世論調査をかけるお金などない。選挙はひたすら、取材と勘に頼るしかない。正確な予測など出せるわけもないから、いったんはお断りしようと思ったが、粘り強い説得もあってお引き受けすることになった。
情勢予測で迷惑をかけた方々
今でもトラウマになっているが、青島幸男知事が初当選した1995年の都知事選で、入社3カ月の私は投票日、青島氏の自宅に取材に行くよう当時の都庁班の先輩から指示された。「敗戦の弁、60行でいいから」と。ところが、青島氏の自宅マンションに向かうと、報道陣で満杯の会議室に誘導された。最前の記者席を確保して待機していると、皆さん、ご存知の通り青島氏の当選確実の報が入った。カメラを構える手がガクガク震えた。ちびりそうになるとは、こういうことだ。
そんな程度の会社だった。一方で、私は何度も失敗を繰り返しながら自分なりに選挙情勢を〝読む〟ことも覚えた。膨大な取材がなければできないことだが、会社が次第に組織戦に長けてくると、同僚たちの取材の成果をまとめれば、一定の傾向くらいは見えるようになった。それでも、単独ではさすがに選挙区ごとの情勢は把握できない。そこで、自分なりの方法でだいたいの選挙情勢を分析することを考えた。
「自分なりの方法」というのは、ここでは〝企業秘密〟としておきたい。
渾身の予測は果たして当たったのか。結果は「自公圧勝、民主敗北」という傾向は当たっていた。だが、そんなのは取材しなくても分かる。選挙区ごとの情勢は、当たっていた選挙区と外れた選挙区があった。無理もない。5月の段階で選挙区ごとの情勢が分かるわけがない。発行は6月7日。あまりにも早すぎる。校了ギリギリになって、出馬することが明らかになった候補者は、名前を入れることは間に合ったものの、優劣をつけることができずに、無印になったが、本番では見事に当選した。今になってみれば、申し訳ない限りだ。
有名どころで言えば、今は参院議員になった音喜多駿氏(当時はみんなの党公認)も無印になっている。取材を始めた頃、彼はJR十条駅で一人ぼっちでハンドマイク片手にチラシを配っていた。その寂しそうな背中を見て、まさか当選するとは思えない。ところが、維新が橋下徹代表の〝慰安婦発言〟で大炎上して失速する一方で、みんなの党は告示前に候補者を絞り込み、選挙が始まってから東京全体で微風が吹き始めた。私の予測では3議席だったが、7議席を獲得している。残る4議席のうちの一つが音喜多氏だった。
週刊誌が発売されると、都議会の某政党の政調会長が直々に私に電話をしてきた。「今日の週刊誌の件、ちょっと今、時間あるかな」と。足をガクブルさせながら、都議会議事堂の会派控室に伺うと、応接室に所属都議がずらりと並んでいた。「あれはさあ、御社が調査をかけたりしたの?それとも、どこかの政党の情勢調査の結果?」「いえいえ、こちらの取材の結果であって、明確な根拠があるわけではありません」…皆さん、少しホッとした表情だった。「〇〇先生、△だったでしょ」「オレ、〇だったよ」「あっ、◎の先生がいらっしゃいましたよ」…生々しい会話を恐縮しながら黙って聞いていた。
それだけではなく、仕事で付き合いのあった古参都議からも直々に電話があり、汚い大衆酒場でコロッケを食べながら、週刊誌の予測を肴に「まったく、リベラル勢力はどうしちまったんだ」と愚痴を聞かされた。残念ながら彼は落選してしまった。
今では様々なメディアが緻密な予測を行っていて、小さな業界紙の出る幕などないのかもしれない。だが、ネットで見かける様々な情勢記事を拝見するたびに思うのは、大切なのは「当てる」ことなのか?という疑問だ。他人のことを言えた立場ではないが、大新聞の出す情勢予測など、かなりいい加減である。大枠では当たっていても、選挙区ごとの情勢では、どう取材すればこんなデタラメが書けるのだろうかという記事もある。
情勢記事は、その予測から伝わる選挙の本質を伝えることに意味があるのであって、本番でその通りになるかどうかには、あまり大した意味はないのだと思うのだ。まして、個々の選挙区の情勢が当たっただの、外れただの、果たして何の意味があるのか。もし予測の通りになるなら、投票など必要ないではないか。
一つだけ後悔しているのは、あれだけ神経をすり減らして予測を行ったにもかかわらず、報酬は一度、晩ごはんをごちになっただけだ。あらかじめギャラの交渉はしておくべきだった。
2021年7月都議選の最新情勢を占う
2021年夏、この26年間で初めて、全くのフリーの立場から都議選を予測してみたいと思う。これまでは背負っている会社の看板があるから、会社に恥をかかせてはいけないというプレッシャーがあったが、今はもう何も関係にない。しかも私は東京都民ではなく、神奈川県民である。
もちろん、会社に所属した当時は選挙区ごとの情勢を担当記者から集めれば、一定の傾向は見えたが、今回はそれがない。したがって、根拠は非常に希薄である。
今週に入って、いくつかの情勢調査の結果が出回っているようだが、それもほとんど参考にしていない。特に政党がかける情勢調査は自党に厳しく、対立する政党には甘くするものだ。
だから、これは私の〝見立て〟である。根拠は薄いが、なんとなくの傾向は分かると思う。
下記が2021年7月4日投票の都議選の予想である。
政党 (最小~予測~最大)
都ファ 4~【12】~26
自民 42~【56】~60
公明 23~【23】~23
共産 7~【16】~22
立民 5~【13】~23
生ネ 1~【3】~3
維新 0~【1】~4
国民 0~【1】~4
れいわ 0~【0】~2
無所属 1~【2】~4
何度も繰り返す。根拠が薄いので、真に受けないでいただきたい。
都民ファーストの会は旧民進系の現職を除くと、非常に厳しい戦いで、公明党が23人完勝すると、第2党の維持が困難な情勢だ。特に1期目の現職の苦戦が顕著。
自公は最低でも65議席は確保する見通しで、都議会の過半数奪還が確実だ。
自民は定数4以下で複数擁立した選挙区で、当落線上の争いになるほか、リベラル勢力の強い武蔵野市や小金井市での苦戦が予想される。公明党は完勝の勢い。
共産は目黒区の現職や江戸川区の新人が苦戦しているほか、現職の多くが当落線上の争いとなっていて、前回の19人を下回る見通し。
立憲民主は、現有議席を倍増させる見通しだが、新人に勢いが見られない。2人区では、野党共闘で候補者調整を行った選挙区では、現職や元職が優勢となっている。
生活者ネットは、前回議席を失った選挙区での奪還が見えてきた。
維新の会は、定数1増で候補者が乱立している練馬区で可能性を残すが、議席の確保は非常に厳しい。
国民民主は、世田谷区の元職に可能性を残しているが、全体的に苦戦している。
れいわ新選組は、定数の多い選挙区で滑り込む可能性はあるが、現状では議席確保の見通しが立っていない。
主な選挙区ごとの情勢
■千代田区(定数1)▲ 平慶翔・都現 △ 内田直之・自新 冨田直樹・共新
千代田区は自民新人の内田が先行。国替えの平は小池知事の応援がカギ。
■新宿区(定数4) ▲ 森口つかさ・都現 〇 秋田一郎・自現 △ 吉住栄郎・自新◎ 古城将夫・公現 〇 大山とも子・共現 ▲ 三雲崇正・立新 上塚哲司・維新 早乙女智子・無新
自民が2議席を伺う。主要政党が無難に議席を確保する見通し。
■目黒区(定数3) △ 伊藤悠・都現 〇 鈴木隆道・自元 ▲ 栗山芳士・自元 〇 斎藤泰宏・公現 ▲ 星見定子・共現 西崎翔・立新
自民の2議席目確保が焦点。共産星見は立民新人の擁立でリベラル票の分散が課題。
■大田区(定数7【1減】) △ 森愛・都現 奥本有里・都新 〇 鈴木晶雅・自現 〇 鈴木章浩・自現 △ 山森寛之・自元 ○勝亦聡・公新 ○ 玉川英俊・公新 ◎ 藤田綾子・共現 ▲ 斉藤理恵・立新 岡高志・国新 松田龍典・維新 片岡将志・無新 村元寅次・無新
定数が1減で激戦。自公共の既成政党が無難に議席を確保しており、残り1議席を奪い合う戦い。連合東京の支援を得た都民ファ森が一歩リードか。
■世田谷区(定数8) 福島理恵子・都現 木村基成・都現 〇 三宅茂樹・自現 〇 小松大祐・自現 △ 土屋美和・自新 ◎ 高久則男・公新 ◎ 里吉ゆみ・共現 △ 山口拓・立現 風間譲・立新 △ 関口太一・国元 ▲ 岡林裕佳・維新 ▲ 風沢純子・れ新 △ 関口江利子・ネ新 サルサ岩淵・無新 大場康宣・無現 込山洋・無新
自民3、公明1、共産1は確定。残る3議席はどこが滑り込んでも不思議ではない。立民山口、国民関口の旧民主コンビ、ネット新人が優勢か。都民ファは現状では共倒れの可能性。
■杉並区(定数6) 鳥居宏右・都現 ▲ 茜ケ久保嘉代子・都現 〇 早坂義弘・自現 〇 小宮安里・現 〇 松葉多美子・公現 〇 原田暁・共現 △ 関口健太郎・立新 ▲ 百瀬智之・維新 ▲ 山名奏子・れ新 △ 小松久子・ネ元 市川浩司・無新
伝統的に左派が強い選挙区。都ファは現状では共倒れの可能性。自公共立が固めた残り1議席が焦点。
■練馬区(定数7【1増】) 村松一希・都現 ▲ 尾島紘平・都現 ○ 柴﨑幹男・自現 ○ 山加朱美・自元 △ 小川佳子・自新 ◎ 小林健二・公現 ○ 戸谷英津子・共現 △ 藤井智教・立現 △ 若旅啓太・維新 須沢秀人・無新 松田美樹・無新 ▲ 池尻成二・無新 岩江志朗・無新
定数1増でズブズブの選挙区。維新が唯一議席を狙える選挙区だが、女帝との関係が深い都ファ・尾島、立民の推薦を得た池尻の追い上げが焦点。
■江戸川区(定数5) △ 田之上郁子・都現 ○ 宇田川聡史・自現 ▲ 大西洋平・自新 ○ 竹平智春・公新 ▲ 原純子・共新 △ よぎ・立新 丸山玲子・維新 ○ 上田令子・無現
最後の議席は、共産の新旧交代か、自民複数議席、立民新人の初議席か。無現・上田は無難な戦い。
■武蔵野市(定数1) 鈴木邦和・都現 ▲ 土屋ゆう子・自新 △ 五十嵐衣里・立新 遠藤史啓・無新
元武蔵野市長の長女・自民土屋が台風の目。同市では共産・立民が推した松下玲子氏が市長を務めており、元々リベラルが強い地盤。
■町田市(定数4) 藤井晃・都現 △ 星大輔・自新 △ 松岡みゆき・自新 ◎ 小磯善彦・公現 △ 池川友一・共現 ▲ 鈴木烈・立新 奥沢高広・無現 ▲ 今村路加・無元 吉田勉・無新
公明・小磯以外は誰が抜け出ても不思議ではない激戦区。
■小金井市(定数1) 辻野栄作・都現 ▲ 広瀬真木・自新 △ 漢人明子・無新
前回と同じ顔触れ。野党共闘の漢人が優勢。
2021年都議選全選挙区の情勢
全選挙区の細かい〝見立て〟は以下の有料ゾーンに置いておく。何度もくどいようだが、私は細かい選挙区の状況を把握していない。だから、これは経験値に基づいた〝見立て〟に過ぎない。
そのことを理解した上で、下記の表を御覧いただきたい。
※画像では見にくいのでPDFファイルを添付しました(2021年6月17日午後1時30分追加)
ここから先は
¥ 100
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
ほとんどの記事は無料で提供しております。ささやかなサポートをご希望の方はこちらからどうぞ。